第8話 まさかの
(遠野視点)
「どうしてここに…」
「そっちこそ…、ここの高校だったの?」
「うん。今月から沖縄に引っ越したから。凛も沖縄にいたなんて、びっくりしたよ、元気にしてた?」
「こっちは元気にやってたよ。って、びっくりしたのは、私もだよ。小2以来ずっと会ってなかった幼馴染がまさか沖縄で再会して、同じ学校、クラスで今、隣にいるんだもん。奇跡って本当にあるんだなって思った」
「それは確かに」
「そっちはどう?元気にしてた?」
「…まあ、それなりに…」
「…?まあ、元気そうなら良かったけど、今日は頑張ろう入学式」
「おう」
榎本凛は俺が引っ越す前の地域で幼稚園から一緒の幼馴染だった。その時からよく一緒に遊ぶ仲で、小学校も同じ学校に行き、そこでもよく遊んでいた。
しかし、凛は小2の途中でお父さんの仕事の関係上、沖縄に引っ越すことになってしまい、凛が引っ越してからは、全くの疎遠になってしまった。引っ越した直後は年賀状や手紙のやりとりはあったけれども、俺自身色々あってそれも送れなってしまい、凛の両親は共働きで引っ越す前も後も、仕事で忙しかったらしく、親同士での交流はほとんど無かった。
こういった事情からもう二度と会わないかもしれないと思っていたが、まさかこうゆうタイミングで再会するとは、流石に予想外だった。
入学式をして、各クラスそれぞれの教室に向かい最初のHR活動が始まった。担任が自己紹介をし、その後にクラス全員が自己紹介をするという定番の流れだった。俺はこういう自己紹介で狙って笑いを取れるほど、社交的ではないので、無難な挨拶を済ませて終わった。なんか悔しい。
自己紹介も終盤に差し掛かり、いよいよ最後の人になった。そして俺はまたもや再会を果たす。
「山田大地です。小中テニスやってました。よろしくお願いします」
そう、引っ越し初日校門前をランニングしていた彼だった。今日は色々な人と再会するなと思った。色々というのは、このクラスには学校に行く前に公園で見かけた背の高いラケットバッグを背負った生徒もいたからだ。
名前は喜納佳明(きなよしあき)、小学校からテニスをしている人だった。高校はテニス部に入るということだった。
俺は下校時、喜納さんから話しかけられた。
「初めまして。僕、喜納佳明と言います。よろしくお願いします」
「初めまして。遠野悠馬です。よろしくお願いします」
「あの、いきなり質問なんですけど、もしかしてテニスやってたりしました?」
「え…あ、はい、そうです。小学校からテニスやってました」
「ああ、やっぱりそうか。何かラケットスポーツやってた体型してたから少し気になって笑」
「ラケットスポーツやってた体型ってどういう体型笑?」
「まあ、大体俺の勘なんだけど笑」
「凄い笑。ところでこれからテニス部に体験入部するの?」
「うん。今からすぐに行こうかなって思ってる。そっちは?」
「俺もこれから行こうかなって思ってる。どうする?後ろの山田さんも誘って行く?」
「ああー、それは俺も思ったんだけど、後ろ見てみて」
後ろを見てみると、山田さんはクラス内外の女子達から話しかけられているようだった。山田さんはあの時のランニングから思っていたが端正な顔立ちをしており、イケメンと呼ばれるであろうルックスであった。確かに納得であった。
そして、声をかけられているのはもう1人。
榎本凛だ。彼女も山田さん同様、端正な顔立ちをしている。このクラスの男女アイドルはどうやら決まったようだ。これでは山田さんを誘うことも、凛に話しかけることもできないので俺と喜納は2人を残してテニスコートへと向かった。
しかし、テニスコートには来てみたものの、テニスコートには誰もいない。女子テニス部は今日は外部での練習と行く時にポスターで見たので、学校のテニスコートは男子しか使用しないということになる。だが、テニスラケットを持っている人、テニス部らしき人は誰1人としていない。
「なんで誰もいないんだ?」
「顧問の先生探しに行ってみよう」
「ok」
俺達は顧問の先生を探しに職員室へと向かった。そして俺達は驚愕の事実を聞くことになるのだった。
「テニス部はありません」
「え…」
「男子テニス部は去年度、廃部になりました」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます