第124話 VSセレスティア

 さて……説得だけど、どうしよう。


 肝心のその相手セレスティアだが、ホーリーロウを撃ち終わり、少し疲弊したのか宙に浮いたまま気を休めている。

 いくら撃ち込んでも、アーカシス様の魔力障壁を突破できないと踏んだのだろう。


「じゃあ俺行ってくるよ 」


 みんなに挨拶をして、その場から離れようとする。


「春陽さん……私達も何かできることがあったら手伝います! 」


「そうだ! せっかく俺もミアもここまできたんだ! 」


「ミア、カイルやめておけ。すでにセレスティアの戦闘力は僕達が思っている以上だ。僕達が何かしようとすると、むしろ春陽くんの足手纏いになってしまう 」


「じゃ、じゃあ私なら…… 」


 ナコの言葉をアリア様は遮り、


「あなたもダメよ 」


 そう伝えていた。


 ミア、カイル、ナコは肩を落としているが、俺はそれでよかったと思う。


「アーカシス様、アリア様、ありがとうございます! 」


 みんなを足手纏いとは言わないが、俺はこれ以上身の回りの人を失いたくない。

 特に今ここに集まっているみんなはこの世界で出会った大切な人達だ。

 かといって一緒に戦うとなればあのセレスティア相手に守りながらというのも難しいだろう。

 アーカシス様とアリア様はそれを分かって判断してくれたのだ。


「ではいってきます! 」


 再びみんなに声をかけて魔力障壁の外側へ俺は向かっていったのだった。


 そのまま俺は宙に浮いているセレスティアの元へ近づいていく。


「えー? 春陽、ボクのために考え直してくれたの? 」


 ティアは俺に向かってそう問いかけてきた。


「いやセレスティア様、あなたが生き返る方法が別にあるんです! それを俺はあなたに伝えにきました 」


 すると彼女は突如豹変し、


「ねぇ春陽、あなたまで私を騙すんだ……。 レイラのパートナーって聞いて優しくしていたけどもういいいよね。君もまとめて殺してあげる 」


 今までと違う口調でそう言ってきた。


 あの話し方、あれが本来のセレスティアか。

 今までは妹の口調を真似ながら話していたみたいだが、もうそんな面影を感じさせない。


 そしてセレスティアは自身の魔力を纏い始める。

 ただ現状、彼女は元々マルコスが持っていた神3人分の魔力を保有しているため合計4人分となるわけだ。

 まるでそれを証明するかのように、彼女の周りを4種類の魔力が渦巻いている。

 その魔力はそれぞれ白、黒、赤、青と色分けされており、全てが螺旋状に交差していることで1種類の魔力のようにも感じ取れた。


 (あれはさすがにマズイか )


 アウロラ!?

 今日はよく出てきてくれるな。


 (ここまで関わってしまったのだ。 今更引っ込むわけにもいかない )


 そうか、ありがとうな。

 しかしあんなすごい魔力今までに見たことないけどどうにかできるのか?


 (まぁ一応策はあるにはある )


 あるのか!?

 どうすればいい?


 (今イメージで送る )


 あ、本当にイメージが流れてきた!


「春陽、せめて痛みを感じないまま殺してあげるね 」


 そう言ったセレスティアは無数もの魔力の塊を放ってきた。

 その塊1つ1つは大きく、それぞれドラゴンに模した形となり、迫ってくる。

 あんな魔力密度が高いものは未だ見たことがない。


 例え自分が魔人化したとしても喰らえば耐えられる気がしないな。

 しかし1回避けるくらいなら。


 そう思って、魔人化した俺は空中を旋回しつつそのドラゴンを避けていく。


「よし、なんとか躱せないレベルじゃないっ! 」


 (いや、春陽だめだ! あれは追尾してくるぞ )


 アウロラの言うとおり、俺を過ぎ去っていった魔力の塊はそのまま旋回して再びこちらに迫ってきた。

 あんなの数もとんでもないし、何回も避けるなんてできない。 

  

 (早く! イメージ通りするのだ! )


 わ、分かったよアウロラ!


 そして彼が送ってきたイメージ通り魔力を纏っていく。

 しかしそうしてる間にもあの魔力の塊は迫ってきている。


 やばい、避けないと。


 (あんま魔力など気にするな! 春陽は集中しろ! )


 え、でも……。


 (大丈夫だ! 我を信じろ! )


 俺はその言葉を信じて魔力を纏い続ける。


 目の前に魔力の塊が迫ろうとも。


 大丈夫だ、アウロラを信じている。


 もうすぐだ、もう完成する。


 そんな時、セレスティアが放った魔力の全てが問答無用で俺に直撃していったのだった。

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