第125話 アウロラと神

「ははっ! 春陽直撃――っ!! もう死んだんじゃ……ってなんで魔力が消えてないの? 」


「なんでだろうな? 俺にも分からないけど、無事みたいだ 」


「いやいや、確かに全て攻撃が当たってた。なのに、なんで生きてるの? それに何よその姿……!? 」


 さっきまで魔力直撃により生じていた爆風でお互いの姿が隠れており、ようやくそれも晴れてきた。

 だからなのかセレスティアは爆風が消えた途端、俺の姿に驚いているみたいだ。


 彼女、かなりびっくりしているみたいだが、俺はアウロラのいうとおり魔力を纏っただけだ。


 (今のお前の姿見せてやる )


 アウロラはそういうと、俺の脳内にいつも通りイメージを送りつけてきた。


 ……!?

 なんだこれ?


 それは聖属性エネルギーを纏っている自分の姿。

 ただ純粋で莫大なエネルギー。

 そして纏っているだけというわけではなく、その形は龍の形を模したものだった。

 いや、龍というより、これは龍人というべきか。

 あくまで形は人であり、しかし龍の顔や鱗を鎧のように纏っているのである。


 その立派な鎧はまるでアウロラをモチーフにしたような。


 (お前の想像通り、これは我との融合といったところだ。名を付けるのであれば【聖・龍人セイントドラゴニュート】といったところか )


 そんなすごいことができるのか。


 (もちろん強大な力の後にはデメリットもある。大したことはないがな )


 デメリット?


 (その話は後でだ。この力もどれくらいもつか分からない。今は目の前の敵を沈めることだけを考えよ )


 あぁ、分かった。


 俺は再びやつへ向き直す。

 すると、この姿に警戒をしているセレスティアが目に入った。


「さ、さっきのを防いだのだって一度きりとかでしょ? じゃなきゃあり得ない! さっきのは魔力の純度が高ければ高いほど威力を増すはず。 今の私の魔力を耐えられる人なんて200年前にもきっといないわ! 」


 動揺した様子で彼女はそう言っている。


「それもでそうだ、この力は数千年前のものなのだからな 」


 なんだ?

 自然に口が動き出している。

 アウロラが俺の身体を使って話しているのか?


「その声、春陽ではないようね? 」


 彼女はその声に息を呑む。


「あぁ俺はこの世界を創した神と共に世界を創り上げてきた。その頃、人々には神龍と呼ばれていたものだ 」 


 私達7人の神は元々1人の神だった。

 世界ができてから何千年と経過するうちに土地は広くなり、人種は増えていった。

 神は1人で管理が難しくなり、自身の魔力を七等分した。

 神は自分の側近7人にそれを各自に分け与え、土地を管理させた。

 その力は代々引き継がれていった。

 

「私が引き継いだ時、そんな話を聞いた気がする。けど現代に神の魔力はあなたを除いて7人分揃ってるわ! じゃああなたは一体何者? 」


「神龍の役目とは昔から決まってる。7人に分けられた神の監視だ 」


「そんな人がいただなんて聞いたこともない! 」


「それもそうだ。それを知っているのは初代神の7人だけだからな。それ以降、神の力を悪用するやつがいても不思議じゃないからとあえて黙っていたのだ 」


「……そんなあなたがなんで春陽の中にいるのよ 」


「我も数千年の時を超えて実体を維持するのが難しくなってな。初めは我の姿そっくりのセラフィックドラゴンを依代としていたが、そんな時こいつと出会った。久々の衝撃だった。何せこの数千年、初めて我の魔力に耐えられる器が現れたのだから。春陽はそれだけの力を秘めていたのだ。そしてなんの因果かこいつは神と神を探す旅に出てきたのだ。しかも春陽と共に旅をするセレスティアは他の神に会うたび記憶操作をしていた。これは何かあると思ったがまさかこんな大きな騒ぎになるとはな 」


「まさかこんなところに見張りがいただなんて…… 」


「さてどうする? この力と真っ向から戦うか春陽のいうお前が生き返る方法とやらを試すか。好きな方を選べ 」


「……分かったわ。このままじゃ勝てないだろうし、春陽の案を呑むわ 」


「分かった 」


 アウロラがそう言うとすぐに意識は俺、春陽へと戻った。

 初めて彼の話を聞いた気がする。


 そしてセレスティアはゆっくりと俺に近づいてきた。


「春陽、きたよ。で、その方法って? あ〜その前にその魔力解いてくれない? 怖くて近寄れないんだけど? 」


 彼女の意見はごもっともだが本当に解いていいんだろうか。


 (春陽、提案がある )


 アウロラ?

 彼は俺とアウロラしかいないのにも関わらず小声でコソコソ話してくる。


 分かったよ。


 こうして俺は彼の提案、とやらを呑んだのであった。

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