第7話 再会
(遠野視点)
今日、俺、遠野悠馬は入学式の日を迎えた。澄み切った快晴で雲一つない青空が広がっていた。ベランダに出てみると、少し暖かいようで冷たいような風が吹いていた。沖縄は春と秋の境目が無いと言われているくらいで、確かにどちらかといえば本州の夏の始まりくらいの気温に感じる。入学式は午後から。午前中でしっかり準備をして入学式へと向かった。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「私達は、後から合流するからね。緊張しすぎないようにね」
「分かってるよ。それじゃあ」
俺は家を出て学校へと向かった。少し歩くとLINEでメッセージが届いた。昨日知り合った今日同じく蒼京学園に入学する阿西一雄からであった。
(阿西)おはよう。今日、一緒に学校行かない?
(遠野)良いよ。どこで待ち合わせする?
(阿西)遠野の家に公園があるじゃん?そこにしたいけど大丈夫そ?
(遠野)良いよ。今から15分後に集まろ。
(阿西)了解。
そうメッセージのやり取りをして公園へと向かった。こうしてみると、新しい友達が出来て凄く良かった。やっぱり1人だと緊張するから。阿西と会話もするのも楽しいし、不安な気持ちも少しは止んでくれるだろう。それに味方がいるのは嬉しい…。そう思っている内に、目的地徳崎公園にたどり着いた。
ここはニュータウンの徳崎市にある最大の公園である。池や原っぱ、子供が遊ぶ遊具も多くあって、老若男女問わず多くの人で賑わっている。ランニングコースとして利用している人も多いようだ。
空いているベンチに座り阿西を待っていると、遠くの方で蒼京の制服を着た生徒が見えた。背が高くてスラッとしている。しかも背中にはラケットバッグを背負っている。彼もテニス部に入る人なのだろうか。その人は木に隠れて視界から消えていった。そうすると、阿西がやって来た。
「やあ、遠野。待たせちゃったか?」
「いや、今来たばかりだ。それより昨日のアレ見た?」
「ああ、見たよ。かっこよかったよなー」
俺達は愛好しているアニメについて雑談をしながら学校へ向かった。それからプロテニスの話をしながら、先程見た背の高いラケットバッグを背負った生徒の話になった。
「そういえば今日、ベンチで待っている間にラケットバッグを背負った蒼京の生徒を見たよ」
「まじか。どんな人だった?」
「んーと、背が高くてスラッとした体型の人だった。多分先輩だろう」
「これは何かの縁かもな。テニス部に入れっていう」
「そうかもな。上手く先輩とやっていけるか不安なってきたけど」
「まあー、気楽に行くのが一番打ち解けられるかもな。礼儀はしっかりとわきまえて」
話をしてみると、阿西はすぐに馴染めそうだ。
俺は苦労しそうだけど。少しずつ馴染めれば良いかなと思っている。話をしていると遂に、校門前にたどり着いた。
周りは入学式に参加する生徒、親で賑わっている。俺達は校門前に入り、入学後のクラスの割り振りを確認した。この学校は1学年199名の5学級で構成されていて、1クラス約40人となっている。俺は1年A組、阿西は1年E組で残念ながら同じクラスにはならなかった。
「まじかー、遠野と一緒じゃなかったよー」
「残念だけど、部活とかで会えるだろうし、もしかしたら校舎内で会えるかもしれないし」
「そうかもしれないが、A組とE組かー。俺の経験的に端っこと端っこのクラスはほぼ合わない、無念」
俺自身も同じ気持ちだった。一緒のクラスであれば、楽しかっただろうに。だが、これは仕方ないから早く切り替えて入学式に向かおう、そう意気込んだ。
阿西と別れ、各クラスの待機場所に向かった。各クラス2列に並ばれた椅子があった。俺の出席番号は28番だったのでそこの近くの椅子へと向かう。28番の席に座って一息つけて、少し周りを見渡すと、ちょうど右横の同じクラスの女子生徒と目が合ってしまった。気まずさを感じたのも束の間、俺はその女子生徒を見て驚愕した。
「え…」
「え…悠馬?」
そう彼女の名は榎本凛、俺の引っ越す前から知り合っている幼馴染であった。
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