第23話 中庭が……!


「今度こそ、ちゃんと教えてくれるわけ?」


「私はいつでもルーシィ殿下の教育には本気ですよ?」


「意地悪ばかりするくせに」


「それはルーシィ殿下が素直ではないからです」


「へえ、私が素直になったら甘やかしてくれるわけ?」


「それはもちろん。殿下が素直になったところはあまり想像できませんが」


 俺はテトラコルドの引き金に指をかけたまま言う。つまり、ルーシィに手を重ねたままだ。


 ルーシィはちょっと恥ずかしそうにしながら、俺をジト目で見る。


「失礼ね。あなたの考える『素直』な生徒ってどんな感じなの?」


「そうですね、『クラウス先生大好き!』って言ってくれる生徒とか……」


「それ、あなたの願望でしょ?」


 ルーシィが冷たく言う。

 そのとおり。美少女JKに慕われたいと思うのは男性なら皆同じだろう(まあ、ここは魔法学校であって高校ではないので厳密にはJKではないが)。


「まあルーシィ殿下はそんなこと言えないと思いますが」


 俺に煽られて、ルーシィは頬を膨らませる。


「言えるもの。く、クラウス先生……大好き」


 ルーシィが顔を真赤にしながら、俺を上目遣いに見て言う。

 か、可愛い……。思わず告白されたのかとドキドキしてしまう。


 そんな内心を隠して、俺はにやりと笑う。


「お題は素直にするって話でしたが、俺を大好きというのがルーシィ殿下の本心ということでよろしいですか?」


「へ!? ち、違うわ! く、クラウスなんて大嫌いなんだから!」


「大嫌いと言われると少し落ち込みますね」


「べ、べつに嫌いというわけじゃなくて、むしろ好き、じゃなくて! ちゃんと闇魔法を教えなさいよね!?」


 ルーシィで遊びすぎた。

 そろそろちゃんと闇魔法を教えてあげないといけない。


 ルーシィがシャルロッテに勝てないと困るのは俺も同じなのだから。


「さて、と。まずは試しに使ってみましょうか。闇属性の光石が入っていますから、この魔導銃で闇魔法が使えるはずです」


「え、ええ……」


「一緒に引き金を引きましょう」


 ルーシィは俺の重ねた手の感触を確かめるように、ゆっくりと指を動かした。

 俺はルーシィの指を誘導し、一緒に引き金に力を入れる。


「んっ……」


 ルーシィが小さな甘い吐息をもらす。

 その小さな手の柔らかさに俺の手が触れる。


 次の瞬間、中庭がとんでもないことになった。

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