第2話
入ってきた女子生徒は、人形かと錯覚するほど美しかった。
遠目からでも分かる端正な顔立ち、膝上のスカートからすらりと伸びる脚、片耳にかけられた、みずみずしく艶のある黒髪。
「あの、」
気がつけば、声を掛けていた。
緊張からか、声が上ずる。心臓がうるさい。
「はい」
癖のない、透き通った優しい声。さっきよりもずっと、鼓動が速い。
「怪我、したんですか」
なにを聞いてるんだ。アホすぎる、俺。
「うん、部活で少し火傷しちゃって。」
ひとつひとつ丁寧に紡がれる言葉に、つい聞き惚れてしまう。
「あ、」
彼女が何かに気がついたように、俺の右腕に視線を移す。
「ここ、痣になってるよ」
彼女は自身の右腕をぽんぽんと叩き、その場所に痣があることを教えてくれた。
「わ、ほんとだ。体育かな」
「男子はバレーだったよね。湿布貼ろうか?」
───男子はバレーだったよね。
その発言から初めて、彼女が同級生だったことを知る。体育の種目は、学年によって違うのだ。
…………ん?
「「「湿布貼ろうか?」」」
確かに彼女はそう言った。
頭の中で情報を処理し切るのも待たずに、口が先に動いていた。
「おねがいします」
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