第36話

 ドキドキしながら生徒会執行部室へと向かう。


「戸崎です。入るね」


「あぁ」


 低音のボイスで帰ってきた。


「一条くんを連れてきたよ。私はこれで」


「すまないな」


 生徒会執行部室には姉さんや二条さんを含め8名ほどが居た。

 生徒会長と思われる方は学生と思えない威圧感で鎮座している。


「すまない、いきなり呼び出してしまって」


「いえいえ全然大丈夫です」


「私は生徒会長の飯塚涼音という。以後よろしく頼む」


「僕は一条奏音と申します。こちらこそ今後よろしくおねがいします」


 どうやら怒られる雰囲気ではないようだ。


「まず、盗撮カメラを見つけてきてくれてありがとう。感謝する」


「いえいえ。大丈夫です」


 そのことか。よかった〜。


「そしてだな...すごく言いづらいんだが...」


「私からいいましょうか?」


 二条さんがいう。


「いいのか?」


「ええですよええですよ。吹奏楽部が起こしたことですし吹奏楽部の代表として話はせんといかんです」


「すまないな」


 吹奏楽部に関すること...?吹部との関係は昨日の部活体験だけなんだが...


「奏音くん、昨日部活体験に来てくれとったな」


「はい。その節はどうもありがとうございました」


「ええねんええねん。それで...マウスピースやねんけど私が洗っとくって言うたやんか」


「そうですね。そうだった気がします」


 二条さんは数秒固まった後に口を開いた。


「そのマウスピース...盗まれてしまって」


「え?」


「裏サイトに流されてしまったようやねん」


「はい?」


 空気が重くなる。

 マウスピースが盗まれた?俺のを?しかも裏サイトって何?流されるって何?


「なくしたとかじゃなく?」


「盗まれてしまった」


 生徒会長がいう。


「で??裏サイトに流されてしまったんですか?」


「...あぁ」


 えええ?はい??

 理解できない。そんなのなんの利益が生まれるんだろう。たかが一人のマウスピース盗んで売ったところで100円にも満たないだろう。


「僕の使ったマウスピース盗んで裏サイトに流してその人になんの利益が?」


「...はぁ。奏音の危機感のなさが裏目に出ましたね、飯塚お姉様」


 姉さんが言った。二条さん以外の前ではしっかりものだったなそういえば。


「あぁ...正直これ程とは」


 頭の中にはてなマークが増える。


「他にも君の私物が沢山売られているようなんだ。下...着も売られてしまっているようだ」


 あぁ〜確かに替えの下着がなくなってたような。


「君には生徒会としての謝罪と、君にもうすこし自己防衛をして貰おうと思って今回は呼び出させてもらった」


「は、はぁ」


 別に生徒会が悪いわけでもないんだから謝罪してくれなくていいのに。

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