第二夜:生命の風船

 遠い、遠い宇宙の彼方、ある星に住む種族は、老いると風船に乗って、空へと昇って行った。

 天国に行くと信じていたのだ。

 しかし、真実は違っていた。

 風船の中で老人は溶け、気化して破裂し、大気になっていたのだ。

 この星の大気が希薄になっていた為に作られたシステムだった。

 ただ、ごく希に気化せず、地上に戻って来るものがあったが、中の老人は、風船の特殊な環境下で、脳が変質し、狂人と化していた。

 為政者は、神の使者が降臨したと報じ、天国の存在を信じさせる道具として利用した。

 人々は、平和に暮らせる日々を神に感謝し、老人達を天国へといざなっていった。

 今日も、老人達は、笑顔で風船に乗る。

 ゆっくり、ゆっくりと天国を目指して……。

(了)



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