第19話 リセの冒険① 遺跡深部にて
「異界の魂を感じ取ったと思ったのですけど……?おかしいですわね。」
「あら、そこの幼女さん――、よく見ると魔族の身体だけど、異界の魂でも……?何だが、よく分からないですわね。
まあ、良いですわ。折角登場したのですから、取り敢えず試練を課す、でいいかしらね?」
「何だかよく分からないけど、スケスケのおねーさんは、一体何者さんですか?」
危険な流れを感じ取った璃星が口を挟む。何処かにいる者の姿を写像しているのか、はたまた霊魂的何かなのかは判別つかないが、どうやら相応の大きさのものは揺れ動く仕様のようで、女の動きに追従して一部が大きく揺れている。
「あらあら。何か卑猥な響きの呼び方ですわね。
私は女神のけ――この遺跡の管理人みたいなものです。気軽に美人のお姉さんと呼んでください。」
「その、おっき――美人のおねーさん、は何をするためにここへ?」
ひとまず、呼び方については希望に沿う事にした璃星は、揺れ動くものに視線を寄せつつ、質問を重ねる。
「ですから、試練を与えるためですわ。
異界より召喚された勇者に巨大な闇を打ち払う為の大いなる力を授ける――べきかを判別するのが私の役割です。」
「それって拒否権は無いの?私たち、そういうの求めて無いんだけど。」
遂に黙っていられなくなったアリアナが、念のための確認を試みるが、それは一言で切り捨てられてしまう。
「無いですわね。」
「「「「「やっぱり!」」」」」
一同のクレームを一顧だせず、自称管理人は話を進める。
「それでは、お・も・て・な・し、させて頂きますね。」
自称管理人がそう宣言したところで、再び床文様が強く明滅し始める。それが暫く続き、元の光量へ戻ったところで、床に影が出現した。そして、顔に手の平をあてるというポーズで静止し、微動だしない一人の男が影より浮かび上がってきた。
その姿こそ人間の青年のようであるが、正体は悪魔、それも上位のグレーターデーモンであった。顔立ちは整っており、自信に満ちた笑みが浮かんでいる。赤い瞳は深く、まるで炎が宿っているかのような輝きを見せていた。
「ゼノバル・クリムゾンスタア。貴方に試練の役目を任せます。この者達が魂の輝きを見せられるよう、試しなさい。」
自称管理人が冷たい目で告げると、ゼノバルはようやくポーズを崩し、恭しく一礼する。
「これは、これは、我が女神。お久しゅうございます。いつお呼び頂けるのかとこのゼノバル、一日千秋の思いで待ち焦がれておりました。勿論、いつでも我が女神に私の美しい姿をお見せできるよう、常に万全の身だしなみを整えて。魔界の風は肌に悪いですので、スキン・ケアを忘れずに――」
「御託はいいから、戦いなさい。」
「はっ!我が女神の仰せの通りに、この幼女どもを蹴散らして御覧に入れましょう!」
自称管理人に凄まれたゼノバルは、大人しく話を切り上げると、璃星たちの方へ向き直る。そして一同の姿を下から上まで嘗め回すようにじっくり観察した後に、寸評を加えた。
「幼女は――もう少し育っていれば良かったのですが、惜しかったですね。はい残念!
エルフ娘は――まあ、もう見込み無しですね。はい残念!
猫娘は――ふむ、貴女は中々見どころがありますね。ですが、私には既に心に決めた女神がおりますので……残念!」
璃星は笑顔のままゼノバルの言葉を聞いていたが、ケイラは残念なものを見たかのような表情を作る。そして、感情を消したアリアナが『私はまだ成長期』と繰り返し呟く。
「男どもは見るところもないですね。
残念ながら、皆さんにはここで倒れて頂きましょう!そして、私は我が女神からお褒めの言葉を賜るのです!」
言い切る前にアリアナの放った矢がゼノバルへと届くが、それは顔面を射貫く手前で指につままれ、動きを止める。
「ちっ!殺りそこねた!」
「中々の殺意ですね。まな板は受け付けませんが、その意気やよし!
それでは参りましょうか!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます