第32話 カラオケ
(仲原視点)
私、仲原詩音はクラスメイトで友達の榎本凛、白石美桜、知念由乃と一緒にカラオケで遊んでいた。カラオケに行くというのは放課後、歩きながら決めたことで、美桜が提案したものだった。それに由乃も私も乗っかる形でいいねと賛成の意思表示を表した。そう、このカラオケはただ歌うというだけではない、さっき歩いている途中で会った遠野君と凛の恋路について聞くためだ。さっき遠野君と出会った凛の顔は完全に恋に落ちている顔だった。美桜と由乃もそれを察知したからこそ、カラオケでじっくり話を聞きたいと思ったのだ。凛も少し渋い顔をしていたがOKしてくれた。すまない、凛。思春期の女子はこういうの気になっちゃうんだ。
「それで〜、幼馴染ってその時から一緒だったの〜?」
カラオケ店に着くと、早速、由乃が凛に質問していた。
「うん、幼稚園からの付き合いなんだ」
「え〜、本当に幼馴染なんだ〜」
美桜も興味津々な様子だった。
「その時から仲良かったの?」
私も興味があるので質問することにした。
「仲良かったと思うよ。一緒に遊んだし、手紙のやり取りも引っ越した後、やってたし」
「「「手紙!」」」
まさか手紙のやりとりまでしていたのか。今の時代はスマホが当たり前で連絡やお喋りはSNSでするのが主流なのに、手紙という手段を使っていたのか。恋愛ドラマで手紙を使ってカップル達がやり取りをしているのを見たことがあるが、まさか現実でもいたとは。やばい、アツい、エモい、口調がギャルっぽくなったけど、凄いな〜、本当に仲良かったんだな、遠野君と凛は、そりゃ、それだけの仲なら意識しちゃうかもね。
「あ…でも、手紙のやり取りをしたのは小6まででそれ以来はさっぱりなんだ」
「そうなんだ…、それは残念だね」
「忘れちゃったって事?」
「なのかな?急にぱったりと連絡つかなくなったんだよね」
「そうか〜それにしても遠野君は凛のことどう思ってるんだろうね」
由乃が遠野君について話す。
「さあー、幼馴染としか考えていないのかもね。私が勝手に気になってるだけだし」
「お、それは恋心を認めたということか」
私は凛の言葉にすぐに反応した。
「そうだね。これは好きって事かも」
「「「ヒュー」」」
「でも、あんまり騒ぎ立てないでね」
「分かってるよ。変に大事にはしないから。影でしっかり見守るよ。ガンバ!」
「うん。それじゃ、皆んなの恋話も聞かせてもらおうかな」
「まじか、…でもそうだね、凛が勇気出して喋ってくれたし、私達も話さないとね」
「そうだね」
「私の恋話なんてつまらないだけよ」
「いや、つまらなくないよ。私、今、凄く聞きたい気分なんだー」
「ふふ笑、じゃあ、私から…」
そうして私達はカラオケで歌を歌いながら、それぞれの恋話で盛り上がったのだった。
(カラオケ後)
カラオケ店を出たら、辺りは暗くなりかけていた。時計を見ると、6時30分になっていた。急いで帰らないと晩御飯に間に合わない時間なので私達はそれぞれ帰宅の途についた。
しばらく歩くと、凛から電話が掛かってきた。
「もしもし〜」
「詩音、ごめん。詩音のハンドクリームとかが入ったポーチ、私のと入れ違えで持ってたみたいで…」
「え…、あ…本当だ、全然気づかなかった」
「今、どこら辺?」
「今は、カラオケ店から出て、まだ近くの方。カラオケ店で合流する?」
「そうだね、ごめん詩音、わざわざ」
「ううん。大丈夫だよ、ありがとう」
わざわざ連絡してくれたのか、凛は優しい子なんだなと思った。そう、ほんわかとした気持ちになったのは束の間だった。
「よお、姉ちゃん」
私はヤンキーのような見た目の3人組の男に話しかけられていた。
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