おまけ バレンタイン

「お兄様、そのチョコ、誰からですか?」


 家に帰るなり、萌々子から問い詰められる俺。


「アリス部長だよ」

「ピエールマルコリーニですよね?」

「ピ、ピエールマルコメ?」

「マルコリーニ。ベルギーの有名なチョコです。高いんですよ」


 そうなの? アリス部長、


「幼いころブリュッセルで見つけたチョコのお店なんだ。なかなかリーズナブルな価格でね、向こうでは毎日おやつにしてたくらいさ。というわけで、義理チョコにもってこいなんだ。最近は日本でも売ってるが、ベルギーから空輸してもらってる。兄が本店から空輸したやつに限るとうるさくてね。はっはっは、とんだ無駄遣いだ」


 って言ってたんだけれども。違うのか?


「くんくん。他にもチョコの匂いがします」


 まるで犬のように鼻を近づけてくる。


「正直に言いなさい。他にもチョコもらいましたね?」


 貰った。近藤さんから。


「早く出して」


 萌々子が手を出す。


「ほれ」


 鞄からラッピングされた包みを出す。


「て、手作りっぽいわ」

「手作りチョコブラウニーだそうだ」


 手作りチョコブラウニー。近藤珈琲店の新作ケーキ by 近藤さん、なのだそうだ「試作品なの。ちょうどバレンタインだし、マメくんにあげる。感想教えてね」とのことで、貰った。


 試作品の味見を兼ねてるなんて、完璧に義理チョコだろ。


「はぐぅっ!」

「どうした?」

「て、手作りブラウニーですって!?」

「うん。近藤珈琲店のケーキはすべて手作りだそうだよ。基本お父さんが作るらしいけど、土日のスペシャルケーキは近藤さんが作るらしい。美味しいと評判らしいぞ。今度食べに行こう」

「お断りします!」

「なんで? ケーキ好きじゃん」

「ダイエット中なんです、萌々子!」


 初めて聞いた。


「お兄様もダイエットしてください。あと2カ月もしないでお兄様は

18歳、成人です。成人病が心配です。甘いものの食べ過ぎはよくありません。糖質制限します!」


 18歳で成人病ないだろ。


「ですから、萌々子の手作りチョコだけ食べて」


 それも糖質じゃないのか?



 ……というわけで、その日は結局萌々子の作ったチョコだけ食べたのだった。

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