第10話 協力しましょ!(2)
日向が話しかけたのは一番近くにいた五人組の女子のグループ。女子だけのグループもやっぱりあるんだと感心する。同性同士の方が上手くいくのだろうか。
彼女たちは最初こそ警戒した様子だったが、日向と話していくうちに楽しそうな笑顔になる。
「それでちょっとお願いがあるんだけど……」
ようやく日向が本題を切り出した。
「次の試験でお互い協力しない? 僕たちが集めた試験の情報を見せるから。……どうかな?」
彼女たちは顔を見合わせる。
何やら目でアイコンタクトを取ったあと、「私たちはいいよ」と一人の女子が言った。
「ほんと!? ありがとう」と日向は嬉しそうに笑う。
ただ、女子たちの表情は冴えない。
「私たちはいいんだけど……」と三人の女子は気まずそうに残りの二人を見る。
「難しいかな?」
四季が伺うように言う。
「私たちのグループは……、ちょっと難しいかな。ごめんね、一応聞いてみるけど……」
「五人は一緒のグループじゃないの?」
日向が言う。
「私たちは別のグループなの」
「ちょっと事情があって……」と彼女は言葉を濁した。
そして彼女たちは気まずそうに顔を見合わせ、それぞれのグループの元へ戻っていった。
「何かあったのでしょうか……」
紅羽が呟く。
「みたいだね……」
後でそれとなく事情を聞いてみようかな、なんて考えていたら三人組の女子が教室に戻ってきた。
「さっきの提案、男子もオッケーしてくれたよ。空いてる教室も探しておいたから移動しましょ。ここで話すのは流石に……」
そう言って周りを見渡す。
何人かの生徒がこちらをチラチラ見て様子を伺っている。
「あっ、確かにそうだね。ありがとう」
お礼を言い、女子のあとに続いて教室を出た。
この学校はとにかく広い。生徒の数に合わないほどの教室がある。一体なんのために作ったのだと聞いてみたい。
しばらく歩いていくつか部屋が乱立しているうちの一つの前で止まった。鍵はついていないようで女子たちは躊躇いもなく扉を開けた。
中は小さな会議室というか面談室のような感じで中央に大きめの机が一つとホワイトボードが一台置かれていた。部屋の隅には折り畳まれたパイプ椅子が四脚立て掛けてある。
そして壁と机にもたれ掛かって話していた男子二人は扉が開くとこちらに目を向けた。
私たちは机を挟んで向かい合う形で並んだ。
10人居るとこの教室はかなり狭く感じる。窓が空いていたのがせめてもの救いだった。
「とりあえず、自己紹介しよっか」
こんな場所があったのかと私たちが部屋をジロジロ見て、日向が目に付いたもの、思ったことを一通り言い終わった後、向こうのグループの女子が口を開いた。
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