第17話 リセの冒険① 洞窟
マギスフィアにおいてのゴブリンという存在は、専属殺戮者が登場する程の凶悪さは無く、一般的な魔物、そして大して強くは無い部類に入る魔物である。
とはいえ、それが群れて襲ってくるとなると、一般の村人だけでは流石に手に負えない。
被害が出たという村に辿り着くと、ちょうど襲撃を受けて逃げ惑う村人たちと、略奪に勤しむゴブリンたちの姿が見えた。勿論、ベテラン冒険者にしてみれば、それらを蹴散らすのは苦もない事であり、そう時間を要する事なく全滅させる事に成功する。
「ん~、思っていたより数が多そうね。これを追い出したとなると、まあまあの手練れかしら?」
「さあの。だが、どのみち油断は禁物だろうて。」
「そうだよね~。あのおばさんがわざわざ指名するくらいだもんね。楽な仕事を回してくれる訳ないって!」
「ゴブリンだけじゃ手応え無いし!ボクはちょっとワクワクしてきたかな~。」
「おれたちのたたかいはこれからだ……!」
「ありがとうございます。皆さんのような高ランクの冒険者に来て頂けて、ほっとしております。引き続き、宜しくお願い致します。」
村人たちに歓迎され、一泊だけ英気を養った5人は、そのまま洞窟があるという森の中へと歩を進めた。深緑の色彩と薫りが一同を包み込む。途中、何度となくゴブリンたちと遭遇する事になったが、難なく殲滅していく。
「事前情報だと、この辺りのはずだけど……?
あ。あったわね!」
山のふもと、森の切れ間に洞窟の入口を見つけた一行は、まずは遠目に様子を覗う。各人、慎重に気配を探るものの、周囲に人の姿は無いように思える。
「うーん。入口付近には、誰かがいるような物音は無いわね。」
「そうだね~。匂いもしないかな~。」
「ふむ。ではひとまず近づいて見るとしようかの。」
ダルグリムの言葉を合図に、一同は茂みから出て、洞窟入口付近へと近づく。闇へと落ちる少し手前にて立ち止まったところで、リンドが先行し更に詳しく周囲を調べだした。
「……罠が設置されたままになっているね。傭兵崩れの人間――かは分からないけど、人間か亜人が中に入り込んで設置した可能性は高そうだよ。」
「でも、ここ最近――数日間は出入りした形跡が無いね。新しい足跡が見当たらない。」
そう言いながら、まずは罠の解除に取り掛かるリンド。それは、さほど手の込んだものではなかった(恐らく、ゴブリンたちが戻ってくるのを警戒するためのもの)ことから、殆ど時間を要する事なく無事完了する。
「ゴブリンたちが戻ってきている様子もないし、取り敢えず入ってみるしかないね。」
「現況確認がお仕事だから、火攻め・水攻めはNGなのです。残念。」
洞窟内は灯りこそないものの、大きな障害や罠などは存在せず、歩いて進むのに弊害は無かった。ところどころに、生き物が生活していた痕跡が残ってはいたものの、魔物や人間と遭遇することも無く、数刻進んだところで一同は袋小路へと行き着く。
「行き止まりのようだね。
ここまでに脇道があったようには思えないけど……。どこに行ったのかな?」
「こっちに足跡、それも不自然に途切れているのがあるね!」
壁際の床を覗き込んで調べていたリンドが声を上げる。それを聞いたアリアナは、壁に耳を近づけ聞き耳を立てる。
「ふんふん。何かへんな風の流れがあるみたいね。この先にも空間があるのかも?」
「どこかに隠し扉がある?
うん、何かボタンのようなものがある!まんまるボタン、押して良い?」
念入りに壁に探りを入れていた璃星は、一目ではそれと分からぬように隠されていたボタンを発見する。
「周囲を確認した限りでは、危害を加えるタイプの罠は無さそうだから――いいんじゃない?」
リンドからのGOが掛かったところで、璃星は思い切りよくボタンを押し込む。
「ポチっとな!」
大きな抵抗もなくボタンが壁へと飲み込まれたところで、壁に光の文様が浮かび上がった。そして、静かに左右に割れると、奥へと続く道が出現した。
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