第5話 とことんまでクズな犯人たち

前途有望な青年の命を奪った出水はとことんまでゴミだった。


大やけどを負った出水は包帯を巻かれ車いすに乗せられて玉川署に移送される際、集まって来たテレビ局などの報道陣を睨みつけて「勝手に撮んなや!ボケェ!!」などと威嚇。

取り調べにおいて容疑をあっさり認めつつも態度は投げやりであり、被害者についてどう思っているかを聞かれると「知らんわ!」と吐き捨てた。


3月5日に出水と飯田は住居侵入、窃盗、強盗殺人で起訴され、5月9日から第一回目の公判が始まったが、ここでも出水は反省の態度を一切見せない。

「松本さんの件については何とも思ってません。全然関係のない人ですからかわいそうだとは思わないです。そんなこと思うなら殺したりしません」と平然と言い放ったと公判記録にはある。

また、貧乏ゆすりをしたりため息をついたり、早く終わらないかという態度が見え見えだったという。

「もうどうなっても知るもんか」という破滅願望があったのかもしれない。


9月5日、東京地検での判決公判で「冷酷、反省ない」として無期懲役の刑が言い渡されて退廷する際にもその態度は変わらず、腹いせに壁を蹴って出て行った。


出水は犯した犯行も残酷で反省の態度も見せていないし、獄中でも問題行動を起こすなどしていたため、おそらく一生出てくることはないであろう。


一方の飯田は真摯な悔恨の情を示しており、公判中に出水の子供を妊娠していることが判明する。

それについて「中絶すればおなかの子供を殺すことになります。私は二度も殺人を犯したくない」と言って生むことを表明し、出水との婚姻届けまで出すと発言。

「遺族の方には申し訳ありませんが」と断ってはいたが、判決が出た後でワイドショーに出演した松本の父親は「感情を大いに逆なでされた」と憤懣やるかたない様子であった。


飯田は従犯的な立場だったことや遺族に謝罪していること、生育歴が不遇だったことが考慮されて言い渡された判決も懲役15年に過ぎず、遺族はこれにも納得がいかなかったことだろう。

その後10月に女児を獄中出産しているが、飯田の育ての親である祖父母は引き取りを拒否したために女児は乳児院に送られることになった。

生まれた子供に罪はないのかもしれないが、ただでさえろくでなしの両親も塀の中で不在であるからまともに育つ可能性は低い。

彼らのような不幸な環境に育つがゆえにひねくれるであろう人間を新たに生み出しただけなのではないかと思うのは、偏見だろうか。


こんな奴らに夢がかなう直前で命を絶たれた松本浩二はさぞかし無念であったことだろう。

「恨んでやる…」と言って死んだ彼の怨念が残っていたのだろうか。

彼が若い命を絶たれた世田谷区のアパートの203号室内に残った血痕は、内装業者が何度張り替えても浮き出てきたという。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

1994年・青山学院大生強盗殺人事件~ゴキブリカップルに奪われた大空への夢~ 44年の童貞地獄 @komaetarou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ