第13話 ここに居るのは何のため(2)

突然の問いかけに日向は怯む。

「……それだけじゃないけど、でもそれも大事でしょ。友達を作る作らない以前に、僕は優しくされたら返したいと思う」

真っ直ぐ龍の目を見て日向は言った。

「俺はこの学校を卒業するためにここにいる。そしてそのために最善を尽くす。だからさっきのような安易な行動は見過ごせない」

「他のグループと協力するのが安易な行動だったって言いたいの?」

「時には必要になるだろうが、即決するのは良くない。試験のために本当に必要か吟味しないとこちらの足を引っ張られることになる」

日向の言い分も分かるが、龍の言っていることは正しい。

協力するか、しないか、するなら何処とどうするかよくよく考えないと今後後悔することになるだろう。

「……わかった。それで何を話し合えばいいのかな?」

日向が力無く言った。龍の言いたいことを理解したのだろう。素直に認められることは日向の良いところだ。

「まず、全員の具体的な学力を知る必要があるだろう。その上で俺たちで教えられそうなら他の手を借りる必要はない。向こうの学力と比較した上で決定した方がいい。万が一向こうにかける時間の方が多ければそれこそ本末転倒だ。それと––––」

そう言うと龍は私たち全員を見渡した。

「今回の試験で表彰を狙うのか?」

「それは……もちろんいい結果を出したいし、表彰されたら今後有利になるかもしれないから」

「それを目指すのはいいことだと思います。わ、私も足を引っ張らないように頑張ります」

勉強が苦手だと言っていた二人がやる気だ。表彰の基準はわからないがみんなの士気が上がるなら目指すのもいいのかもしれない。

「……そっか」

後ろでボソッと声がした。

振り向くと四季がニコッと笑った。

「二人が頑張るなら応援するよ」

そう言って日向と紅羽の肩にポンと手を置いた。

「ありがとう」

「ありがとうございます」

二人は同時に言う。

「––––俺は––––」

龍が言いかけたところで四季が遮る。

「取り合えず過去問使ってみんなの実力測ってみようよ。ね、緑香ちゃん過去問持ってたでしょ?」

突然話を振られて焦ってしまった。

「あ、一応私が全部持ってるよ」

「それちょっともらってもいい?」

四季に去年の過去問を渡す。ペラペラめくって一通り見た後、龍に手渡した。

「これ、僕と龍と緑香ちゃんで分担して基礎問題だけ抜き出して皆んなで解いてみよう」

「じゃあ場所変えないとだね。机があるところ探そっか」

「この場所ともお別れかー」

何もないただの階段だが、なんだかんだで日向も気に入っていたらしい。名残惜しそうにしている。

「いい場所見つかるといいですね」

紅羽が言った。

「まだ数日しか居なかったのに僕らの拠点になってたね」

四季が可笑しそうに笑った。

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