第20話 萌々子の上昇
食後。
俺と萌々子のルールその2「後片付けは料理を作らなかった方」に従い、俺は後片付けをしていた。
といっても萌々子が調理中にいろんなものを片付けてしまっているので、食洗機のスイッチを押すだけなのだが。
「お兄様、ちょっといい?」
後片付けを食洗機に任せ、リビングのソファに腰掛けコーヒーを飲んでいると、部屋着に着替えた萌々子がやってきた。
「どうした?」
「萌々子、やることないの。つまらないわ」
とすん。ソファの隣に萌々子が座った。
「明日の予習とかあるんじゃないのか?」
「終わりました」
「早いな。つーか早すぎじゃね?」
「部活動紹介中に終わらせましたから」
「大胆だな」
「そうですか?」
脳筋高校生による衆人環視の中、よくそんな大それたことができたものだ。素直に感心する。
「萌々子、こちょこちょ虫したい」
こちょこちょ虫。幼い頃、俺と萌々子がやってた遊びだ。「こちょこちょ虫だぞー」と言いながらいろんなところをこちょこちょする。くすぐりあって、100数える間に笑った方が負けだ。萌々子の弱点はおなか。おへその周りをくすぐると萌々子はすぐ笑う。
こちょこちょ虫か。懐かしいな。どれ、久しぶりにやってみるか。
……って、できるか!
「駄目だ」
「なんで?」
「なんでって、わかるだろ?」
「萌々子、わからない」
萌々子は上目遣いで俺を見つつ、脚をパタパタさせる。
「こちょこちょ虫って、くすぐりっこなんだぞ? 10代後半男女がくすぐりっこだなんて、いろいろ問題あるだろ? 萌々子が妹だからってのはなしだぞ。本当の兄妹じゃないんだからな?」
「どんな問題があるんですか?」
「そりゃ、もちろん……触ってはいけないところを触ってしまうとかさ。そういうことさ」
「触ってはいけないところ? どこですか?」
じっ。俺の目を覗き込む萌々子。
「どこって。いろいろあるだろ?」
「ふーん。じゃあ、触っていいところってどこですか?」
萌々子が悪戯っぽく笑う。
「頭とか、手とか、背中だろ?」
「腕は?」
「触っていいかな」
「足の裏は?」
「オッケー」
「足の指は?」
「……」
どうなんだろ。足指って……いいのか?
「ギリオッケー」
「ふくらはぎは?」
「駄目」
「太もも」
「アウト」
「お腹は?」
「絶対、駄目」
むー。萌々子がふくれっ面になった。
「なんで?」
「なんででも、だ」
「基準が分かりません」
「俺基準だ」
「勝手すぎます、お兄様」
すす。と萌々子が近づいてきた。
「萌々子基準も尊重してください」
ぴと。密着。俺の右腕にしがみつく。
「ちょ、萌々子、何をしてるんだ?」
「萌々子基準の確認です、お兄様」
「確認?」
「はい。うーん、これはアリですね。萌々子的には問題ないです」
ぐいぐい。腕に柔らかいものを押しつける萌々子。
「ちょ! 何やってんだ?」
「密着レベルの確認です。では次の基準を確認します」
ぱたん。萌々子が俺の膝の上に倒れ込んだ。
「な、なんだ!?」
「ん? 膝枕ですよ?」
俺の太ももに頭を乗せ、両手を俺の腰に回す。
「レベルチェックに入ります」
ずい、ずいと萌々子の頭部が俺に接近してきた。
こんな体勢でしがみつかれたら、健康な男子高校生の身体は……反応してしまうのではないか。
「ん? お兄様? どうしました?」
「いや、なんでもない」
「そっか。ではもう少しお兄様に近づこーっと」
萌々子が上昇を始めた。
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