第13話 ギルド長

 奥の執務室へ入ると、その居室に似つかわしくない一人の美少女が待っていた。

 その美少女――見た目だけであるが――の名はソフィア・シルバーレイン。御年千うん百歳のハイエルフにして、フォレストハーバーに留まらず、ルナリア共和国全土の冒険者ギルドを束ねる存在である。

 輝く銀の髪が軽やかにツインテールへと纏まっており、瑞々しい緑の瞳は知恵と優しさに満ち、繊細な耳が風に揺れる。見た目は少女そのもの。しかし、その実力は他の追随を許さず、冒険者たちからは絶大な信頼を寄せられていた。


「君がリセ、リセ・ササキさんだね。初めまして。

 私はソフィア・シルバーレイン。気軽にソフィアさん、と呼んでくれて構わない。

 ここのギルド長をしている。宜しくね。」


 多少抑揚に乏しいものの、声には年齢を感じさせるものはなく、発したものの姿見をそのまま反映したものように聞こえた。


「紹介状を読む限り、君は見た目と中身が一致していない、という事のようだね。

 アイツの娘の身体に、異界から召喚された者の魂が宿っている。

 うん。多少年齢が違っていると言っても、誤差範囲のようだね。問題ない。」


「ハイエルフ基準なら人間の赤子も老人も変わらない、のでは?」


「それで、希望は――冒険者になりたい、と?

 奇特な事だね。アイツなら喜んで養うだろうに。

 三食昼寝付、喰っちゃあ寝のぐうたら生活がおくれるよ?ウザったい父親を構ってやらなきゃいけないのは面倒臭いだろうけど。」


「見た目は子供、頭脳は大人。

 小さくなっても頭脳は同じ!迷宮なしのめ……じゃなくて、迷宮入りの冒険者を目指しているのです!」


 間を置く事なく即答した璃星を見て、ソフィアは鷹揚に頷く。


「うんうん。決意は固いようだね。分かったよ。冒険者になるのを認める。

 ただし、条件がある。君には、私の指定する冒険者パーティーに加わって貰うよ。」


 ソフィアが机の上に置いてあった呼び鈴を軽く振り鳴らすと、入口に控えていた先ほどの受付嬢が中へと入ってくる。


「悪いけど、あの子を呼んでくれるかな?」


「承知いたしました。今ちょうど、下に来ておられたと思いますので、少々お待ちください。」

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