第十九話 過疎ダンジョン地下三階に潜む影
という訳でやってきました再び地下三階。ていうか、状況的には上と変わってねぇ!!
流石にここまで強くなると、この階にいる魔物すら俺から遠ざかるようになりましたとさ。
レベル的には大したことないのに、魔物の気配がどんどん離れていくんだよな……。
ステータスを振る前はこうじゃなかった。つまり、ステータスのどれかを魔物が感知してる可能性があるぞ。
魔力や生命力の可能性もあるけどさ。
「とはいえ、こうして部屋で待機してる魔物は逃げられまい。袋のネズミってやつだ」
今のレベルはまだ六。オーガクラスの魔物が出てればレベル十に届く可能性すらある。いやいくら必要経験値が十分の一になっても無いか。
三百の四倍は千二百程度だしな。
「まだ調べてない部屋はふたつ。ひとつはボス部屋だろうし、もしかしたら宝物部屋の可能性もあるのか?」
嬉しいけど嬉しくない可能性。
大体このレベルの魔物が出て来るエリアの宝物なんて大した事ないしな。
魔物がいる場合は宝箱の中身が数ランクアップするし、魔物がドロップするアイテムも入ってるしさ。
これが深層にある宝箱部屋になると状況は変わる。
トラップがある場合が多いけど、魔物がいた場合より貴重な物が出てくる可能性が高い。
例の色数が増やせる魔石なんかがその典型だ。アレは流石にレア中のレアだけどさ。
「中から魔物の気配を感じないし、期待半分って所かな? という訳で、いくぞ!! ……戦闘の時間だ!!」
入口にトラップが無い事は確認したので、勢いよく扉を蹴り上げる。
なかには魔物が……、いた。反応薄いなぁと思ってたけど、そういう事か。
ボロボロの衣を纏った半透明な存在。
ダンジョンで浅い階に出て来る事はほぼ稀な死霊系の魔物だ。
「死霊系? というか、結構厄介な奴だね。周りにゾンビやスケルトンといった雑魚の取り巻きも無し、強敵だな」
キング系の死霊だと配下の騎士だとか魔法使いを引き連れている事もあるが、アンデット系で群れる魔物はたいてい弱い。
単独で出て来るのは内包している呪いというか、抱えてる恨みとか溜め込んでる怨念の量が凄まじい場合が多い。
で、もし周りに他の死霊がいた場合は自分に取り込んで力にするって事らしい。
逆に一定レベル以下の死霊は他の死霊と仲良しこよしで群れるって話だ。一人だとさみしいんだろう。
「仕掛けてこない……。流石に能力差を理解しているのか」
このクラスの死霊になると知能が割と高い。
そうだ、こいつはスマホで姿を記録しておくか。
「一応カメラには映るのな。……心霊写真というか、ダンジョンを彷徨う謎の怨霊!! とかたまにやってネタにしてる奴いるよな」
あまりウケてるのを見た事が無いけどね。
お、闇魔法を使い始めたな。
色スキル以外で存在する数少ない魔法。
冒険者には習得できないって話だけど、魔物の技や魔法を覚えられる特殊なクラスだと習得可能らしい。
後は特殊なスクロールなんかで覚えられるそうだけど、消費魔力の割にあまり使い道がない魔法が多いって聞いたな。
「と言っても、俺は金スキルレベル十にしてるから闇魔法なんて効かないけどな」
金スキルはその為に神聖魔法って呼ばれてる。
金と銀だけは他の色系とはかなり使える魔法とか手に入るスキルが違うんだよな……。他と比べて圧倒的というか、わかりやすい差があるんだよね。
『キカヌダト……』
しゃべった!!
って、コイツ知能がかなり残ってるタイプか。
相当レベルが高い魔物の可能性があるな。でも、なんでこんなに高レベルな魔物がこんな浅い階層に出るんだ?
「過疎ダンジョンの地下三階程度が高難易度化した? そうなると、二階のあの状況がおかしい……」
高難易度ダンジョンにレッサーゴブリンなんてお呼びじゃないしな。
基本肉も殆ど無くて食う所なんてないから、他の魔物の餌にすらなりゃしない。
「こいつの正体は後で調べるとして。とりあえず浄化しとくか」
アンデット系には基本祝福された武器以外での通常攻撃は効かない。
魔銀製か神銀製の武器が効くけど、それ以外だと金色スキルが無いと攻撃手段が存在しない。
魔銀や神銀は鍛冶スキルでインゴットを作るか、ダンジョン産の武器にしか使用されてないって話だな。
他に何かあるとすれば、神社とかで作る札とかには効果が高い物もあるそうだけど、何処の神社のどの札がアンデットに効くっていう情報は極秘らしい。
アンデット系が多いダンジョンは冒険者に敬遠されがちだけど、アンデット系からドロップする宝箱はかなり価値が高いんだよね。
「神聖魔法系金スキルレベル六。聖なる祝福……」
『ギャァァァァァッ!!』
俺が使ったのは悪魔ですら浄化可能な浄化魔法だ。油断しきってた喋る死霊は無理やり祝福されて光と共に浄化されましたとさ。
浄化なのに消える時に何故か苦しそうだったけどね。
「あのレベルの死霊がマジで出て来るんだったら、金系スキルが無いとこの辺りは探索も出来ないぞ」
実体のない死霊系魔物には魔法も効果があまりないし、物理攻撃なんてそれ以下だ。
アンデット系にダメージを与えられる武器を持ってる冒険者なんて、本当にごくごく限られた一部だけだしな。
「ダンジョンが出来て結構経つけど、死霊系と悪魔系の魔物に対する手段はまだまだ少ないんだよね」
火とか水みたいにわかりやすい攻撃じゃないから、対策が遅れたんだったか。
ダンジョンが開放された時はホントに何もなくて酷かったって話だ。
【レベルが上がりました】
喋る死霊系とか、そりゃレベルくらい上がるよな。
ステ振りは後にして、とりあえずこの階を攻略してしまうか。
ポイントを振りもせずにそのままとか普通だったらありえないけど、俺の場合単色持ちみたいに数ポイント振って終わりじゃないからな……。
死霊のいた場所にはデカい魔石が残ってる。他にも宝箱が出現だ!!
「当然のように宝箱も出たな。これだけ運が高けりゃほぼ確定なんだろうけどさ」
運四百って、あれだぞ。適当に買った宝くじが毎回一等になる位の豪運。
未来予知なしで数字選択式の宝くじが当て放題なレベルだ。
まだ高校生だから買えないけどさ。
「魔物を倒して出た宝箱だから罠は無し。こっちは報酬だからな」
宝箱部屋の宝箱にはトラップがあるらしい。
クラスが忍者とか盗賊系だと開錠のスキルがある。俺も忍術スキルレベル五のお陰で開錠できるけどね。
……忍術の隠密使えば、あの逃げていくオーク共も倒せる可能性はあるのか?
いや、今日のところは見逃してやろう。今日は此処のボスの確認が優先だ。
「宝箱の中身は……、根暗そうな巫女さんのプロマイド? あの死霊愛用の逸品か?」
なんでこんな物を? って、なんとなく理解してそっとインベントリにぶち込んだ。これ、絶対さっきのパンと同じ系列だろ!!
他にはなんか純度が凄そうな魔石と、こっちは宝石だな。
「ビー玉と同じ位ありそうなダイヤとかやばくね? 他にも高そうな宝石がゴロゴロと……」
これは売れるの? 希少過ぎて売れないとか無いのかな?
後は指輪と腕輪がいくつか……。このあたりは後で鑑定しないと駄目だな。
「今日の稼ぎはすさまじい額になりそうだ」
いやマジで。
今日の晩飯は帰りに焼肉でもいいかもしれん。それも豪華に食べ放題の四千円コース!!
いや、焼肉食べ放題の四千円のコースなんて誕生日位だぞ。
地上産の肉はダンジョンミートの肉より安いとはいえ、世界情勢が変わって物価もかなり変わっちまってるしな。
ダンジョンミートやダンジョンシーフードはダンジョン内で手に入る希少な肉で、最低でもグラム数万する超高級肉だ。当然食べ放題なんて存在しねえ!!
いいのさ、俺はお手頃な肉で。
「っと、その前にここのボスだよな。その結果次第でもう一つ上のコースになりそうだぜ」
焼肉食べ放題特上五千円コース!!
一度頼んでみたかったんだよ。千円高いだけなんだけどさ、もう千円あれば次の日も豪華な飯が食えるじゃん。
って、今は飯より魔物退治だ……。
頭の中は既に焼肉一色に染まってるけどな。
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