休題 とある日の職員会議

「それでは、職員会議を行います。本日の議題は、『男性の配置クラスとその担任について』です」


 学年主任である中村先生のその言葉に緊張が走る。


「来年度入学生徒の中には男子が2名入ることが確定しており、男子生徒は女子生徒が上のクラスへと向かうためにAクラスへと配置するのが例年でした。しかし、初の中学受験で入ってくる男子であることと2人もいることから安易にAクラスに置くべきではないというのが今回の問題点です」


「ちょっと待ってください」


 反応したのは男性警備官の資格も保持している男性担当の草川ラナ先生。そのサバサバしたものいいから生徒間でも男性のようで人気の先生の一人だ。


「Aクラスには男子生徒を一人も置かないというのは女子学生の学力向上に問題が起きると考えます」


「続けなさい」


「実際、中学時代怠惰だった学生が高校になって男子生徒と一緒のクラスになるために奮闘し、学力があがった事例が多く出ています。

 また、男子生徒が居ない学年もブロック競技でいっしょになるために奮闘した生徒だって多く見られます。その点からAクラスに配置しないのは学力低下につながるのでは?」


 確かに。草川先生が言っていることはもっともだ。

 それにたいする中村先生のアンサーはいかに?


「それは重々理解しています。しかし、Aクラスに二人も配置するとなるとAクラス以外からの攻撃がどこまでになるのか我々にも想定できません。そのことからAクラスに二人置くのは問題になると考えます」


「その点に関しては賛成です。ですからAクラスとBクラスに男子生徒を配置するべきでは?そして、体育などの二クラス合同授業ではA&D、B&Cと組めば良いと考えます」


 草川先生の言っていることは筋が通っている。


「まあそれでいいでしょう。反対の方はいらっしゃいますか?」


 誰も手を挙げない。しかし私は一つ気になる点があった。


「戸崎先生。どうされましたか?」


「反対ではなく質問なのですが、ABに配置するとBで満足する生徒も出てくるのでは?」


 確かに...と中村先生は黙りこくる。いや論破をしたかったわけじゃないんだけど。


「その点に関してですが、Bにも配置するということはBを狙う輩も出てくるということ。CDがBならいけるかもと勉強をしてBもクラスを保持するために勉強する。これで平均的学力が上がるはずです。Bで満足する生徒が出てきてもBに居続けるためには学力を保たなければいけないので平均的学力は上がる。これで良いのではないでしょうか」


 草川先生の完璧なアンサーを受けて私は認めるしかなかった。


「素晴らしい回答をありがとうございます、草川先生先生」


「他に反対の先生や質問のある先生はいらっしゃいますか?」


 誰も手を挙げない。


「ありがとうございます。それでは次にAクラスBクラスに置く男の子を選びましょう。来年度入る生徒は皆さんご存知の通り一条奏音くんと日高裕翔くん。私的には一条くんのお姉さんが素晴らしい成績を残しており、三年連続Aランクで生徒会長も努めていたため一条くんを置くべきだと考えます」


「それで良いんじゃないですか?もしひどかったらBに下げたら良いでしょうし」


 山下先生が発言し、他の人もそのムードでこの話は終わりそうだ。


「じゃあこんな感じで。では本日最後の議題である...クラス担任を決めましょう」


 先程の雰囲気よりさらにピリつく。


「今回も公平にするためにクジで決めます。クジを引く順番はあいうえお順で『赤幡先生』『釘先先生』『戸崎先生』『山下先生』の順でお願いします」


 例年通り(って言っても私二年目だから初めてだけど)のクラス決めだ。赤幡先生がもう引いている。4年目なのに緊張してはる...いやそりゃそうか。初の中等部の男子生徒だし1/2でその担任になるんだもんな...

 とか考えてたら私の番だ。こういうのは左手で取ったほうがいいって昔の人が言ってたらしい。でも私1/2よく外すしな。


 山下先生も引き終わり、結果発表だ。


「それではみなさん、結果を見てみてください」


 ...よし、見よう。











「えっ」


 私が...A組???????


「えええええええええええ???」


「ということで、A組が戸崎先生、B組が釘先先生、C組が山下先生、D組が赤幡先生です。これからよろしくお願いします」




 えっ?マジ???

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