第二十六話 配信をする為の装備はなんにしようかな



 商業ダンジョン近くで割と人通りの少ない場所を見つけてたから、今日はそこに直接テレポートしてみた。


 移動系スキルは日常生活で使うとホントにヤバいな。本来は消費がデカすぎて使いにくいんだろうけど、俺の魔力は異常だから全然問題ないんだよな……。


 というか、普通初期値のステータスがオール十の冒険者がいたとして、仮に三色持ちでも最高二十四のステータスポイントを効率よく振り分けていくしかない訳で、知力をかなり優先でもしない限り一レベルで十二程度しか魔力は増えない。


 初期値の消費魔力が五百のテレポートとか、レベルカンストしても一回しか使えないんじゃないかな?


 銀スキルのレベルを十にあげれば消費魔力は十分の一になるけどさ。そのスキルポイントもかなり貴重だけど。


「こうして考えると、俺のステータスってほんと異常だよな。覚醒してる冒険者なんて滅多にいないだろうし」


 さて、そんな事より買い物だ。


 丈夫な装備と変装用のアイテム数点。


 変声機とかはどうするかな……。ライブ配信の場合はつかっている人も多いけど。


「よほど自分の声に自信がある人と、身バレ上等な一部の人間以外は大体変声機を使ってるしな」


 息苦しくなくて、冒険者としての活動に支障のないタイプが人気だ。


 この辺りは近年異常に進化したというか、配信用ドローンの普及とともに急速に成長した分野だよな。


 変装用の装備とかも色々増えたし、ネタ系装備も色々と増えた。


 というか、レベル三十辺りで行き詰る冒険者が多いから、その後はネタに走る人も多いんだよね。


「流石にプチっとはやり過ぎだけど、自立型ドローンをあちこちに飛ばしてる人もいるって話だな」


 怪我人の探索とか救出用って言い張る人も多いし、実際そのドローンで発見されて助かった冒険者いるのも事実だ。


 その一方で、女性冒険者が怯えたり逃げ惑う姿を隠し撮りしている配信者もいる、


 プチっとシリーズも似たような自立型ドローンの映像だしね……。


「そのあたりの法整備は全然進んでないし、ダンジョン内は治外法権の無法地帯だからな。各国の法律が通用ない場所でもあるし」


 その為、ダンジョン内に住み着いている者もいるという話も聞いてる。この国だとあまりそっち系の話も聞かないけどね。


 いろいろな組織が管理しているダンジョンは無理だけど、誰も管理してない過疎ダンジョンの一部はまさに無法地帯だって話だしね。


 誰も管理してないダンジョンでも一応管理者は存在するんだけどね。


 管理してない管理者ってなんだろう……。


「いらっしゃいませ」


 俺が入ったのは冒険者御用達のお店ユニーク。


 ここはダンジョン攻略用の装備やアイテムが色々と揃っているお店だ。


 上級冒険者が使う武器類は他の店で選ぶ事が多いけど、この店は特殊な鉱石とか材料も揃ってるのがいいんだよね。


「おっ、あった。……例のショートソード級の格安武器から、そこそこお高めな本格的装備までいろいろだな」


 装備類でこういった刀剣類は切れ味や丈夫さなどで値段が変わる。


 スマホとかで遊べるゲームみたいに攻撃力が数値化されている訳じゃないから、値段が高いからと言って強力な訳でもない。


 使ってる素材で割と格的なものはあるけど、一回鋳潰して打ち直した方がマシな武器もあるってはなしだ。


 ただ、武器にもレベルがあって攻撃力に補正が入る物もある。


 その武器に関しては補正値だけでも正確な攻撃力が分かるのが良いよね。


「で、この辺りは鉱石類やインゴットか。鉄鉱石から銀のインゴットまで様々だ」


 銀はそのままでも武器に使えるけど、魔石と混ぜて魔力を注ぎながらインゴットにすると魔銀や神銀といった特殊な金属に化けるって話だ。……昨日調べたネット情報だけどね。


 魔銀や神銀はアンデット系に馬鹿みたいに効くらしくて、ある程度腕の立つ冒険者は全員これ系の装備を持っていると聞いた。普通の魔物にも攻撃できるしね。


 俺は錬金術を覚えているから、素材さえあれば俺も魔銀や神銀のインゴットくらい余裕で作れるぞ。


 素材さえあれば回復薬とかも作れるんだよな。そのうち魔力回復薬とかも作っとくか。


 ここには鍜治場もあるらしいから、そこでスキルを発動させると【鍛冶】スキルを覚えられるらしい。……これもネット情報だけどさ。


 ただこの鍛冶スキル。レベルを上げるのに必要なスキルポイントが鬼で、レベル五まで上げるのに四百もかかる。


 入手した時点でスキルレベル一なんだけど、ほとんどの人はそのまま使ってるって話だね。レベル一だと武器の修繕は可能だけど、武器を打ったりはできないけどね。


「武器は自分で打てばいいか。材料はやっぱり銀鉱石だよな」


 武器はまあそれでいいとして、問題の防具。


 はっきり言えば、冒険者してる人で中世物の鎧騎士系な金属フルプレートとか装備してる奴はいない。一人もいない訳じゃないけど、まず見かけない。


 なぜか。基本的に冒険者のステータスで防御力が決まるから、くっそ重い金属系の鎧を着てもそこまで防御力が上がらないというか恩恵がほとんど無いからだ。


 だから防具は特殊な素材で編まれた服や急所を守る為の特殊な樹脂製の防具。それにダンジョンで発掘されたステータスや防御力なんかをあげるアクセサリー類となる。


「効果の高いアクセ類は流石にこの店には置いて無いな」


 アレ系はそこそこお高い貴金属なんかを扱う店にしかない。


 ガッチガチの装備で固めた警備員付きの店だな。


 魔法やスキルを悪用する冒険者対策である程度スキルの発動や効果を抑える結界を張ってるらしいけど、それを無効にする装備もあるらしい。


 ああいった店で盗みをすると、すぐに身元を特定されて詰むけどな。後先考えないバカは何処にでもいるって話だね。


「鉱石類は必要な量確保したし、後必要なのは変装系の装備だ」


 さて、何がいいかな?


 定番の忍者系装備。顔が隠れる上に海外配信でのウケがいいらしい。


 侍系も海外からのウケがいいけど、忍者の方がその一つ上って話だ。


 どっちもメインウエポンは刀系で、忍者の方はたまに鎖鎌とか手裏剣を使ってるって話だね。ウケ狙いで語尾にニンニンとかつけてる人もいる。


 鎖鎌って使いにくそうな武器だよな……。


「侍でいいかな。首にマフラー蒔いて、頭は菅笠すげがさ?」


 着物って所がどうなんだろう? 動きにくくは無いけど、何着も必要だよな……。


 ヴリル対応型の素材製の着物が五万円からか……。仕立てもできるらしいけど。


 変装にそこまでの性能は求めてないからこれでいいか。五着くらいいるよな。


「すいません。これお願いします」


「……銀鉱石と着物、菅笠にマフラーですね。……足回りは良いんですか?」


「流石に草履は無理と言いますか、着物で隠れるからいいかなと……」


「そうですね。そこは拘りどころですが、確かに草履ですと移動力と防御力は落ちますね」


 過去に見た侍系配信者も靴はダンジョン用のブーツを履いていた。


 やっぱり命がけのダンジョン内でそこまでなりきるのは無理ゲーだよね。


 蹴りの威力も落ちるし、岩場を歩く時に最悪だ。


「配信でそこまで見る人はいませんし、大丈夫だと思います」


 聞いて来たのは念の為なのか?


 草履が安いとはいえ、たぶんダンジョンに一回潜ったら何足も使う羽目になるだろうし、結構な売り上げになりそうだからな。


 その手は桑名の焼き蛤と……。この前スマホで暇つぶしに見た時代劇で言ってったっけ?


「全部で三十一万円ですね。着物が結構するんですよね」


「この辺りは安い方ですよ。反物から仕立てた方が着心地は良いですし、動きやすいですよ」


「その分お値段は高いでしょ?」


「それはもう……。でも、好きな柄の反物も選べますよ」


 時代劇でいいとこの旗本とかが着てるような派手っ派手なやつね。


 反物も特殊だから一千万くらいしそう。


 俺が選んだ着物の柄も割と派手だけど、地味な着物だと目立たないから仕方がない。


「もっと稼いだら考えます。ありがとうございました」


「またのお越しをお待ちしております」


 菅笠が割とかっこいいよな。


 これを被って口元をマフラーで隠せばあの時代劇風になる。着物は別の時代劇もの並みにかなり派手だけど……。


 俺も事実を知らずに灰色呼ばわりされてたし、学校で昼行燈決め込むにはちょうどいいだろうね。


 ダンジョンの中では謎の凄腕侍って事だな。


 着物はホントにかなり派手だけど、生地が安いからそこまで豪華に見えないのが残念だ。割と着心地は良いけどね。


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