第六感

俺ら、おっさんについて行ったら途中にあった村で大混乱発生してた。


「帝国が攻めてきたんだ! 捕まったら殺されるぞ―」


マジカ。いきなり厄介事かよ。


「どうしましょう! おとっつぁん!」

「万ちゃん慌てるな。大丈夫だ」


俺、辺りを見回す。右手側に小高い丘があるのを発見し、そこへ行くよう二人を促した。


「帝国って悪いやつなの?」

「そらもう、捕まったら殺されちめーよ」

「マジか~。でも何か、あっち側から軍隊ポイ奴ら出てきたけど、何で応戦しねーの?」

「まぁ、本当だわ。ひどい、村長さん、お逃げになるなんて」


帝国軍って奴らが村に押し寄せてる隙に、村の軍隊は帝国軍が押し寄せた方向とは逆に進んでいた。


でもその先には、林を挟んで伏せている沢山の人々がこの丘からは見える。

これ絶対伏兵だろ。っていうか、そんな簡単な逃げ道作らねーだろおかしーと思わねーのかあいつら。


俺の第六感は的中した。

逃げていく軍隊の側面に林に潜んでいた伏兵が一気に襲いかかり、村軍の進軍は止まった。


それを待っていたかのように、村を襲っていた奴らも急に矛先を変えて、村軍の後ろを襲う。

よく見ると村軍の行こうとしていた向こうからも――到着するには距離があってもう少しかかるだろうけど――一軍がやってきていた。


「なにあれ、だめじゃね? っつーかいきなりハードな戦争勃発かよ」

「なぁあんた。ターゴ様の知り合いじゃないんけ? このまま見ていて大丈夫なんか」

「いやいや、だって村見捨てて逃げるとかありえんしょ」

「あぁ、ここを滅ぼされたら次はおら達の村だぁ」

「お侍様、村長はともかくターゴ様は良い領主様なんです! この地を守るために、お侍様のお力をお借りできませんか?」


万ちゃん俺に抱きつく。あたる、あたるよ、やる気スイッチ。


「万ちゃんがそこまで言うなら助けないでもないけど、でもなぁ」

「おねげえだ! おらに出来る事ならなんでもすっぺよぉ」

「いや、いらねーし。お前にしてもらいたいことなんかねーし願い下げだし」

「お願いします! 私も、私に出来る事なら何でも――」

「よしわかった! 万ちゃん! その言葉忘れないでよ! 俺頑張る」


俺、二人に少し離れてもらい、刀を抜く。

刀を逆手持ちにし、器用に空に円を書くように空を斬った。

なんでかよく判んないけど、こうすれば俺の能力が発動するのを俺は第六感で知っていた。


「悪・即・斬!」


するとたちまち、空がぱっくり丸く斬れ、そこから大きな石の塊が顔を出した。

石の塊は、俺の気合の一言で細かく砕け散ると、摩擦熱で発熱し、着火した沢山の石が、帝国兵に向かって降り注いだ。


「なんだあああ!!」

「うわああああ!!」

「敵襲うううう!!!」

「どこからだあああ!」


帝国兵阿鼻叫喚。ついでに村の兵も阿鼻叫喚。

おいお前らまで驚くなよ、あててねーだろ。


俺は降り注ぐ石が帝国兵を燃やしていく様を見いながら、もう一発やるかどうかを考えていた。


その時――



馬に乗った変な服着た若造が、一直線でこっちに向かってきた。

年は十代半ばくらいのボサボサ頭のガキンチョが、必死でなんか叫びながらこっちに来る。


「のぶながさまー! 信長様ー!!」


のぶ? 誰そいつ。まさかこのおっさん?


ガキんちょ近くまで来ると、馬を飛び降り俺のところまで走ると、足元にすがりついて泣き出した。


「ご無事で! よくぞご無事で!」


泣きわめくガキんちょ、俺の隕石が撒き散らした炎にあぶられたのか体中ススだらけ。キタネーな服が汚れるだろ。蹴り飛ばしてやっかな、と思ったけど泣いてるから戸惑う。


「おまえだれ」

「hwッ!?」


ガキんちょ、喘息みたいな声で盛大に驚く。

信じられない、というこれ以上ない驚きっぷりで。

いや、何でお前が驚くんだよ、それ盛大なブーメランだろ。


「私です! らんです! もりらんまる、まさかお忘れに!?」

「いや、忘れるも何も、たぶん、ノット知人? おあのっと知り合い?」

「のおーぅ!」


何だコイツ。乗りいいな。


「やはり信長様だ! このやり取り、弥助と私と信長様三人でよくやったではありませんか! あぁ、お会い出来て何より……」

「おう。そうだな。お前がそう言うんならそうなんだろう。お前の中ではな」

「それは! 信長様久々のき・め・ぜ・り・ふ!」


え、なにこいつ。こえーよ。俺、ペテンにかけられつつあるかも知んない。ちょっと楽しくなってきた。


「で、お前なんなの。何か用? 何であの場所からこっちきたわけ? その服帝国って人らだろ?」

「はい。実は私、ここに来て色々ありまして。ですが、信長様が帝国と敵対しているとわかったならばそれもここまで! 私は今日を持って帝国を見限りました!」

「言ってる事がめちゃくちゃだよお前。ちゃんと説明しれ」


俺、立ち話も何だから、皆で木陰に腰でもかけて休もうと提案する。

まぁ急ぎの度でもねーし、面白そうならコイツに付き合ってやってもいいかなと俺の第六感がビーックビクビクビックビク♪。

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