不思議な赤い薔薇

 彼との結婚記念に、庭に赤い薔薇の苗を植えた。

 薔薇は健やかに成長し、庭中を赤色に染めていった。

 それから三年が経ち、二人の間には子供が生まれた。何もかもが順風満帆。だが、一輪の薔薇が萎れてから転機が訪れる。その日以降、薔薇たちは少しずつ萎れていき、庭は草木のみの殺風景なものになった。ちょうどその時、彼の浮気が発覚した。浮気相手は彼の会社の後輩。彼は必死に頭を下げて私に謝った。「もうしない」と何度も口にする彼を目の当たりにして、私は彼を許し、もう一度信じてみることにした。

 その日から、再び薔薇は綺麗に咲き誇り、庭は赤色に活気づいた。

 それから十五年が経ち、彼は大きな難病を患った。一年の看病の末、彼は息を引き取った。翌日、私は二人の愛の形である赤い薔薇を一本ずつ丁寧に切った。最終的なその数は何と九九九本。

 何度生まれ変わっても私を愛していてほしい。そんな強い祈りと一緒に、主人の棺桶に赤い薔薇を注いだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る