第二十五話 ダンジョングルメってモノもあるらしい




 ダンジョンを利用しているのは個人だけじゃなく、企業なんかが冒険者を雇って利用しているケースも意外に多い。


 個人で冒険者を続ける場合と違ってかなり実入りは減るらしいけど、企業に雇われるといろいろと保険的な物が利用できたりクレジットカードを作れたりするのも大きいって聞くんだよね。ネット通販でも使えるダンカもあるのにクレジットカードってそんなに重要なのかな?


 さて、企業は冒険者を雇って何をするかと言えば一番多いのがダンジョンミート社の様な活動で、ダンジョン内で入手可能な高級食材の入手経路を作るといった物だったりする。


 ダンジョン内には魔物も生息するけど、その魔物が生きていく為に必要な食料などが発生するケースも非常に多い。高難易度になればなるほど強い魔物が出現するってのが常識だけど、その体を維持する為に様々な効果のある食材などがダンジョン側から供給されるって話だね。


 このあたりも謎なんだけど、ダンジョンの何がその配慮というか手配なんかをしてる訳? ダンジョンの存在自体が謎のオンパレードだけどさ、そんなことまでしてくるってすごくない?


 話は戻すけど、その魔物用の食材は当然様々な効果があったり異常なほどうまかったりする訳だ。


 そうするとさ、やっぱり食べてみたくなるってのが人情じゃない?


 で、ここで問題となるのがダンジョン内でしか入手できない素材、ダンジョン産の高級食材の数々。


 チャージレッドブルやブルーバッファローなどの肉。ダンジョン内の川や海で獲れる海老蟹などの魚介類。特定のダンジョン内でしか採集できない果物類などもかなり高額で取引されていると聞く。


 変わり種で言えば岩苔とか木耳系のキノコとかが有名で、その他にもいろいろと下拵えが必要な食材も結構ある。


 大体ダンジョンに生えている植物なんかは誰かが持ち帰り、ダンジョン植物学専門の研究員などがその有用性を調べたりしてるんだよね。


「ダンジョン協会経由で買い取る事も多く、新種の植物などは結構な高値で引き取られる事もある。だからダンジョンの深層に潜ったら手当たり次第に周りの植物を回収していくこともあるって話だ」


 魔物の肉よりも、魔物が食ってる食材の方が大体美味くて評判がいい。


 例外があるとしたらドラゴン肉系位だろうか? やはり強い魔物の肉は旨いってのが常識って話だね。


 ダンジョンミートというかダンジョン食材といえばドラゴン肉が頂点と言われ、古龍種の肉になるとグラムで百万を超える物も珍しくないって話だ。


 誰が食うんだよ、そんな高級肉!!


 このダンジョン産の肉は取り扱いが難しく、新鮮な状態でダンジョン協会に売りに出せばそこそこの値段で買い取って貰えるけど、少しでも劣化しているとすぐに買取を断られるそうだ。


 一獲千金を狙う冒険者の中には、こうした高級食材を探している人もいるって話だね。俺も一度位食ってみたいけど……。


「一生のうちに一度は食べてみたいって言われているのがドラゴンステーキ!! 何処の部位でも百グラムで億するような肉を正確に味わえる舌をしてるかってっ言われると怪しいけどさ」


 でも食ってみたいじゃん。ドラゴン肉。


 他の限定食材と違ってどこで入手できるか分からないし、ドラゴンだったらダンジョンの最下層ラスボスで結構いるって話だしね。


「海産物系は海岸型のダンジョンか、海底神殿型のダンジョンでしか入手できない。川魚とかも獲れる場所は限られているらしくて、そういった場所は高級食材専門の冒険者で占拠されてる事が多いっぽい」


 どこの国でもグルメというか美食家は居るもので、しかも結構な金持ちが多い。当然権力者の数もね。


 本来厳しい制限が設けられているダンジョン産の採集物。各国でしか入手できない食材は基本的にその国でしか食べる事はできない。


 だけどあの手この手で厳しい各国の税関を抜け、時には海を、時には地下を掘ってまで希少な食材を欲している。


 そこで世界のダンジョン連合のような組織で話し合われ、食材としてしか利用できないダンジョン産の産物に関しては正規に取引が可能となった。


 おかげで希少な食材の価格はうなぎのぼりだし、希少な食材が取れるダンジョンは企業が大量の冒険者を送り込んで独占している事も多い。


 無数にあるダンジョンの全てを把握している訳じゃないし、偶に他のダンジョンでそういった食材が見つかるとすごい事になるけどね。


「ダンジョンが出来て世界が変わったって話だけど、俺達は生まれた時からだから世界が変わったって実感なんてないんだよな……」


 解放直後は特にすごかったらしい。


 まさにフィーバー!! 世界中が異常な熱気に包まれ、誰もが力と富を求めてダンジョンへとその実を投じたって話だ。


 テレビでは連日ダンジョンに挑む若者の話題が派手に報道され、ダンジョンで効果で希少な魔石や魔宝石が見つかる度に俺も俺と、学校や会社を辞めたりしてまでダンジョンに潜ったりしたそうだ。


 今はかなり現実が知れ渡ってるから、余程無茶な人しか三十台を超えて冒険者登録したりしないって話だね。


 つまり、ダンジョンに登録してステータスカードを作るのは誰にでもできるけど、登録した後の状態はかなり差があったって話だ。


 分かりやすく言えば、十五歳の俺達と百歳を超えるご老人。偶然にもカードに記載された初期ステータスが同じだったとして、その能力は本当に同じかどうかって事。


 俺も専門家じゃないから詳しい事は知らないけど、実際にはある程度高齢になると魔素を取り込んだり効率よく体内で循環させることができないらしく、同じステータスでも大体四十歳あたりから能力の低下が始まるって言う事だ。


 若いうちから氣力をあげてるとこの加齢による劣化が始まらないらしく、カンストさせるとずっと若いままなんて言う怖い噂すらある。


「ダンジョングルメか……。一度ハマると凄いって聞くけど、そんなに美味しいの?」


 美味しいだけじゃないって話は聞く。


 ものによってはステータスが上昇したり、生命力や魔力が増える事すらあるって話だ。


 怪しい情報の中にはステータスポイントやスキルポイントが増えたってのもある。かなり眉唾な情報だけど。


 それは置いといとくとして、やはりここは何かダンジョン内の食材を使った料理を食っておくべきか?


 そこまで珍しい食材でなけりゃ、入手も可能だしな。


「とりあえず料理スキルの習得と、ダンジョン食材の入手だ。肉系だったらこの辺りでも何ヶ所か手に入るダンジョンがあったはず」


 入手難易度でいえば、流石に頂点に君臨するドラゴン肉が最高なのは間違いない。


 それ以外の食材だと、肉類、魚介類、キノコ類、特殊食材といった感じだろうか?


 大体有名な食材なんかは場所が割れているし、北海道ダンジョンの花園って場所で獲れる蜂蜜とか山口の海底ダンジョンで入手可能なアワビなどの魚介類がそれにあたる。


 長い間秘匿されていた情報もあれば、あっという間にばれて広まったケースもあるんだよね。


 今は配信サービスですぐにばれるから、美味しい食材の場所はすぐに知れ渡る。


 普通の食材と違ってダンジョン内は幾らでも食材なんかがリポップするから材料が枯渇する心配が無いのは大きい。


 ただ、場所が海でも漁船とかを持ち込みにくいし、魔物がいるから何とか作り上げた船を浮かべると危険だとか色々あるんだけどね。


「もう少し稼いだら一回商業ダンジョン近くのダンジョン食材を使用したレストランに行くのもいいかも」


 高額な魔石か現金払い限定らしいし、最低でも一食一千万必要って話だ。


 ……やっぱり焼肉食べ放題でよくね? うん、いいよな。


 ダンジョン料理はそのうち入手したのを自分で料理すりゃいいし……。


「ドラゴン肉が手に入ったら、色々作ってみるか」


 肉は焼けばいいしな。


 焼くにも腕が必要だけど、料理スキルをあげりゃ問題ないだろ。



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