第11話 誤解
全治二週間。右手なのは少し困るので、実家に厄介になることにした。
ガラスでがっつり切ったということにした。
他の先生が親に正直に話すと言ったが、私がガラスで手を切っただけということにして欲しいと言った。
労災が降りたので、病院代はかからなかった。
双子で両手。傷は残るか分からないが、名誉の負傷だ。女の子の罪と顔を守った勲章だ。
「もう気を付けないから、こういうことになるのよ」
「まさかあんなに鋭利だとは」
「ガラスは全身に回って困るから割っても触るなって言ったのにね」
「もういいよ。でも二週間、何も出来ないのは辛いな」
「散歩でもしてきたら? 気が晴れるかもよ」
肯定の返事はせずに私は部屋に戻った。
少し気になったことがあったのだ。あの部屋を一回引き払った後に荷物は捨てずに、両親に片付けると言い全部持って帰ってきた。
パソコンは古いとは言え、ちゃんと丁寧に使っていたから、電源はついてくれるはずだ。ウィンファンはまだ残っていた。
あれからすぐに引き払ったから、全く手付かずだった。通知はたくさん来ていた。どれもが楓からだった。
「緑さん迷惑かけてすみません」
そんな言葉とお詫びにアイテムをときっと親を騙して手に入れたお金で高価なアイテムをたくさんくれていた。
下の方を見ていると最後に謝罪の言葉があり「もう関わりません。本当に申し訳ありませんでした」と、送られていた。
そうだよな。緑さんが突然いなくなったら辛いよな。この子にとって私はアイテムをくれるだけの存在で無かった事は嬉しかった。
ウィンファンで会って、おじさんの紹介で用務員始めて良かった。もう向こうはやっていないかもしれない。メサイアの教典は今もあるのかな。
試しにメッセ送ってみよう。楓はもうやっていないかもしれないけど、マウス操作で出来るのがこのゲームのいいところだ。
今、学校だよな。あの男の子どうなったな、順当に行けば停学かな。警察の手が入ったら嫌だな。だって、刺した男の子はもちろん悪いけど、刺されようとした奏もかなり悪い。
楓はクールで王子様キャラ、奏は女王様。二人の仲は良さそうに見えない。
分からないな。あの頃の楓は弱くもろい女の子でいや男の子かもしれないと思っていた。
奏は可愛くて希望に溢れていた。可愛かったな、ぐへへ。いけない、ロリコンは卒業したんだった。
外を歩いても同級生に会うなんてイベントは起こらなかった。曲がり角で男の子と衝突するはずもない。大人だし、そんなイベント求めてない。
そうだ。たまっているギャルゲーを触るか。ロリ系のやつは売ってしまおう。
「私、緑お兄ちゃんの事だーいすき。えへへ」
いやいや、私は何をしている。中学生の妹が最初はお兄ちゃんクズ死ねとか言ってたのに交通事故から妹を庇うと妹の態度が真反対になって、ベタベタになる。
お兄ちゃん側は理性を持って、妹を扱うが妹は好き好きがダダ漏れで。
「緑、アンタ昼間に何しとる」
お母さんが入ってきた時に妹は「なんでお風呂一緒に入ってくれないの?」と、緑お兄ちゃんの腕に縋り付く。
選択肢はお風呂に入るとごまかす、それか突っぱねる。妹は下着姿だった。
お母さんはため息をついて部屋を出て行った。
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