第2話 -村の人々①-

僕達が村の外を冒険してから一週間。


師匠の下で、三つの心構えについて再度勉強をしていた。

あの時の冒険で、僕達に足らないものを身を持って知ったからだ。


特に知る事については、村の中でも出来る。

その為、僕達は積極的に村の外について知る事をしていた。


最初は村の外について師匠に聞いてみようと思っていた。

というか、聞いてみた。


しかし、師匠は首を小さく横に振って教えてくれる事はなかった。



「……まぁ、僕が知っている事を教えるのは簡単だよ。 でも、それじゃ僕がいなくなった時に意味がないよね。 なので、村の人達から村の外について色々調べておいでよ」



そう師匠に断られて、自分達で村の外について村の人達に聞いてまわる事になった。

その時に、師匠から二つの課題を出された。


最初に一週間、僕とキューリで別々に調べる事。


一週間調べたら、僕とキューリで情報の共有をして、足りない情報があると思ったら今度は二人で調べる事。


そして、今日は丁度その一週間目だった。



「おはよう、キューリ」



先に村の広場で座って僕を待っていたキューリの横に

、僕は腰を掛けた。



「おはよう、ヴァル。 きちんと調べてきたのかしら」



「もちろんだよ! まずは僕が分かった事について話すね」



隣に座るキューリの方を見ながら、この一週間村の人達……主にお父さんやお母さんに聞いた村の外について僕は話した。


僕が分かったのは主に二つだけ。

隣の村までの道の事や、近くにある森の事だけだった。



「隣の村までは、そんなに危なくないんだって。 ただ、森の中はたまに魔獣が出るみたい」



「……魔獣」



魔獣と聞いて、キューリの顔が少しだけ青くなった。


つい最近、僕達は魔獣に殺されかけた。

キューリの顔が、魔獣と聞いて青くなるのも仕方がない事だった。



「それ以外にも色々聞いてみただけど、あまり詳しい事は分からなかったよ」



「そう……それは残念ね。 今度は私が調べた事について話すね」



キューリが話す内容も、僕と大して変わらなかった。

隣の村までの事、森の事。



「私もヴァルが調べた事と大差なかったの。 でもね、昔お母さんが王都で暮らしていたらしく、王都について少し教えて貰ったわ」



王都……。


僕達が暮らす村はアスガイム王国と言う国の中にあって、その中心にある大きな街の事を王都と呼ぶらしい。


王都には女王様というこの国で一番偉い人が暮らしていて、僕達が暮らす村とは比較にならないくらい人や建物がいっぱいあるらしい。



「……でも、王都って凄く遠い所にあるんだよね。 興味はあるけど、今回に関してはあまり関係ないかもね」



「そうね……私達が今知りたい事は、村の周辺についてだものね。 私はね、特に森について、もっと調べるべきだと思うの」



「僕もキューリと同じ考えだよ。 森について、もっと詳しく知りたいな」



僕とキューリが命を落としかけた森。

知らなかったから、危なかった。


森について思い出すと怖いけど、怖いままじゃいけない。

僕とキューリの思う事はきっと同じだろう。


僕隊は森について調べた事を話し合いまとめた。

結果、山菜が採れる、小川が流れてる、魔獣が出るくらいしか分からなかった。


うーん、後は師匠に聞くしかないのだけど、足りない情報があると思ったら今度は二人で調べる事って言われてるし……。


二人してどうしようかと頭を悩ませていると、キューリが唐突に「あっ」と声を上げた。



「ねぇ、ヴァル。 そう言えば、半年程前にこの村に移住してきた人がいたよね」



「確か……レギムさんだっけ。 それがどうしたの?」



「そう、レギムさん! その人、森を抜けたところにある村から来たんじゃなかったっけ?」



キューリの言葉で、レギムさんの事を思い出す。


確かレギムさんって、失恋したショックで村を出て、そのまま森を抜けてこの村にやってきたって聞いた事がある。



「そうだよ! レギムさんなら、森についてもっと知ってるかも!! 流石だね、キューリ」




僕は思わず立ち上がり、キューリの手を握った。




「た、たまたま思い出しただけよ」



突然褒められて照れているのか、顔を少しだけ赤くしたキューリを、僕は手を握ったまま立ち上がらせた。



「そうと分かれば、やる事は一つだよ、キューリ」



思わずキューリを握る手に力が籠る。



「分かってるわ、ヴァル」



キューリも、手に力を籠め握り返してきた。





『行こう、レギムさんのとこへ!!!!』





僕達は声を揃え走りだした。




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