第18話 決闘
ルーシィ、そしてシャルロッテが対峙することになった。二人は姉妹の帝姫同士。シャルロッテが姉、ルーシィが妹ということに一応なっている。
実際には二人には姉妹という意識は希薄だろうけれど。ついでに侍女のエディトはおろおろと二人を見比べている。エディトからすればシャルロッテは雲の上の人間だ。
ルーシィはといえば、俺の服の袖をつまみ、上目遣いにこちらを見た。
「ごめんなさい。シャルロッテが迷惑かけちゃったみたい」
「わたくしが迷惑なんていつかけたのですか!?」
シャルロッテが顔を真っ赤にして叫ぶ。まあ、たしかにこんな深夜の訪問は迷惑といえば迷惑だ。
ルーシィは肩をすくめ、呆れたようにため息をついた。
「私はクラウスと話しているの。シャルロッテはどうでもいい」
「呼び捨てじゃなくてお姉様と呼びなさい!」
「一度だってお姉様なんて呼んだことないでしょ?」
「そういうところが気に食わないんです。わたくしより弱いくせに」
びくっとルーシィが震える。そういえば、このシャルロッテ殿下は魔術師としての実力はそれなりに高いのだ。
この時点のルーシィは並の教師にも勝てるほどの力があるが、シャルロッテもさすが帝姫というべきか、それを上回る。
詳しい理由はわからないが、設定上、原作開始時点ではルーシィは成長してシャルロッテを追い越している。
だが、この時点ではルーシィの実力はシャルロッテに及ばない。
しかもルーシィが炎属性を操るのに対し、シャルロッテが中心として使うのは水属性。
相性が悪い。
シャルロッテが意地の悪い笑みを浮かべる。
「ローゼンクランツさんはわたくしよりあなたの方に期待しているみたいですね。それなら、その期待に応えるのを証明してみせるべきでは?」
「どういうこと?」
「決闘をしましょう、と言っているのです」
「安い挑発になんて乗らないわ」
ルーシィは慎重に応じた。もちろん、ここでルーシィがシャルロッテとの決闘をする意味はない。
ところが、シャルロッテは追撃をかける。
「でしたら、わたくしは帝室会議でこのことを問題にします。クラウス・フォン・ローゼンクランツと第五帝姫が学校の寮で一緒に寝起きしていることを、認めるとは思えませんね」
帝室会議は、皇族の正式な意思決定機関だ。問題を起こした皇族から身分を剥奪する権限も持つ。
実際、俺とルーシィが同居していることがどれほど問題しされるかはわからない。
だが、ルーシィは顔を青くした。
「やめて。クラウス先生にも迷惑がかかっちゃう」
「だったら、決闘に応じれば良いのです。あなたが勝てばこのことを問題にはしませんし、ローゼンクランツさんとの同居も認めましょう。何でも一つ、言うことも聞いてもいいですよ。もっともわたくしが負けるわけありませんが」
「時期は?」
「観客も集めるので、時期は一週間後でいかがですか?」
シャルロッテとしては、ルーシィよりも自分が格上だと見せつけたいのだろう。
きっとそっちが主目的なのだ。
だから、時間を取って、大々的に宣伝を行うつもりらしい。
ルーシィが迷っている様子だったので、俺は横から助言する。
「無理に決闘に応じる必要はありませんよ。他に解決策はいくらでもあります」
「本当に?」
「はい。一応高級官僚ですので。私を信じてください」
ルーシィはほっとため息をつく。内心不安だったのだろう。
このまま戦えば、シャルロッテに勝ち目はない。
だが、もちろん、俺は違う道も用意できる。
「ですが、決闘に応じても問題ありません」
「え? でも……」
「私の指導があれば、ルーシィ殿下は第四帝姫殿下に勝てますよ」
俺の言葉にルーシィは目を丸くし、そして、ふふっと笑う。
「それ、信じていいのよね?」
「師匠ですからね」
「わかったわ。私はクラウスを信じる」
ルーシィはうなずくと、シャルロッテに向かい合った。
「シャルロッテ。後悔しないでよね」
「それはこっちのセリフです」
二人はばちばちと視線で火花を散らす。
こうして姉妹帝姫の決闘に俺は巻き込まれることになった。
だが、これはいい機会だ。俺の師匠としての存在価値を示し、ルーシィからの信頼を確かなものにする。
今でもルーシィからの好感度は高いが、これから先、俺とルーシィは運命共同体になるのだから。
同時にシャルロッテをやり込めて、彼女も上手いことこちら側の派閥に取り込みたい。
ルートヒロインである彼女の力は、俺たちの道の助けになる。少なくとも敵にはしたくない。
だが、いずれにせよ、俺がするべきことは一つ。
ルーシィにシャルロッテに打ち勝つための闇魔法を教える。
これはルーシィを最強にする通り道。俺の破滅回避のための一歩になるのだ。
<あとがき>
私の書いている他の作品もよろしくです! いくつか書籍化しています。
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タイトル:清楚完璧な美人のエリート警察官僚上司が、家では俺を大好きな甘デレ幼馴染だった
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