第7話:尊敬じゃないでしょ
「尊敬じゃないでしょ」
あずきちゃんと別れた後、大福が言った。私は答えない。答えたくなかった。
あずきちゃんがクラスの男子から呼び止められた時、彼は彼女に告白するんだとすぐに察した。嫌だと思った。彼女を彼と二人きりになんてさせたくなかった。私は以前、彼が彼女のことを『あの見た目で成人なんてエロいよな』だのなんだの男子達と話しているのを聞いた。そんな目でしか見てないくせに、好きなんて軽々しく口にしないでほしかった。だから彼女が彼をフってくれてほっとした。
彼女の話を聞いて、彼女が彼をフったのは彼との相性以前に、自分はもうすぐ成人するのに対して彼がまだ未成年だからという理由があったことを知った。彼女はよく、すれ違い様に「合法ロリ」と言われて「君らから見たらむしろ違法ロリだぞー」なんて笑い飛ばすように返していた。その違法の意味を改めて知ると同時に、自分の中に芽生えかけていた何かが握りつぶされたように胸が痛んだ。私はそこでようやく、自分が彼女に恋をしていたことを気づいた。大福はずっと前から気付いていたらしい。
「……いつから?」
「最初から」
「最初っていつよ」
「出会ったあの日から。心愛ちゃんは違うって言ったけど、私はやっぱりあれは一目惚れ以外の何物でもないと思ってるよ」
「……だとしても、ただの憧れだと思ってた」
「……告らないの?」
「……告ったって、困らせちゃうだけじゃん。てか、流花からあんな話聞いた後に告白なんて出来るわけないでしょ」
「それもそうだね……」
彼女は同級生のことを子供だと思っている。私も例外ではない。告白したところで、答えなんて分かりきっている。君は子供だから恋愛対象として見れないと言われるだけだ。仮に私も同じ気持ちだと言われたとしても、流花のあんな話を聞いた後だと喜べない。
「……大人になっても気持ちが変わらなかったら言う。今はまだ言わない。大福も勝手に言わないでよ」
「言わないよそりゃ。黙っておく」
「うん」
どうせ周りは未成年しかいない。バイトもしていないし、小中の同級生とは会っていないって言っていたし、成人式も行くつもりないと言っていた。出会いなんてそうそう無いだろう。私が大人になるまでに彼女に恋人ができることなんて無い。いや、出来ないでほしい。私が告白できる歳になるまで、誰とも付き合わないでほしいし誰にも恋をしないでほしい。そう切実に願っていた。そんなことを願ってしまう自分が嫌だった。
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