公平
@reex487
第1話
僕には仲の良かった友人がいた。そいつは高校からの中で大学に入った頃もよく遊んでいた。。そんなあいつは、いつもふざけて笑ってばかりで、当然授業の話も楽に聞かないもんだから、テストの成績なんかも良く赤点を取っていた。なんて事ことを考えていたら唐突に「友達の話は良くするくせに家族の話しないんだよなあ」と思った。
大学生になって久しぶりに遊ぶことになったある日、兄弟は居るのかという話になり、ふと今までの事も気になって聞いてみた。
「なあ、お前って兄弟とかいるの?」
すると彼は少し俯きながらこう言った。
「まあ居たかな、自○しちゃったんだよね。俺の妹」
「悪いちょっと聞いちゃいけない奴だったな、ごめ...」
「後で知ったんだけどさ、あいつ同級生に虐められてたらしいんだ。」
そんな俺の謝罪を遮るようにぽつりぽつりとまるで独り言のように話し始めた。
「その当時は俺も何がなんだが分からなくてさ、だってそうだろ?急に身内が死ぬなんて考えた事あるか?」
「ない」そう答えるので精一杯だった。
「それでさ、俺、妹の事虐めてた奴のこと殺しちゃったんだ。登校時間から下校時間まで何から何まで調べ上げて、誰もいない裏道で刺したんだよ。心臓を刺したから即死、バカだよな俺、妹を殺したあいつと同じ犯罪者だ」
その時の俺は、本当の正義ってなんだろう。人を殺めたから犯罪者なのか?罪を犯した人間にも相応の罰があるべきなんじゃないのか、それがたまたま死であっただけ?
もう頭の中がごちゃごちゃで混乱していた。
「何で妹を殺したような奴が犯罪者にならないんだよ!おかしいだろそれ!理不尽すぎるだろ!」そんな風に怒り狂うのを見るのは初めてだった。少し時間が経つとなんとか落ち着きを取り戻したようだった。
「わりぃ、取り乱した。でも不思議と後悔はないんだよな。むしろスッキリしたくらいなんだ。なあ俺って間違ってるか?」
今までの自嘲染みた発言とは裏腹にとても悲しみに暮れた目をして俺に尋ねてきた。俺は何も答える事が出来なかった。なぜかって?どちらも正しいと思ったからだ。この国は法に従うのが正義とされている。でも例外もある、法を破らなければ達成されない正義もある。あいつはただそれに従っただけなのだ。
じゃあ法律ってなんだろう。何のためにあるんだろう。
それ以来、遊ぶ度にどんどん気まずくなりそれから少しずつ疎遠になっていった。
「あいつ今何してるのかなぁ、元気にしてるといいな」
公平 @reex487
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。公平の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
親愛なる自殺志願者へ/祖父江直人
★46 エッセイ・ノンフィクション 連載中 335話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます