第5話 新たな目覚め
――目を覚ますと、そこには見知らぬ幼女がいた。
「水面に自分の顔を映して見てみたら。あらら。幼女になっちゃった。」
銀色に輝く長髪の先を水に浸しながら、顔を作って動きを確認する。水面に映る小さな顔には、大きな金色の瞳が興味深そうに踊っている。
「身体にジャストフィットした見知らぬ服も着ているし……。森で真っ裸を晒す痴女――痴幼女?にならずに済んだのは喜ばしいけど、これは――?」
そこへ、起き上がってから水面に顔を映し込むまでを笑顔で見守っていた男が声を掛ける。傍らには、変わらずミミズクっぽい何かの姿もある。
「それは娘が亡くなった際に着ていた服だよ。身体と一緒に再生しておいたのさ。
よかった、問題なく適合できたようだね。それに、ちゃんと言葉が話せるようになったようだ。」
その言葉に、璃星は今初めて気づいたかのように口をパクパクと動かし、発声出来るという事を確かめる。
「――シャア少佐、シャア少佐、シャア少佐。うん。ちゃんと喋れるみたい。
幼女化して身長以外も縮んじゃった(´・ω・`)。でも、父親はおっきいのが好きそうな顔をしているから、これは逆に希望が持てる……?」
「何の大きさかな?
……恐らく、君の身体が亡くなった頃の娘の年齢に引きずられた結果だろうね。その容姿は亡くなった頃の娘と瓜二つだよ。
だが、怪我も完全に治っているようだし、元々動かなかった半身も問題なく動かせようになっている。」
璃星は久しく動かす事が出来なかった右腕を高速回転させ、その感覚を確かめる。
「――確かに。凄く軽快。今なら魔王も指先一つでダウンさせられそう。YouはShock!」
「……それは止めてくれると嬉しいかな。
さて、まずは君の名前を聞かせてくれるかな?」
「名前?……名前は、璃星。佐々木璃星だよ。」
「リセ……、リセ・ササキか。リセと呼んでいいかな?
私はアルカディウス。私の事はそう――パパ、と呼んでくれると嬉しい。」
「パパ?羽振りのよさそうな男が幼女を拾って、その上自分をパパと呼ばせる。これはやっぱり光源氏計画……?」
「――どことなく犯罪臭が漂う計画の名前だね?リセのその身体は娘のもの……、是非とも娘の顔と声でパパと呼んでもらいたい、というのは仕方のない親心というものではないかな?」
「全く思わないけど。……まあいいや。別に呼ぶだけなら害はないし。これから、貴方の事はパパ、と呼ぶ事にする。」
その言葉に、顔を綻ばせて喜ぶアルカディウス。
「ありがとう。パパは嬉しいよ。
……それでだ。暫くの間、リセの面倒をパパと、パパの親友であるこいつとで見ようと思っているのだけれど、いいかな?」
「リセがここに流れ着いた理由を鑑みると、あまりこの世界についての知識は得られていない、そうじゃないかな?
それに、万全に戻ったとはいえその身体に慣れる必要もある。私の娘の身体だから、その年齢でも身体能力は十分問題ないとは思うがね。
そして、魔力も扱えるようになっているはずだ。その扱い方についても、誰よりも上手く教えられる。
パパたちは、リセがこの世界で問題なく暮らせるようにしてあげたいと思っているんだ。」
「――何でそこまで親切に?」
「それはもちろんパパ、だからさ。
折角再会できた娘だからね。出来るだけ長く生き延びて欲しいと思うのは自然な事だろう?」
「やっぱり身体目的。なら納得。
流石に実の娘に手は出さない……はず?少なくともおっきくなるまでは大丈夫?……それじゃあお世話になりますです。」
「でも、パパのお友達?のモフモフさんと私はお話出来ない……。
上手くやっていけるかちょっと心配。」
「魔力が得られた今なら、コイツとも問題なく意思疎通が図れるようになるさ。だから安心して森の生活を楽しむと良いよ。」
そこで少し首を傾げたリセだったが、暫くすると何か納得したように頷いた。
「――あれ、ちゃんと会話が成り立っていたんだ?てっきり、森の動物相手に独り言をする痛い人なのかと。ちょっと安心。」
「……そんな風に思っていたのかい?パパは少し悲しいよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます