推し活

俺の名は沖田狂四郎。侍。職業浪人。つい先日この世界に越してきた。

こっちに来て最初に困った事は推し活。

俺のスタート地点山だったから里に降りたらみんな時代劇の村人でびっくり。

俺、村人に推し活できるところを訪ねてみる。


「すみません、ちょっといいですか」

「何だお前は」

「この辺で推し活できるお店ありませんか?」

「そんなもんはこの村にはねえよ。なんだあんちゃん推し活してぇのか?」

「え、あ、はい」

「んならウチで推し活してっか?」


俺は思った。お前みたいなきたねえ格好の村人の家なんてきたねえに決まってんじゃん。そんなところで推し活なんてできない。


「あ、いえ、結構です」

「そか。じゃあついてこいやにいちゃん」


は? 人の話聞けや、いらないっていってんだろ。

でもなんか村人、俺を誘って推し活させる気満々で、俺ちょっと困る。

しょうがないから着いて行くだけついていく。


言った先はボロ屋。超ボロ屋。そしてくさい。


「どした? ここだ。はいれ」

「あ、いや、俺、お金持ってないんで」


お金持ってないのに尋ねたのか、って、自分で言ってからマズイ! と思ったが、村人


「そんなもんいらねーって」


と、寛容な態度。

おいおまえ、馬鹿だけどいい人だな。馬鹿でありがとう。

しかしだからといって、こんな汚い場所で推し活はできない。


「あ、そういえば、俺、呼ばれてるんっすよ、町に」

「町だ? どこの?」

「あー、なんつったっけなぁ、たしかここから一番近い、えーっとー」

「ここから一番近い町って言ったらおめー、――――の町だべや」


は? 口から出まかせだったのに話繋がった――――? その身なりで?


「あー、えー、どうだったかなぁ、田吾作何とかっていってたような」

「あぁ?! なんだおめえぇ! ――――様の知り合いか!?」


はい? なんて? 何それ、誰?


「あーあー、えー、えっとー」

「んなら先にそれいえっぺよ! いいど! 連れてったる。丁度荷を届けに行かなアカン所だったから、おめも手伝え」


やだよ馬鹿。何で俺がお前みたいなド貧民の手伝いしなきゃならないんだよ。

でもなんか村人家の裏に回って重たい何かを動かすような音を盛大に発てている。

俺、めんどくさいからここでばっくれる。ゴールドバックラーの実力なめんなよ。


「あら、こんにちは。うちに何か御用ですか?」


と、にわかにかけられたかわいらしい声。

俺、振り返るとそこに美女発見。


「あ、え、えーと、その」


黒髪ロングの清楚系、着てるものは汚いがこれは磨けば光る原石間違いない。MHKでやってたなんとかちゃん先生の堀北なんとかさんの村娘役みたい。


「おー、帰ったか万。そいつは――――様の知り合いだったんでこれから一緒に町さ行くんだ」

「ぉぅいぇ?」

「まぁ、そうだったんですか」


俺、動揺のあまり変な言葉口走る。

おい村人、誰が誰の知り合いでどこにいくんだよ。目の前にこんな美女がいるのにどこにも行くわけねーだろボケが。


「いえ、私は――」

「あの、実は私も、――――様のところに行くつもりで」

「あー、だいじょぶだー、この兄ちゃんに手伝ってもらうからおめえは家さいろ」

「え?」


おいこら調子のんな。くそが。ぶっころだよ、村人。

俺の怒りが有頂天。その時


「だめよおとーちゃん。私も行くわ。見ず知らずの旅の方に任せるわけにはいかないでしょ」


GJGJGJGJGJGJGJGJGJ!!!!!!む・ら・む・す・め! そうだよそのトーリだよお前も一緒に来い。


「だどもおまえ」

「それに帰りに町で買い物もしたいし」


村娘、俺を見て少し頬を赤く染める。

おい、これ、据え膳じゃね?キタだろこれ。


「あぁ、そうですか。では私もお手伝いしますので、お父様とあなたと、三人で行きましょうか」


俺、ちょろいかもしれないけど、流れに乗る。このびっぐうぇーぶ。

そうして俺の推し活の歴史が、新たなる一ページを迎え入れるのであった。

銀河の歴史がまた一ページ的に。

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