第二十七話 やっぱり自分で使う武器位自分で打たなきゃな
商業ダンジョンの一角に作られている鍛冶スペースに来た。
いや~、流石に今日は日曜日だし、こんな朝早くからここに来る冒険者が割といるよ。
奥の方には店があって専門の職人が剣とかを打ってくれるって話なんだけど、鍛冶スキルに振る為のポイントが高すぎて本職の刀鍛冶でもない限りスキルレベルが精々二程度だって話だね。鍛冶スキルレベル一だと武器を打てないらしいから、レベル二だと本当にギリギリって事だね。
条件的にはギリギリなのにそれでも鍛冶スキルが高い方だっていう話だし、本気で鍛冶スキルを上げる人間はいないんだろうね。
鍛冶なんかの技術系と呼ばれるスキルは長年やってるとスキルポイントを突っ込む以外の方法でもレベルが上がるらしい。ただし、その一部のスキルはスキルポイントでのレベルアップにものすごくポイントを使う事でも有名だ。
まあ、スキルなんかはまだ完全に解明されてないし、謎の部分は相変わらず多いんだけどね。
更に言えばこの商業ダンジョンの地下には普通にダンジョンが広がっている。
特徴のないダンジョンだし、あまり利用してる人はいないけどさ。
「それじゃあ、俺も鍛冶スキルを取るかな」
鍜治場にある特殊な槌に触れるとステータスに【鍛冶】スキルが増える。
一年位冒険者やってる人は大体鍛冶スキルを持ってるらしい。
鍛冶スキルを持ってると、武器なんかの手入れをしやすくなるって話だ。
そして武器の手入れなんかをしていると、そのうち鍛冶スキルがあがるらしい。この辺りが技術系スキルの特徴なんだよね。
レベルアップまでものすんごい時間が掛かるって聞いてるけどさ。そんなのまってられないって。
「あれ? あの子、今鍛冶スキルにポイント振ってなかった?」
「え? そんな訳ないだろ。確認しただけだよ」
周りにいる他の冒険者が目敏く俺がスキルポイントを振ったのを見てたみたいだな。
ここでこのまま刀を打とうと思ってたからスキルポイントは振ったよ。四百ポイント。
まだ五千三百六十六ポイント残ってるし。
「スキル発動。銀鉱石と魔石をまず融合させてインゴット作成からだな」
鍜治場では錬金術スキルと鍛冶スキルのどっちからでもインゴットの作成が可能だ。武器に使うインゴットだったら鍛冶スキルで十分だけど、錬金術スキルでインゴットを作るといろんな力を付与出来るっぽい。
錬金術に関してはネットで探しまくったけど殆ど情報が無いから、偶に出てくる説明文で判断するしかないんだよね……。
とりあえずさっき買った銀鉱石とあの死霊の宝箱から出た魔石をひとつ。
死霊本体から出た分じゃないから若干劣るけど、たぶんこんなに気軽に使える魔石じゃないだろうね。
……スキルを使うと目の前に丸い謎空間が発生するから、そこに魔石と銀鉱石をそれぞれセットする。
二つの謎空間が重なって鍛冶スキルが発動。しばらくするとインゴットが完成するって仕組みだ。
何がどうなってるのかはさっぱりだけどさ。
「インゴット完成!! かなり純度の高い神銀が出来た。期待通りで助かる」
「ちょっ!! という事は鍛冶スキルに二百も振ったの? というか、そんなにスキルポイントって貯められる?」
「高レベルな四色持ちか? パーティメンバーの為に鍛冶スキルを優先したんだろう」
ソロです……。パーティメンバー? 誰? 多分もう誰かと組む事もないだろうけどさ。
あの冒険者に二百振ったって判断をされたのは、魔銀は鍛冶スキルレベル二じゃないとほとんど成功しないし、神銀はさらに上の鍛冶スキルレベル三じゃないと成功しないって話だ。だから店で売られているこの辺りのインゴットはダンジョンの宝箱からドロップしたか、鉱山型ダンジョンなんかで手に入れた魔銀や神銀の鉱石を精製した物って事だね。
とはいえ四色って読みは凄いな。というか、四色持ちでも二百ポイントもスキルポイントが余る事なんてないと思うぞ。
一レベル上がっても貰えるスキルポイントは十六で、レベル二十まで上げても合計で三百二十ポイントだ。
そのうち二百ポイントも突っ込むなんて正気の沙汰じゃない。
しかも俺が突っ込んだのは四百ポイントだしな。
「これだけあれば数本打てる。とりあえず刀と脇差だよな」
「……神銀のインゴットをあれだけ精錬したのに、まだ鍛冶スキルを使って刀とかを打てるのか!!」
「え? え? そんな、あの子って魔力幾つあるの?」
「あれだけの量の神銀を精錬したら魔力を百は使う。あの純度となるともっとかもしれない」
……はい、普通の冒険者のステータスの低さを甘く見てました~。あっぶねぇ、学校で同じミスしないようにしないとな。
そうだよね。知力、賢力、運の合計が百超えるのって四色持ちでもレベル十くらい?
知力と賢力を優先してあげる人はいるけど、意外な事に運をあげる人間は少ない。
なんとなく筋力とか知力の方が重要に思えるんだろうか? 生命力と魔力に影響するとはいえ、攻撃力には関係ないしな。それに、運をあげるんだったら最低でも五十まで上げないとステータスボーナスが入らないしね。
今現在の俺の魔力は一万五千以上あるから、百程度使っても誤差の範囲だ。
「神銀を精錬できるスキルポイントがあるんだ。レベル三十前後じゃないのか?」
ビンゴ!!
でも、ステータスはたぶん想像してるのより遥かに上だけどさ。
「あの子、たぶんまだ高校生くらいでしょ?」
「異様に童顔でもなければそうだろうな。……この短時間にあんな見事な刀を打ったぞ」
「うわぁ……。あの刀、武器レベル八はありそう」
武器レベル。素材にしたインゴット、鍛冶レベル、作成した人の筋力と賢力、それに加えて精錬時に突っ込む氣力で決まる武器の等級の事だね。
というか、意外に武器のレベルを決める要素は多い。
俺は気にした事は無かったけど、過疎ダンジョンで使ってたショートソードは当然最低の一だ。
ゴブリンの棍棒とか、弱い武器の殆どがこのレベル一に該当する。
割と丈夫な物もあるので、攻撃力が関係してるっぽい。
「その位あるといいですね。それでは失礼します」
ちなみに武器レベルが八あると、素材適性や打つときに注ぎ込んだ魔力や氣の量なんかで武器に攻撃力の補正がけっこう付く。
武器レベル六から付き始めて、最高レベルの十でその武器を打った人の筋力などに応じて補正ボーナスが付く。
レベル六の武器だと普通の冒険者が打った場合は精々百前後なんだけど、俺の場合は今のステータスでも素材次第で千位はつくんだよね。
魔銀でたしか補正値の最大値が五百。神銀で最大三千。神白金や希少な金属を使いまくると最大で五万くらいは補正を付ける事が出来る。流石にそこまでの武器を打てる人はいないらしいけどさ。
更に言うと魔道展開式って特殊システムで稼働する武器や防具もあるんだけど、この辺りの武器になるとさらに補正値は上がる。いったいどのくらいまであがるのかは知らないけどね。
当然鍛冶レベルや打つ人間のステータスなんかが関係するけど、そのレベルになると打てる人間はいないそうだ。
ダンジョンに住み着いているドワーフを見つける事が出来れば打って貰える可能性があるっぽい。ドワーフ情報も眉唾だけどね。
「あの、私の武器を……」
「俺の武器もいいですか? 魔力に余裕がある時でいいので……」
「いえ、すいませんがパーティメンバー以外に打つつもりはありませんので。それでは」
パーティメンバーなんていないけどな。
というか、補正値が最低でも百付く武器なんて渡せる訳が無い。
あっという間にネットで晒されて大騒動だよ。
足早に鍛冶スペースを後にして、そのまま商業ダンジョンの外に出た。
さてと、どこかで着替えてダンジョン配信の準備をしないとね。
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