第14話 初めての

(遠野視点)

今日から部の発足が正式に決まり、顧問の木村先生と共に本格的な練習に入る予定だ。学校の授業を終えて俺は同じクラスである山田、喜納と一緒に部室へと向かった。凛は岩見さんと玉城さんに一緒に行こうと言われているらしく、後から来るということらしい。1年A組は学年の中ではもっとも早く帰りのHRが終わったので一番乗りで部室に行けると思っていたが、それは叶わなかった。部室近くに行くと、もう誰かが部室の前に立っていた。それは、国吉と宮城だった。

「おーい。こっちだー」


「早いな。2人とも。俺達がHR終わるの一番早かったのに」


「お前らが鍵を取りに職員室に行っている間にHRが終わったから、急いで来たぜ、この部室に最初に着くのは俺達だって。なあ、宮城」


「うん。これでこの部室に最初に来たっていう称号は得られたからね。やったって気分だよ」


「どんな称号だよ笑?」


そう、国吉と宮城は1年B組、赤嶺と与那嶺は1年C組、坂本は1年D組、阿西は1年E組で国吉と宮城は俺達とは隣クラスで俺達が先に終わった事を知り鍵を取ってくる事を踏んでダッシュで来たというわけか。一番乗りに部室に行けると思ってただけに一瞬悔しさを覚えた(笑)。


そして部室の鍵を山田が開けて、俺達は初めて部室の内装を確認する事ができた。思ったよりも部室は広く、座れる木製のベンチが入って左側から正面へと続いている。右側にはロッカーが広く連なっていた。これなら部員全員の荷物も部活で使う用具も入れることができる。恵まれた部室だと思った。部室に入って荷物をロッカールームに入れている最中に阿西がやって来た。


「失礼します。って結構広いじゃん!めっちゃ良い!」


「阿西、ロッカールームに荷物入れてね。これからちょっと作業するから。C組とD組の人達とマネージャーはもうすぐ来そうか?」


「C組とD組もHR終わりそうだったから、もうすぐ来ると思うよ。マネージャー達はすぐそこを歩いていたから…」


「こんにちは〜」


「こんにちは〜」


マネージャー達3人がやって来た。


「へー、結構広いね。こんなに広かったら私達にもベンチに座れるスペースありそう」


「確かに。結構恵まれているかも」


「大事に使わないとですね」


「3人ともそれぞれロッカーあるから、そこに荷物入れてね」


「個別ロッカーまであるなんて贅沢な部室だね」


そしてD組とE組の3人も来た。


「ごめんなさい。少し遅れました。って広いな。この部室。個別ロッカーもあるみたいだし、中学の時とは全然違うぞ」


「こりゃ凄いな」


「アニメ見てるみたいだ」


「3人ともロッカーに荷物置いてね。よし、全員揃ったな。これから部活の用具を運ぶ作業するから、皆んな手伝ってくれ。運び終わったら、コートで打ち始めよう」


「おー」


「あ、それと言い忘れていた。今日から三日間は女子テニス部が三面使いたいそうだからそれまでは1面でやることになったからよろしく」


「まじかよ〜」


1面しか使えないのは残念だが、女子と男子で交互に着替えて、こうして荷物運びがスタート。作業は順調に進み、思ったよりも早く荷物運びは終わった。作業が終わったら皆んなダッシュでテニスコートへ駆け出して行った。皆んな本当にテニス馬鹿だ。なんだか面白かった。俺も早く打ちたかったので、同じくダッシュでテニスコートへと向かい、打ち始めた。


数分間打っていると、木村先生がジャージ姿で現れ、ミーティングが始まった。


「こんにちは。荷物運び皆んなにやらしてすまなかったな。さて、今日の練習だが、俺はお前達の打っている姿を見ていない。初心者の人もいるとは聞いているが、ちゃんと打てるようになってルールも覚えたと聞いている。だから、今日から三日間は部内戦を行なって皆んながどんな試合をするか見たい。そこから練習メニューを決めようと思っている」


少し驚いた。いきなり、部内戦とは思わなかったから。でも、同時にワクワクした。ここに来てからまだ1試合もしていないし、皆んながどんな試合をするか興味があったから。誰と当たっても勝ちたい。そんな気持ちだった。


「9人いるから、3組3人に分けての総当たり戦を行う。今から組み合わせをランダムに決めるぞ」


こうして組み合わせ抽選会が始まって、組み合わせは以下の通りになった。


グループA

喜納

国吉

宮城

グループB

阿西

坂本

赤嶺

グループC

遠野

与那嶺

山田


「よし、じゃあ、これから部内戦を始める。最初の試合は喜納と国吉の対戦だ。行ってこい」


「はい!」


こうして、俺達最初の部内戦が始まった。

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