第127話 涙の再会と別れ
そして目の前には俺の魔法にとって再構築された絶世の美女が現れた。
金髪ロングのにポニーテールに美しいというより可愛いが似合う童顔な顔立ち。
妖精とは違う人間サイズだが、それでも小柄な身長で、曲線的で凹凸のはっきりとした体つき。
胸も大きく……っとそこで気づいたが、
「え、はだか……!? 」
「「あ――――っ!! ダメダメっ! 」」
突如大きく声を出して駆け寄ってきたのはミアとナコだ。
さっきまで静かに舞台を静観していたようだが、ここにきて1番の声を張り上げてきた。
そして彼女達が羽織っていた服の一部をセレスティアの器へ急いで羽織らせる。
どうやらこの魔法で再構築できるのは器のみで以前身に付けていたものは難しいようだ。
それでもすごい魔法のなのだが。
「セレスティア様、それにしてもすごい体つき……じゃなかった、えっと再構築した見た目で間違いないでしょうか? 」
「え……うん合ってるけど 」
セレスティア様が冷たい目で俺を見てくる。
一緒に旅をしていた妖精の姿のこの子にそんな目を向けられことがないのでなんとも悲しい気持ちになった。
「えっとじゃあ魂の移動的なことはできますでしょうか? 」
「うん、できるよ。 ただ一瞬この身体は気を失うからその間、支えてあげて? 」
「はい、わかりました 」
セレスティアは近付いてきたので、彼女を支えられるように俺は両手の平を上にして差し出した。
「じゃ、お願いね。それと……ありがとう 」
彼女はそう言った途端、意識を失った。
それと同時にミアとナコによって支えられている金髪美女の器は少しずつ目をあけ、意識を取り戻す。
「……ん、えーっとこれで戻ったのかしら? 」
彼女達に支えられていたセレスティア様は自分で少し動き、肩を回したり背伸びをしたりしている。
身体が動くか試しているのだろう。
「戻れたみたいですね 」
俺がそう口にすると、
「えぇ、本当に戻れるなんて…… 」
そう言う彼女は目に涙を浮かべている。
そりゃ念願の復活だ。
思うところも色々あるのだろう。
「良かったですね 」
「えぇ、本当にありがとう。あなた達も私の身体を支えてくれてありがとう。あとこの服もね 」
そう言って彼女はミアとナコを撫で回る。
2人して少し嬉しそうにしているが、このセレスティア様は姉御肌的なものなのだろうか。
そうしているとすぐに、俺の手元にも少し反応があった。
ふと目を落とすと、
「ん……春陽? もしかして成功したの? 」
眠たそうな目を擦りながら、妖精の姿をした彼女は目を覚ました。
「ティア……じゃなくてレイラ、だったな。 レイラ、目が覚めて良かった! 」
俺は嬉しさのあまり強く手を握ってしまい、
「い、痛い――っ! 痛いよ、春陽――っ! 」
「あ、ごめんごめん。無事なのが嬉しくて。それよりレイラ、動けるか? 」
「うん、なんとか動けそうだよ 」
そう言って彼女はその妖精の羽で身体を浮かせてみせた。
「お姉さんも目を覚ましたよ。 いってあげな 」
「いいえ、私が行くわ 」
そう言ったセレスティアはもうすでに俺の目の前にいた。
レイラは姉を見て、少し困惑している。
妹としては神を全て殺すこと、身体を乗っ取られたこと……納得できないことは多いはずだ。
そんな反応になるのも無理はない。
「おねーちゃん…… 」
「レイラ、本当にごめん。私不器用なの。こんなやり方しか思いつかなかった。レイラがもう私のことを信じられない、顔も見たくない色んな気持ちがあるのも仕方がないと思う。私はそれだけのことをした、あなたを裏切ってしまったのだから。でも私は何よリもレイラが大切、それは変わらないわ。それだけは分かっていて欲しいの 」
「ねぇ! そんな風に思ってたの? ボクがおねーちゃんのこと嫌いになるわけないでしょ? 」
「レイラ…… 」
「仮にボクがおねーちゃんのことが嫌いなら最初っから手伝ってないよ? たしかにさ、神を殺すことだって乗っ取られることだって思いもしなかったけど、それはきっとボクを気遣ってだって分かってた。 だからね、そんな顔しないでよ。おねーちゃん…… 」
「ありがとう、レイラ 」
2人の姉妹はお互いの気持ちを確かめた後、力強い抱擁を交わし、共に泣き合っている。
そんな姉妹の姿を見て、俺は疎か周りの皆も感動していた。
本当にこれでハッピーエンドだな。
そんな時心の中から声がかかった。
(春陽、感動のところ悪いが時間だ )
アウロラ?
時間ってのはどういうことだ?
(そういえば【
そうだ、あの魔法を使う前、アウロラがそんな話をしていたな。
そのデメリットってなんだ?
(なに、お前には関係のないことだ。我が消える、それだけのこと。全ての魔力を使わなければあの力は発揮できなかったのだ。ただ春陽には別れを言っておきたくてな )
なんだって!?
なんでそんな大事なこと黙ってたんだよ。
(あの状況だ。一つの判断が命取りになっていた。我が初めにそれを伝えていたら結果それでも力を使ったかもしれないが、春陽は我を思って少しでも躊躇したであろう? あの場ではそうするしかなかったのだ )
たしかにあの時そのことを伝えられていたら少し迷ったかもしれない。
いやかなり迷った、そしてその躊躇している間に攻め込まれていてもおかしくなかった。
彼はそれが分かっていたために苦渋の選択をしてくれたのだ。
(悪いな、本当にもう時間のようだ。ありがとう。お前とあの時出会えて良かった。初めはただ依代としてだったが、お前の成長を見届けているうちになんだか親心みたいなものが芽生えていたのかもな。だから本当はまだずっとここにいたかったが、我はここまでのようだ。これからも息子の幸せを祈っている。じゃあな、春陽 )
あ……あぁ、この胸の中にあったアウロラの魔力、たしかにここにあったものが少しずつ消えていくのが分かる。
待ってくれ、俺だってこれからまだまだ過ごしたかった。
今まで助けられてきたのだ、恩返しすらまだできていない。
こんなところで別れるなんてやりきれないじゃないか……。
そういつものように心の中でアウロラに訴えるが、返事はない。
もちろんさっきまで感じていた魔力も感じなくなっていた。
俺はそこで初めて確信した、もう彼はいないのだと。
周りが姉妹愛をみて感動している中、俺1人悲しみの涙を静かに流したのであった。
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