第2話 思いがけない出会い。

「藤原。ちゃんときいてんのか?前出てこの問題解いてみろ。中3だってのに授業中寝るとは、ここは一貫校だからっていいご身分だな。今頃の公立校の雰囲気はピリピリしてるもんなんだぞ。」

説教じみた嫌味を僕に吐くのは数学教師の増田。この先出てくる予定は無いので忘れてしまって構わない。こいつ、僕がちょっと数学できるからっていっつも嫌味言ってくるんだよな。確かに高校受験がないから勉強もしてないし授業中寝るのも悪いが、退屈なものはしかたないだろう。

「ガタッ」

しかたなく黒板の前へ向かう。

『x^n+y^n=z^nを満たす自然数の組(x,y,z)が存在しないことを証明せよ。(n=4のとき)』

ってこれ、フェルマーの最終定理じゃねえか。n=4の時はスイスの数学者オイラーが証明したとはいえ、かなり難易度が高いぞ。中3に解かせる問題じゃねえだろ。

「無限降下法より...よってこの等式を満たす自然数の組(x,y,z)は存在しない。証明終了と。」

「せ、正解だ。」

2何分文字を書き続けたのかわからないがどっと疲れてしまった。まあ増田の悔しそうな顔を見れたからいいだろう。

キーンコーンカーンコーン

「玄斗。やっぱり玄斗はすごいな。僕なんて全く方針が立たなかったよ。」

「数学だけは得意だから。」

今話しているのは青山湊。高身長で整った顔を持っていながら学年1位の秀才。おまけに運動全般できる。そんな彼と大親友なんて不思議なこともあるもんだ。

「玄斗、湊、腹減ったな。とりあえず購買行こうぜ。」

「そうだな拓也。」

僕と湊を購買に誘うのは躅井拓也。バスケ部キャプテンで学校1のモテ男だ。運動において彼の右に出るものはいないが、勉強はあまり得意ではない。彼も親友と呼べる存在だ。

「頭使って腹減りすぎて死んじまうよ〜」

ゾンビみたいな顔をして言う拓也に思わず吹き出してしまった。

「とか言って拓也ずっとマンガ読んでたろ。」

「あ、バレてた?いやー今週のワンピ激アツ展開でさ。数学なんか将来使わないって」

こんなくだらない話ができるのもあと少しかと考えると、時の進みが遅くなればいいのになんてぼんやり思う。

ふと階段を見ると、初めて見る女子生徒がいた。なぜか僕は釘付けにされてしまった。 彼女の可憐な仕草は時の進みさえも遅く感じさせた。

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