第14話 しがらみ案件

受付嬢に連れて来られたのは、見た目はソフィアと殆ど変わらない年齢に見えるハイエルフの少女――アリアナ・エルダーグロウであった。

 アリアナはハイエルフ基準では年若いと呼べる年齢で、緑色のボブカットの髪が陽光に輝いており。その快活な瞳は好奇心に満ちている。背中には矢筒と弓を背負っており、彼女のスレンダーな体形はそれを操るのに最適化されているかのようだった。


「やっほー、大叔母様!私に用って何かしら?」


「……ギルド長と呼べと言っているでしょ。」


 ソフィアの鋭い視線がアリアナを射貫き、背筋を凍らせる。


「ギ、ギルド長、お呼びでしょうか!」


 顔を引きつらせて訂正したアリアナを見て、満足そうな表情をみせるソフィア。


「そうだね。それでいい。最初からそうだと、もっといいかな。

 アリアナ、君を呼んだのはこの子――リセ・ササキさんの件で、だよ。」


「ああ、さっき下の連中が騒いでいた子ね!むさ苦しい動物小屋に遂に天使が舞い降りたとかなんとか。私みたいな可愛い美少女が既に居るっていうのに、どういう要件なのかしらね?

 リセちゃん、って言うんだ。その子がどうかしたの?」


「リセさんを君のパーティーに加えて欲しい。歳はちょっと――結構若いけど、多分大丈夫。ちゃんと戦える――はず。あとは、ベテランの君たちでカバーして、一人前にしてあげて。

 しがらみ案件。拒否は認めない。」


「パパとのしがらみ……!私、気になります!そこんとこkwsk……!」


 璃星は『しがらみ』というキーワードに食いつき、手を組んで上目遣いで詳細を聞き出さんと試みる。


「私も気になる……!是非!」


 璃星の仕草を真似、上目遣いでソフィアを見上げるアリアナ。瞳の潤み具合までは完璧であったが、頬から笑みを消し切る事には失敗していた。


「教えないよ。

 ……というか拾った娘にパパと呼ばせてんのか、アイツ。キモイ。マジキモイ。」


 ソフィアには全く通じず、一言で切って捨てられる。


「おおおば――ギルド長とのしがらみ何て、相当な大物なのね、そのパパって奴――」


 通用しない表情を作るのに飽きたアリアナが、素に戻って呟いたその言葉をソフィアは見逃さなかった。


「次言ったら折檻ね。」


「ギ、ギルド長のお知り合いのへんた――の方ですね。分かりました!」


 慌てて言い直しつつ、承諾の意を返したアリアナを見て、ソフィアは満足げに頷く。


「それじゃあ、宜しく。頼んだよ。

 ああ、そうだ。他のメンバーへの説明は君に任せるよ。上手く言っておいてね。」


「よろしくお願いします!」


「し、承知致しました!委細お任せ下さい、ギルド長!」


 こうして、璃星は晴れて?冒険者となり、アリアナが組んでいるベテラン冒険者パーティーの一員となったのであった。

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