第18話 リセの冒険① 遺跡
「急に雰囲気が変わったわね~。」
隠し扉の先は、誰も見たことの無い不思議な文明の存在を予感させるような遺跡へと続いていた。ギルド長以上の年月を経ていると思われるにも拘わらず、いまだ正常に稼働しているように見える。壁がうっすらとではあるが緑に輝いており、明かりとしては十分機能していた。
「ここからはなお一層慎重に、じゃの!」
周囲を警戒しつつ前進する一同。遺跡内も洞窟同様に脇道などは見当たらず、『最後の幻想』のような一本道となっていた。
暫く先に進んだところでケイトが立ち止まり、鼻を鳴らす。
「う~ん。血の匂いがするね。」
更に奥へと進んだところは少し開けた場所となっており、そこには横たわる人間たちの姿と、まだらに赤く彩られた床があった。人間たちは既にこと切れており、何者かによって切り刻まれた痕や、焼き焦がされた痕などが、全身に刻まれていた。
「血の乾きも中途半端――殺られてからそんなに時間は経っていなさそうだね。
下手人は近くに居る可能性が高いよ。」
「生き物がいそうな匂いは全く感じないけど。ゴーレムみたいのがいるのかな~。
ボク、ああいうの苦手なんだよねー。引っ掻くと変な音を出したりするし。」
「何か来たのです……!」
見ると、通路の前方より周囲の光を反射して不気味に蠢くものの姿があった。それは璃星の身長の3分の2程の大きさをしており、この世界に似つかわしくないメタリックな輝きを持った物体であった。よく見ると2種類に分かれており、1つは飛行タイプ、もう一つは地を走るタイプのもので、銃口のようなものが付いている。どちらも数体ずつおり、ゆっくりと一行へと近づいて来ていた。
「ろぼっと?見慣れた形状をしているけど、ふぁんたじー世界には似つかわしくないのです!」
「あ~、やっぱりゴーレムか~。ま~、しょうがないな~。」
「人間たちの遺体には焼かれたような痕があったの。何か遠距離攻撃を仕掛けてくるかもしれんから、近づく時は気を付けい!」
「それじゃあ、先手必勝で!」
アリアナの放った矢が飛行タイプを捉えるが、完全に沈黙させるには至らない。
そして、矢と同時に駆けだしたケイナに対して銃口が向けられる。
「おっと!危ないなー!」
発射された光の束は、間一髪のところでケイナの脇を抜ける。髪の焦げた臭いが鼻を突く。
「れーざー!光を収束させた熱線攻撃なのです!」
「ほれ、やっぱりの。
援護してやるから、その間に距離を詰めい!」
接近を試みるリンドとケイラに対して更にレーザーが放たれるが、それはダルグリムが生み出した土塊に射線を遮られ、彼らには届かない。
「だーくな力なら相殺できるかな?」
璃星は多数の闇球を出現させると、それを器用に操ってレーザーへと体当たりさせる。アリアナも負けずと矢を放ち、遠距離攻撃を妨害する。
「ありがとね~!これなら行けそーだよ!」
肉薄してきた2人に対して、ロボットたちはブレードへと武器を変更し斬りかかってくるが、それをうまく避け/受け流して反撃を加えていく。そこへダルグリムも前衛に加わり、アリアナと璃星が援護することで形勢は逆転、無事殲滅に成功する。
その後も、ロボットたちとは数度と遭遇する事となったが、初戦でコツを掴んだ一同は難なく撃破して進んでいった。そして、再び開けた場所へと行きつく。
「ここで行き止まりみたいね?また隠し扉とかあるのかしら?」
だだっ広い場所の中央には、石碑のようなものがただ一つポツンと設置されており、他には何も視界を遮るものが無い。床には不可思議な文様が敷き詰められており、異様な雰囲気を醸し出していた。
リンドが念入りに周囲を調べるが、石碑を含めて何も反応はない。
「きっと、こういうところに何かある、のです!」
そう言って璃星が石碑に触れた途端、周囲を埋めつくしていた文様が光を放ち始める。そして、暫く経ったところで石碑の後ろに女性の姿が出現した。その輝く身体には後ろの壁が透けて見えており、実体では無いのだという事を示唆していた。
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