第4話 【side萌々子】お兄様のことが好きな萌々子
私、お兄様のこと、好き。
ママゴトしてて気がついた。ずっとこうしていたい。お兄様と家族になりたい。
だから、告白した。
「ももこ、大きくなったら、いちろーのお嫁さんになるー」
するとお兄様は「いいよ。ボク、ももこをお嫁さんにするね」って言ってくれた。お兄様のお父様も「やっぱり、一郎と萌々子ちゃんは相思相愛だ! 結婚だ!」と祝福。
そーしそーあい。
けっこん。
良い響き。
小さい頃の私は自分のことを本当のお兄様の妹だと信じていた。そうじゃないと知ったのと、本当の兄妹は結婚できないって知ったのは同じ頃だった。
だから、お兄様と兄妹じゃないと知って悲しいけど嬉しかった。
私とお兄様は血が繋がっていない、ただのお隣さん。幼馴染み。だから……結婚できる。
小さい頃から今に至るまで、お兄様はちーっとも私のことを女の子として見てくれない。いつまでも本当の妹扱いをする。まあ、それならそれでかまわないのだけれど……変なところだけ、妹扱いしないんだよね。同年代女子扱いするんだ。
この前だって、私は一緒にお風呂に入りたかっただけなのに、「萌々子はもう15歳だから」って言って、一緒に入ってくれなかった。
小さい頃は一緒に入ってくれたのになあ。
一郎お兄様はとっても優しくて、どんなときも私を守ってくれた。
中学時代、人より胸が大きかった私は男子によくからかわれた。そんなときもお兄様は私を助けてくれた。
いつだったかな。お兄様の同じ学年の人が校外清掃の時、ホウキで私の胸をつついてきたことがあった。
「マシュマロちぇーっく!」
「きゃ!」
マシュマロチェック、という遊び。マシュマロというのは私の中学時代のあだ名。私の胸が白くてふわふわだから、だそう。今考えると凄くセクハラだよね。
「すげ! めっちゃふにふに! やわらけー!」
「い、痛いです! やめてください!」
「痛い? 気持ちいいの間違いだろ? よし、次は股のほうのマシュマロチェックだ!」
男子がホウキの先を私に向けまた。私は恐怖で動けなくなった。このまま、あの棒を押しつけられるのだろうか。それだけで終わるのだろうか。どうしよう、もっと酷いことされたら……
「や、やめて……」
「おーおー、良い表情!」
その時だった。お兄様の声がしたのは。
「てめーら! 萌々子に何をする! ふざけんなーッ!」
今でも覚えてる。お兄様の怒鳴り声。あんなに怒ったお兄様、初めて見た。
「何がマシュマロチェックだ! 萌々子になんてことをしてくれた! 許さん! お返しだ!」
相手からホウキを奪い取ったかと思うと、お兄様は相手の股間めがけてホウキを投げつけた。
「ボールチェック!」
「ぎゃーっ!」
私に淫らなことをした男子はその場にうずくまり、そのまま動けなくなった。そして救急車で病院へ。
「何があったんだ!」
駆けつけた教師はお兄様を拘束、そのままお兄様を校長室に連れて行ってしまった。私は「お兄様は悪くない」って言おうとしたけど、恐怖と安堵の入り交じった興奮状態で上手く喋れず、気がつけば過呼吸で倒れ、保健室に運び込まれていた。
夕方。お兄様が保健室に来てくれた。
「お兄様……もしかして、校長先生に怒られた?」
「まあな」
「どうしてですか!? 悪いのはあの変態が私に変なことしたからなのに!」
「そりゃそうなんだけど、俺、かなり力入れてやったみたいでさ。内出血してて、すげー腫れてるんだってよ。相手の親がやり過ぎだって怒っててね、裁判起こすとか言ってたのを校長先生がなだめたんだ。で、俺はその場で厳しく叱られたってわけ」
「でも、でも!」
「萌々子は俺の妹だろ? 妹を守るのがおにいちゃんだ」
その時私決めたんだ。
絶対、お兄様と結婚するって。
色々調べた。どうやったら、お兄様が、萌々子を女の子として見てくれるか。そして分かった。
お兄様だって男の子。男の子は女の子に密着されたら、我慢できなくなる。
そっか。密着すればいいんだ。それなら……得意。
お布団にも潜っちゃおう。お兄様にぎゅーってしてもらおう。
「萌々子ちゃん、これから3年間、一郎君と二人きりでごめんね」
お兄様と二人だけの生活が始まることをお母様から告げられたとき、私は神様に感謝した。
「一郎君だって男の子……いや、男なの。頭の中は毎日女の子とあんなことしたい、こんなことしたいって欲望でいっぱいよ。そりゃ、もしかしたら、萌々子ちゃんと一郎君、結婚するかもしれないし、ていうか、えーと、その、婚約してもいいかなというかその……なんだけど、やっぱり順序ってものがあるのよね! だから……ね? わかるよね?」
「はい、お母様!」
そっか。お兄様……萌々子を女の子として見てくれたら……しちゃうかもしれないんだ……いわゆる既成事実ってヤツだ。
頑張ろう。既成事実に向けて、萌々子は頑張るぞ!
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