第5話

 それから一年後。

 お妃様宛てに、隣国から結婚式の招待状が届きました。


 隣国とは仲良くしていることもあり、お妃様は結婚式に参加しました。


 王子様の結婚式とあって、国はお祭り騒ぎ。

 お妃様もその様子に微笑みを浮かべます。


 お城に着くと、まず謁見室に通されました。

 そこには白雪姫がいました。


「お母様、ごきげんよう」

「どうしてあなたが!?」


 驚いて思わず部屋を出ようとしますが、扉は開きません。


「逃げなくてもいいではありませんか?ねぇ、王子様」

「そうだね」


 声に振り返れば、この国の王子様が白雪姫の隣にたっていました。

 おかしな空気を纏って。


「まさか、あなたは王子にまで」

「それは違うわ」


 白雪姫はお妃様が言わんとしたことを否定しました。


「お母様が来る前……お妃様になる前から会っていたの。王子様と。でね、王子様って動かないものが好きなの」


 動かないもの。

 お妃様は目を見開きました。

 王子は動かない死体にも似た白雪姫をどうにかして見つけて、愛してしまった。


 それは普通ならばあり得ないはずのものでした。

 そして、偶然が重なるわけがないのです。

 白雪姫は最初から予想していたのです。


 お妃様によって呪いをかけられることすらも。


「怖がらないで、お母様」


 白雪姫はそっと近寄ります。

 扉は開きません。

 杖を出そうにも何故か現れません。


「結婚祝い。くださらない?お母様の魔力と、お母様の身体」


 小さな手がお妃様の頬に触れました。

 そして、怯えるお妃様にキスをしました。

 すると、お妃様の目はぐるりと回り、倒れてしまいました。


「ふふっ。ほら、王子様。あなたの大好きな動かない女性ですよ」

「君は約束をちゃんと守るんだね。さすが、僕の妃。愛してるよ」


 王子様は白雪姫を誉めながら、お妃様の死体を愛でました。


「私も愛してるわ、王子様。お母様、お祝いありがとう。私もっともっと美しくなるから、私の中で見守っていてね」


 それから白雪姫は王子様と結婚して

 幸せに暮らしましたとさ。


 めでたしめでたし

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異説・白雪姫 東雲 @sikimura

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