第十七話 過疎ダンジョン地下三階の真実




 昨日に引き続いてやってきました超絶過疎ダンジョン、今日も俺以外誰もいやしねぇ!!


 今日の目的は三階まで攻略する事と、俺が覚えてる魔法やスキルなんかの確認だな。


 青スキルレベル七で覚える氷の竜巻や黄スキルレベル七で覚える石刃の竜巻なんかは範囲攻撃だし、どのくらいの威力があるのか知っておかないと危ないしね。


 ただ、消費魔力が百くらいある筈だから今の俺だと最大で三発くらいしか打てないのが欠点か。


「白スキルで覚えてる魔法で使えないものがあるんだけど、たぶん知力か賢力が足りないって事なんだろうな」


 一部のスキルには必要ステータスが存在してるとか聞くしね。っていうか、それ普通の単色だとずっと使えない奴が居るんじゃね? 毎回六出さないときついぞ!!


 魔法なんかの威力は知力でかなり差が出るって聞いてるしな……。


「という訳で試し撃ちをしたかったんだけど、周りに魔物の気配はなしときたか」


 まあ、いる訳ないよな。


 昨日あの場所に行くまで散々探した位だし、しかたね~か。


「あのウサギもいないな。なんとなくユニークモンスターっぽいし、もう会う事もないだろう」


 一応今日もお礼としてバナナを買ってきてるんだけどな。メインは昨日の夜にスーパーで買った奴だけど。


 バナナひと房のお礼と考えるとラッキーダイスの恩恵がデカすぎだし、追加でもう少しバナナ位あげてもいいかな~って。


 ……なんか、足元でプップ聞こえてるけど、気のせいじゃないよな?


「おっかしいな、割とステータスが上がって魔物の気配には敏感になってるはずなのに……」


 今日もいるよ。あのウサギ。


 というか、いつの間にか足元にいるんだけど?


 バナナの房の一番根元の部分だけ持ってきてるって事は、お替りの要求かな?


「あの飴玉の恩恵が後四レベル分あるからな。昨日よりもっと多い房を持ってきたぞ」


 あのスーパーで売ってた十本以上ついてる大き目の房だ。


 安かったから出血サービスで二房置いてやる。バナナと俺を何度も見比べて足元にスリスリして来た!!


「ひと房咥えて、……このウサギ、バナナをインベントリか何かに収納したんですけど……」


 魔物ってインベントリを使えるのか? というか、このウサギが特別?


 そういえば、昨日の飴玉もどこかから取り出したし……。


「もうひと房やるけど、それが最後だから。明日はもう来ないけど、達者でな」


 そう言ったら、なぜかもっと足元にスリスリした後、バナナを咥えてどこかに行った。


 お礼のつもりだったのかな?


「それじゃあ、さっさと三階に降りますか」


 魔法を打つ回数にも限りがあるからね。


 黄スキルレベル二のロックバレットくらい試し打ちしておくべきだったかな? 消費魔力五だし……。


◇◇◇


 昨日馬鹿みたいにレッサーゴブリンが蠢いていた三階に行くポーター前にすらレッサーゴブリンが存在しなかった。


 昨日のあの数はいったい何ごと? というか、レッサーゴブリンの群れが再配置リポップされるまでの時間が二十四時間以上なのか?


 今回は本気で戦闘することなくここまでたどり着いたよ。


「と、いう訳で無事に辿り着きましたポーター前。ここまで三十分もかかってないぞ」


 ステータスが上がってるから多少走ったくらいじゃ全然疲れもしない。


 冒険者登録したらスポーツ選手になれないってのも納得だよな。


 レベル二でも速力にステ振りされてたら百メートル走とか成立しねーもん。速力にステ振ってるレベル二十以上の冒険者なんて全員数秒台だろうし。


 今の俺だって全力で走り幅跳びしたら三十メートルくらいとべるもんな。


「これが三階に続くポーターか。確か三階は奥にボス部屋がある筈なんだけど十年以上前の情報だし……」


 ボスとしているのが普通のゴブリンで、その取り巻きを率いてるのがレッサーゴブリンリーダーだっけ? ゴブリンとほぼ変わらない大きさのレッサーゴブリン。


 小ライス大盛り並みに無意味な分類とか言われてるアレだな。


 レッサーゴブリンなのにそいつだけは倒せば経験値が二くらいはいるらしい。


 三階のボス部屋で宝箱はドロップするけど、そこからは高確率で買い取り不可と評判の棍棒が出て来るそうだ。意味ね~。


 さてと、気合を入れていきますか。


「ポーターを使って三階に降りて来たけど……。何かおかしくない?」


 ダンジョン内の雰囲気が変わった。


 二階とは明らかに違う異質な気配。


 レッサーゴブリンなんかとは比べ物にならない殺気というか、強力な魔物の気配がする。


 昨日ここに来てたら牛頭ごず達の事を笑えない事態になってただろうな。というか、レベルアップ前だったら俺の場合は死んでたかもしれない。


「大体地下三階も森っぽい場所の筈だろ? なんで遺跡風のダンジョンに化けてんだよ」


 天井は高いけどエリアを区切るように壁はできてるし、扉付きの部屋がいくつもある。


 ん~、なんというか、これって典型的な遺跡型ダンジョンだよね?


 この状況はスマホで記録しておくか。もしかしなくてもこのダンジョンの難易度とかが変わるかもしれないしな。


「問題は出現する魔物か。これだけ殺気を発しておきながらレッサーゴブリンって事は無いだろう」


 何というか、独特のピリピリとした気配を感じる。


 ステータスが上がってるから気配を察知しやすくなってるんだろうけど、その今の俺が此処までプレッシャーを感じる存在。


 おそらくだけど、レベル二桁の冒険者がパーティを組んで挑むような魔物の筈。


「戻るか? ……いや、どんな魔物が出るかだけでも確認しておかないと」


 こんな状況だと迂闊に高レベルな魔法は使えない。先に魔力が尽きたら終わる。


 低レベルの魔法でどこまで戦えるか……。


 剣術スキルがあるから接近戦はそこそこ何とかなるだろうけど、問題はこのショートソードが何処まで持つかだ。


「とりあえず一番近いあの部屋を開けてみるか。危険な気配がプンプンするけど」


 最低でもレベル二十近いミノタウルスクラス。


 もしかするとそれ以上の魔物がいる可能性すらある。


 倒せれば経験値が馬鹿みたいに入るだろうけどさ!!


「鬼が出るか蛇が出るか。別に牛でも豚でもいいけどな!!」


 思いっきり扉を蹴り開けると、そこにはわかりやすい一本角の鬼が待ち構えていた。


 雑魚だとこの扉を蹴り開けるで驚いたりするんだけど、まるで意にも介していないように堂々と待ち構えてくれている。


 ……鬼が出ちゃったか~。こいつ、確かオーガだっけ? レベルは確か十八とかそんな感じの。


 二十までは行かなかったけどほぼ同レベルの危険度だ!!


 手には何で出来たか分からない金属製の棍棒状の武器を持ち、鎧もなにも装備してないその体は鋼の様な筋肉が黒光りしてやがりますよ。


「取り巻きは無し、タイマン希望って訳だ」


 先制攻撃で魔法って選択肢もあったけど、あの、かかって来いよ三下的な笑みで挑発してくれてる魔物相手にいきなりそれは無いだろう。


 ショートソードが不安要素だけど、ステータス的にはやりあえるレベルの筈だ。


「構えろよ。相手になってやる」


 オーガは鼻で笑った後、めんどくさそうに首を鳴らしながらゆっくり立ち上がった。


 大体三メートルくらいか?


 あのくそ重そうな棍棒を軽々持ち上げてる位だから力は相当なんだろう。って!!


「あっぶねぇ!! いきなりダッシュから棍棒振り下ろしてんじゃねぇぞ!!」


 ダッシュと言っても今の俺から見たらレッサーゴブリンより遅いし、流石にあんな速度だと後れを取る事なんて絶対にない。


 動体視力が上がってるからほぼコマ送りだったけど、おそらく結構な速度で棍棒が振り下ろされたみたいだね。


 あれ? こいつ見掛け倒し?


「こっちも反撃だ。ショートソードでひと薙ぎ……って」


 牽制の為に、ショートソードを横にひと振りしたらオーガの身体は真っ二つって!! え? その黒光りする筋肉って飾り?


 レッサーゴブリンと違いが分かんないくらいに柔いんだけど? 


 様子見の斬撃でいきなり戦闘が終了したぜ。


 いや、脆すぎだろ!!


「えぇ~。もしかしてこいつ見掛け倒……」


【レベルが上がりました】


【ラッキーダイスの効果が終了しました】


 へ? 頭の中にファンファーレが響いたけど、って、ステータスカードみたら四つもレベルが上がってやんの。それでラッキーダイスの効果が切れたんだな。


 こいつ一匹で経験値二千四百三十七もあったの? いや、違うな。今回のこれはレベル差ボーナスだ。


 魔物とのレベルが五つ差があるごとに入手経験値が倍だっけ? レベル差が十五あったから八倍の経験値が入った訳か。


 割ったら三百ちょっと。そんなもんだよね。


 というか、二色持ちでもレベル十五辺りだとレベル上げるのに六千近い経験値が必要だし、その位貰えないとやってけないかな。


「正確な能力値とかを検索すりゃよかったのか? ……アレで索敵して正確な情報が入るとは思えんけどさ」


 また該当しませんとか、オーガですね。と表示されそうな気がした。


 新しいアプリをゲットするまで検索機能には期待しないでおこう。


「で、今回も馬鹿みたいにポイントが……」


 新たに獲得したポイントはステータスポイント四千九十六ポイント。スキルポイント千二十四ポイント。


 スキルポイントは前回の繰り越し分も合わせて千二十八ポイントある。


 って、馬鹿みたいに伸びてるステータスポイントはいったい何事? ラッキーダイスの影響で六が出てるとしても多すぎだろ?


「運をあげると多少はポイントが増えるとか言われてるけど、スキルポイントも増えてるって所に答えがあるのか?」


 ……っ!! 緑分か!! 新しく一色増えたから、それでポイントが倍に化けたんだ!!


 にしてもステータスポイントは多すぎだな。


 四千ポイント越えって。これ、ステータスカンストするんじゃないのか?


 色が増えても次のレベルに必要な経験値は増えてない……。


 つまり一番最初に設定された必要経験値より増える事は無いのか。これ以上増えても困るし助かる。


「とりあえず一度二階に戻ってステ振りするか。おっ!! 宝箱が出てる」


 あのオーガっぽいのがボスじゃないみたいだけど、いちおう宝箱が出たな。


 中身は……、パンがふたつ? ああ、鬼のね。


 それと普通の宝石類が結構あるな。これは高く売れそうだし、最高の臨時収入になりそうだ。


 後はオーガの魔石。レベル十八程度の魔物だからそこまで期待はできないだろうな。


 パンは後で鑑定するとして、宝石は売れば結構するだろ。オーケーオーケー、俺は心が広いからな。ダジャレっぽいパンこの程度のアイテムで怒ったりしないさ。


「でも、ホントなんだったんだろうな。他の部屋にも同じレベルの魔物が居そうな気がするし……」


 今貰ったポイントを振れば楽勝だろう。これで確実に単色のレベル百より遥かに強くなるぞ。



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