第16話 リセの冒険① 指名依頼

 アリアナのパーティーは亜人種だけで構成された4人組であり、そこに璃星が加わることで、種類・人数ともに5となった。

 一人目はダルグリム・スピリットフォージという名の壮年のドワーフ。厚いひげと筋肉質の体を持ち、手には常に重い斧と酒瓶を携えている。

 酒と精霊を愛してやまない、正に典型的なドワーフ族の術士だ。

 二人目は若きグラスランナーのリンド・グリーンリーフ。既に成人ではあるものの、璃星と同じくらいの身長しかない。ただ、その身軽さはパーティー随一であり、手に持った鋭く光る短剣で多くの魔物を屠ってきた猛者である。普段の彼は、好奇心に溢れた瞳で笑顔を絶やさない、陽気なグラスランナーを絵に描いたような性格をしていた。

 三人目は若き猫獣人のケイラ・シルクテイル。幼く愛らしい顔立ちの中にも、鋭い目が獰猛さを秘めている。しなやかな身のこなしは猫らしく、その手には鋭い爪が光る。メリハリのある体形は、敏捷な動きに躍動感を与えている。

 これにアリアナを加えた4人が、長い間パーティーを組んでいるベテランの冒険者たちである。

 ランク――冒険者たちの実力を示す格付けで、依頼とのマッチングを図るもの――で言えば、彼女たちは上から2番目に位置するAランクとされていた。フォレストハーバーだけでなく、マギスフィア全体においてもそう多くは無い上位ランクパーティーである。

 そんなベテラン冒険者パーティーの一員として迎え入れられる事となった璃星は、メンバーの手厚いサポートもあり、順調に依頼をこなしながら着実に実力を伸ばしていった。

 璃星が冒険者となって数か月が過ぎた頃のある日、突如、遺跡調査の依頼が舞い込んできた。

 依頼内容としてこうである。元々ゴブリンが住み着いていた洞窟に何者か――恐らく遠く離れた戦地から流れてきた傭兵崩れの人間――が住み着いたせいで、追い出されたゴブリンたちが付近の人里まで降りてきて被害が出ている。その者達がゴブリン以上の脅威となる可能性も否定できず、更なる被害の拡大も看過できないので、ゴブリンを掃討しつつ遺跡と人間たちの状況を確認してきて欲しい。

 しがらみ案件。拒否は認めない。


「こういう依頼の仕方は辞めて欲しいわよね!全く、強引なんだから!困ったものだわ、あのおおお――ギルド長にも。」


 ギルド長の耳の良さを警戒して言い直しつつ、血縁者は不満を漏らす。


「まあ、支払いだけはいいからの。特に急ぎの用件も無いことだし、良いのではないか?」


 パーティー内では比較的実利を重んじるドワーフが意見する。


「ん~、オイラちょっとあのおばさん、苦手なんだよね~。何か逆らえない、というか。」


 恐れを知らないグラスランナーがコメントを加える。


「ボクもちょっと苦手かな~。でも結局受けさせられるんだから、諦めた方がいいかも。」


 似つかぬ諦観をみせる、気まぐれな獣人。


「とても人望があるんだね!ソフィアさんは!」


 無邪気に感心する幼女。

 拒否できないだろう、というところの見解だけはパーティー内で一致していた。

 しぶしぶではあるものの依頼を受ける事に決めた一行は、直ぐに旅の準備を整えると、まずは件の村へ赴くべくフォレストハーバーを出発した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る