第12話 ここに居るのは何のため
私たちはこれまでに得た情報、考察を余すことなく全て伝えた。そして新しい情報も手に入れることができた。
一つ目に、試験で優秀な成績を修めたグループは表彰される。
二つ目に、試験中の会話は禁止ではなく、控えるようにということ。
三つ目に、試験はグループごとに行う。
「表彰があるんですね……」
紅羽が心配そうに言った。
この学校で表彰されたといえばかなり就職やその後の人生で有利になるだろう。
「会話は禁止じゃないけど、控えるようにね……。なるほどだから試験会場がバラバラでグループごとなのね」
「スマホ使用可能なら、内容もグループごとに異なるのかもしれないね」
幸弘が言った。
「それか面談で試験の理解度を測られるのかもな」
龍が腕を組む。
それを聞いた紅羽の顔が青くなる。大丈夫かな……。
「ところで、みんなは試験はパスできそうなの? 学力的に」
情報開示と分析が一通り終わった時に、夢が突然切り出した。
一瞬周りの音が消える。
聞きにくいことを臆することなく言えるのは彼女の長所なのだろう。
そしてこちらにも駆け引きなく素直に思ったことを言ってしまう男がいる。
「俺と紅羽はダメそうだから、3人に教えてもらうんだ」
何故か日向が胸を張って言う。
「そうなんだ、私たちも同じ感じで得意な子が苦手な子に教えようってことになっているんだけど、どう、一緒にやらない?」
夢がその大きな瞳でこっちを見る。
日向がつられて「そうしよう」と言い出しそうになる。
「ちょっと考えさせてくれ。みんなで話し合ってから決める」
静かに龍が言った。
みんなの視線が龍に移動する。
「皆んなでやった方が苦手なところとかカバーできていいじゃん」
日向が不満そうに言う。
「戦力は多い方が……。私は力になれませんし……」
紅羽が言った。
「今すぐ決める必要はない。一旦保留にして全員の意見をまとめてから決めても遅くはないだろう。それで構わないか?」
龍が向こうのチームを見た。
夢と龍の視線が合う。
「……そうだね、私たちも急いでいる訳じゃないし、急かしちゃってごめんね」
そう言って夢は謝った。
「いや、こっちこそごめんね。すぐに話し合って決めるからね」
日向は慌てて謝る。
「それじゃあ、決まったら連絡してくれるかな?」
夢はそう言うと日向と連絡先を交換した。
いつもの階段に戻る。なんだか、前より暗くて無機質な感じがした。
「それで、話し合うって何?」
日向はさっきから少し機嫌が悪い。
「せっかく協力しようって言ってくれたのにあんな冷たくすることないんじゃないの?」
そう言って龍を見る。
紅羽はおどおどして間に入ろうか迷っている。
四季は特に何も言わずに龍を見ている。
「そうだな、そもそも確認したかったのだが、日向、日向は友人を作るためにここに居るのか?」
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