第5話 高校用務員のアルバイト
あの時、小三だともう高校生か。
「あんたロリコン辞めたでしょ?」
「辞めたというか興味が無くなった」
「あの頃のあの子たちに会ったらどうする? そのために用務員の仕事でしょ」
「おじさんの後釜よ。これは本当」
「案外、再会とかあったりして」
学生時代の友達である葵は月に数回通って来る。
これがあの危ない地域に帰ることの条件であった。
両親は返したがらなかったが、親元を離れて縁のある土地はここしかなかった。
「再会しても今更なんでもないわよ」
「それでもカーテンのすき間から」
「止めてよ。もうあの頃とは違うから」
「数年の結婚生活で家を片付ける習慣がついたのは良かったわね。初出勤は?」
「明後日」
「それまでに食材を買わないとね。知ってる? 駅前のスーパー金井倒産したのよ」
出勤当日、春の始業式一日前に父方のおじさんが迎えに来た。
「緑ちゃん、久しぶり」
「おじさん、お世話になります」
「悪いね、腰が悪いと響くもので」
「力仕事ですか」
「電球を入れ替えたり、割れた用具の掃除くらいだよ。ゴリラがソフトボールで窓を割るのよ。いや荒れてない。アホが多いだけ、男の子はみんな優しいから」
全校生徒朝礼であいさつがあった。よろしくお願いしますの言葉に拍手。
さっさと用務員室に行った。器具の説明をされた。今日はここで解散、明日からよろしくね。
更衣室で着替えて、さっさと帰った。昨日、買いきれなかった物を買わないとな。自転車が必要だな。
「いやぁ、緑ちゃん。すごいね」
出勤二日目、おじさんが薄い頭をかいている。
「何ですか?」
「早速、何人か女の子が来たよ。十人くらい」
「おじさんの顔目当てでしょ」
「そうだったら嬉しいけど、そんなんじゃ無かったのよ。えらく高飛車な女の子と配下みたいな」
えらく高飛車の女に知り合いはいない。
「誰かと間違えたでしょ」
「そうだね。緑は無かったもんね。そういう女の子関係」
過去を振り返っても高校生の女の子に知り合いがいない、勘違いされると嫌だな。仕事がやりにくい。
「今日はどこですか?」
「二階の更衣室。男女の境界のロッカーの電気が切れちゃって、ロッカーに乗らないといけないの。ずっと後回しに」
名前くらい聞いといてもらえたら、良かったな。
遠目から見て避けられそうだから、そっちの方が安心だしな。
お姉様が私を一目惚れ。リーダー格の女の子が調査、それの囲いがぞろぞろと。面倒くさい。そんな事は無いない。
明日からおじさんは休職になる。このまま退職だろう。何かあったら聞いてくれと言って昼休みの前に帰って行った。
放課後まで伸び伸びした。本来は掃除しないといけないけど、おじさんは今日はいいと言ってくれた。
放課後、学内をブラブラしていた。体育館を覗くとえらく人がいた。この中に王子様でもいるのか。二階から見てみよう。
カッコいい女の子だ。バスケ部か、シュートの度に歓声が上がる。汗を手首で拭い、こちらを見た。
女の子の動きが止まった。周りのチームメイトが何してんの? と、言って戻っていく。上を向いた彼女の口の形で分かった。
「緑?」
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