第20話 魔導銃と子宮

 不思議といえば不思議なもので、ルーシィ、エディトと自然に朝食を囲むことになる。


 ちなみにエディトは貴族出身の侍女であり、メイド服を着たりはしていない。


 学校にそれほど多くの使用人を連れてくるわけにもいかないから、メイド的な役割を果たすことはある。ただ、本来的にはエディトも同じ特権階級なので、ともに朝食を摂る権利がある。


 穏やかな時間が終わった後、さっそく魔法の授業になる。

 寮の外にある中庭へと移動する。よく手入れされた庭園で、教員寮にはもったいないほど美しい。

 

 ルーシィはきょろきょろとあたりを見回す。制服のローブに着替えている。


「ここでやっても大丈夫かしら?」


「さすがにこの広さがあれば問題ないですよ」


「でも、わたしが炎属性魔法を使うと、うっかり庭が全焼しちゃうのよね……」


 それは大惨事だ。学校と庭師の嘆きが聞こえてきそうな気がする。


「ま、まあ今日は闇属性魔法を教えるわけですから」


「そうよね。楽しみにしているわ」


 ふふっとルーシィが笑う。

 俺は魔導銃アタラクシアから自分の光石を外す。ローゼンクランツ侯爵家に伝わる秘石だ。


 緑晶石カードラン、これをルーシィの魔導銃に嵌めるのだ。

 ルーシィは上目遣いに俺を見る。


「いいの? それ、大事な光石でしょ?」


「他にも三つありますから平気ですよ。光石が一つなくなっても、ルーシィ殿下に負けたりしません」


 俺がからかうように言うと、ルーシィはむうっと頬を膨らませた。


「いつか絶対に勝ってみせるんだから」


「期待しています。十年後には、いや数年後にはきっと勝てますよ」


 今はまだ俺――クラウスの方が魔術師としては強い。

 それはゲーム開始時点や、エンディング時点でも変わらない。


 だが、ルーシィが破滅せず、このまま成長し続ければ、クラウスを上回るのは間違いない。

 才能ではクラウスよりもルーシィの方が上なのだから。

 

「殿下、魔導銃を貸していただいたもよいですか」


「う、うん……」


 なぜか恥ずかしそうにルーシィは魔導銃テトラコルドを俺に渡す。

 俺が魔導銃の蓋を開け、光石を弄りだすとルーシィは顔を真っ赤にした。


「……どうされたのですか?」


「ほら。ま、魔導銃は魔術師の身体とも連動しているでしょ?」


 魔導銃は言ってみれば、魔術師の分身。魂そのものと言って良い。

 そして、その光石を嵌める魔倉と呼ばれる部分は、女性の身体の子宮に例えられる。


「じ、自分でいじるのは平気だけど、クラウスにされると……ひゃうっ」


 ルーシィが甲高い声を上げ、身悶えする。感覚が連動することを忘れていた。つまり、ルーシィにとっては自分の子宮をいじられているのと同じなわけだ。


「あ、あんっ、ダメっ……」


 俺がかちっとルーシィの魔導銃に俺の光石を嵌める。すると、ルーシィはびくっと震え、「あっ、あああああっ」とあえいだ。

 妙に色っぽくて、俺はどきりとしてしまう。


「すみませんでした、殿下」


 ルーシィは潤んだ瞳で俺を見つめる。


「せ、責任取ってよね……」





<あとがき>

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