第二十二話 商業ダンジョン
電車を乗る事二駅となり、割と近い隣町。……電車が来るまでの待ち時間とか色々考えると、今の身体能力だったらマジで走った方が早いんじゃないかと思うけどさ。歩道に誰もいない条件付きだけど……。
というか、ここって近くにある七つのダンジョンの一つだよ。
俺が最初に向かった過疎ダンジョンに近い条件なんだけど、ここも割と過疎ってたので商店街や医療施設として利用されてるって訳だな。
ここを訪れる人が全員ダンジョンに潜らない訳じゃなくて、ある程度はダンジョンに潜ったりするらしい。
新しく買った武器の試し切りとかそんな感じらしいけど……。
分かりやすい。すっごくわかりやすいんだけど。ただ、ダンジョンの入り口前に商店街の商業ビルよろしく、でっかい看板が建てられてるのはどうよ?
しかもハマグリ咥えたアオサギの看板って立体物かよ!! 存在感が半端ないな!!
『カカカ、カイトリ~♪』
近付いたら音声まで出るのか。夜中は流石にこの音声切ってるよな?
何も知らずにこれ聞いたらビビるぞ!!
「というか、ダンジョン周りにもいろんな店があるんだけど……」
そりゃダンジョンの周りも開発されるだろうけどさ、向こうの一角は明らかにダンジョン成金向けのお店というか……、ちょっとエッチなそっち系の店?
ダンジョンで稼いだ後は財布のひもも緩むだろうしな。
他には呑み屋街もあるし、焼肉屋もあるね。流石に高そうだから入らないけど。
あ、ダンジョンミート提供店とか看板が出てやがる。
「アレの一部でも捌ければ入れるんだろうけど、貧乏舌の俺はあんな店に入っても楽しめないだろうしな」
食べ放題の店にしかないワクワク感というか、楽しめる空気ってのがあるんだよね。
ひとりで好きに食べてても文句言われないし。
ま、それでも限度があるけどな。食べ物で遊ぶのはよくない。
「そんな事よりまず換金だ。魔石系は売らないにしても、あきらかな換金系アイテムは売ってもいいだろ」
鬼のパンとか巫女さんのプロマイドは売れないだろうけどさ。流石に売る気も無いけど。
◇◇◇
という訳で入ってみました商業ダンジョン!!
割と高価な魔石灯でダンジョンの中を明るくしてるのか。
あのデカさだとかなり高いだろうに。
入口に一応地図があるね。これだけ広いと迷うだろうしな……。
「ハマグリを咥えたアオサギの店……。店名まんまかよ!!」
確かにインパクトはあるし、というか目印じゃなくて買い取りって吹き出しがあるだけで店名の方は看板そのまんまだ。
分かりやすくていいけどさ。
「店の中は……、流石に厳重な警戒というか」
「いらっしゃいませ。どのようなご用件ですか?」
グラサンをかけた黒服が声をかけてきた。
……そこそこ強そうだけど、流石に今の俺とは勝負にならないだろう。
氣力が三百超えてるから、拳銃程度だと痛くも無いしね。
しかしどのようなって、ここに来る用事なんてひとつしかないだろ? それとも他にあるの?
「え? ああ、買い取り目的ですが、買い取りの他に販売もしてるんですか?」
「商品の販売は向かいの店でやっております。この店は買い取り専門ですので」
「ですよね~。ダンジョン産の宝石類を売りたいんですが」
「宝石ですか……。でしたら七番の受付をご利用ください」
「七番ですね」
なるほど。魔石や特殊なアイテム、ダンジョン産の薬類、そして宝石系といろいろ分かれてるのか。
特に厳重なのが薬類の受付か。アレはいろいろグレーゾーンらしいし、本来は売り買いも制限されてるって話だ。
そりゃ、ここみたいなダンジョン内で使用すれば腕が生えてくる薬とか表には出せないよな。
今だとダンジョンの周辺でもかなり広い範囲で回復薬とが効果を発揮するようになったしね。昔はダンジョン内だけだったらしいけど。
それより宝石類の買取価格だ……。
かなり美人だけど……。なんとなく黒い気配を感じるな。
「いらっしゃいませ。何処のダンジョン産の宝石ですか?」
「あ、それ言わないと駄目なんですか?」
「はい。ダンジョン産は割と判別しやすいんですが、それでも極稀に屑魔石とガラスを加工した偽物が持ち込まれますので」
あの過疎ダンジョン産っていって信じて貰えるのか?
あそこには多分ゴブリンがいる位しか情報は無いだろ?
「信じて貰えないかもしれませんが、私立深淵学院が管理する過疎ダンジョンの地下三階でドロップしたんですが……」
「はい?」
「あそこの地下三階が遺跡ダンジョンに変化していまして。これ、証拠の映像です」
スマホに撮ってた遺跡ダンジョンの映像を見せてみた。
森林系から遺跡に姿を変えたダンジョンの姿を割といろんな角度から撮影してるぞ。
「これ……、本当にあのダンジョンで入手できたんですか?」
「十年くらい誰も潜ってなかったみたいですし、誰も気が付かなかったんでしょうね」
「ダンジョン協会に報告はされましたか?」
「はい。この映像も提出済みです」
「チッ!!」
おい。なんだよその舌打ちは?
もし報告してなかったらうちの三年あたりを向かわせるつもりか?
多分こいつが復活してたら三年でも勝てないと思うぞ。
「それで、こいつからドロップしたのがこのダイヤです」
「これは
「それなりに強そうでしたからね。こいつ」
このダイヤをドロップしたあの喋る死霊の画像を見せてみた。
あれ? 顎が外れそうな位驚いてるんだけど……。何事?
「……
「流石にステータスはばらせないですね。こいつに勝てる程度ですよ」
「いや。それおかしいから」
スマホに穴があきそうなくらい死霊の映像を見てるんだけど。
そういえばあいつ倒してどのくらいレベルが上がったのかは見てなかったな。
……ここに来る電車の中でみりゃよかったか。
「割と有名な死霊なんですか?」
「過去に何度か目撃されていますが、討伐報告は無し。初撃で即死系の闇魔法を使って来るって話で、運よく範囲外に居た冒険者が過去に数名だけ生き残ってるわ」
「ああ。アレがそうだったんですね。割と見掛け倒しでしたけど」
「その反応は喰らって生きてたんですね。足はありますか? もしかして体温が室温と同じとか言いません?」
「そのネタ流行ってるんですか? ちゃんと生きてますって」
どうして足を確認するかな?
しかし初手即死魔法を無効化されたから死霊が驚いてたのか。
……で、あの死霊が
「超純度の魔素が籠った
「どのくらいですか?」
「……このクラスですと早くて一週間ですね」
一週間って。
そんなに時間が掛かるの?
それじゃあミノタウルスの宝箱から出た宝石の中から結構小さめなのをひとつ。これは本当に小さくて、白ゴマより少し大きい位?
これも
「それじゃあ、こっちはどうですか?」
「これも
「いくらくらいになりそうですか?」
「割と高純度の魔素が籠っていますので、このサイズでも三百万円くらいですね。さっきのダイヤですと、最低でも十億はします」
「はい? 十億? アレが?」
いや、マジでダンジョン成金じゃん。
何でそんなに高いの?
「
「増色って事は、ステータスカードの色を増やせる例の?」
「はい。あのダイヤでしたらどんな錬金術師でも確実に魔石化しますし、そうなると価値の方も……」
何色が増えるかって話だよな。
通常五色は安いって話だけど、それでも億を下る事は無いだろうし。
「あのクラスのダイヤは増える色が金か銀確定なんですよ。こちらの魔宝石ですと高純度でもサイズが小さすぎて、アクセサリー類に加工はできますが増色の魔石に加工はできませんね」
「それでそこまで値段に差があるんですね……。ダイヤの方はそりゃ天井知らずの値が付きますよね」
「オークションにかければいくらになるか分からないですね。国内はもちろん、海外からも入札があると思いますし。海外勢は代理人立てると思いますが」
オークションかぁ……。
希少なアイテムなんかの多くはオークションで売り介されてるって話だよね。そりゃ額が額だから仕方がない。
信頼できるのはダンジョン協会が主催のオークションだけど、持ち込む場所は大きい支局か本部って言われてる。
大きい組織だからやっぱり手癖の悪い奴も混ざってるみたいで、年に何回か逮捕者も出てるしな。
あと、ダンジョンから出た物は基本的にその国で使う事になっている。だから海外の物で欲しものがある時はその国にいる代理人に結構な額の手数料を払う必要があるとか。
政治家と関わり合いのある組織の事が多いって話だね。
「あの
「もちろん買い取りいたしますよ。今後ともよい取引が出来そうです」
「助かります。この辺りなんですが……」
ボス宝箱から出た宝石類で明らかに小さめな
……お姉さんの目つきが怖いんですけど。
「この大きさでこれほどの純度の
「どのくらいになりそうですか?」
「全部で四千万円くらいですね。特にこの二つはひとつ千五百万円で買取できます」
だいたいこういったドロップアイテムって魔物の強さに比例するらしい。
流石に
しかし、四千万円か。一気にお金持ちだね。
「そんな額をすぐにポンと用意できるんですか?」
「先ほどのダイヤは無理ですが、当店の規模ですと数億程度でしたら何とでもなりますので。では少々お待ちください」
四千三百万円か……。ホントに一気に金持ちになったな。
帰りに焼肉食い放題は確定として、明日の予定を大幅に変更する必要があるかもしれない。
初心者用ダンジョンにもいきたいけど、他にもいろいろとやりたい事はあるしな。
「お待たせしました。こちらが現金四千三百万円です」
「うわぁ。帯を巻いた札束なんて初めて見たけど壮観ですね。特にこの一千万」
「冒険者をしていますと割と目にしますよ。一流冒険者だけですけど」
俺は登録二日目の超初心者冒険者なんだけどね。
一流……、一流って何だろう?
冒険者の強さなんて、多分色数と運で決まるだけだと思うぞ。
「そうなりたいですね。えっと、百万の束をひとつだけバラシて、十万円だけ財布に入れておくか」
「ダンジョンリングにいれていますと、いざって時に取り出せませんよ?」
「臨時収入ですし、いざなんてことは滅多にないですよ」
武器とか売ってる店もダンジョンの商店街が多いし、ダンカに換金する時も同じだし。
「ねえ。お兄さん。生命力幾つあるの?」
「はははっ、冒険者にそれを聞くのはタブーですよ」
「そうですよね……。チッ!!」
また舌打ちした!!
というか、俺の生命力を聞いて俺のステータスを予測するつもりか。
筋力や氣力なんかの予測は簡単だからな。俺の場合は運が高すぎるから読み切れないだろうけどさ。
「それじゃあ、またお願いしますね」
「はい。またのお越しをお待ちしております」
何か店の中で何か大声が聞こえた気がするけど気のせいか?
さてと、そんな事より……、やっきにく喰い放題いだぁぁぁぁっ!!
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