第113話 念願の再会
この扉の先にエレナがいるんだ。
ここまでの道のりは長かった気がする。
アークスカイ、ウォーターグレイス、ナイトフォールと色々な所へ出向いた。
大変なことも多かったが、ミアもカイルもティアも居てくれたからなんだかんだ楽しかった。
でも何かが足りなかった。
それはエレナ、君だ。
明るく前向きで、正直でなぜかこんな俺を慕ってくれて、なんだかんだ言いながらもミアやカイルとも仲良くして、そんな彼女が居たから俺はこの世界でもきっと楽しく過ごせていたのだ。
それだけ大切な彼女がこの先にいると思うと、緊張で心臓が口から飛び出しそうな気がする。
「あの……春っち様? 大丈夫ですか? 」
「え! な、なにが? 」
突然の声かけに身体がビクッとなってしまった。
「いや、なんだか石のように固まってたので……。 びっくりさせてしまったのならすみません 」
ナコは申し訳なさそうに頭を下げる。
「いやいやいや、ごめん声かけてくれて。 おかげでシャキッとしたよ 」
俺がそう言うと彼女はフッと笑顔になり、
「へへっ! よかったです 」
なんだ、この世界には可愛い女の子しかいないのか?
そんなことを思ってしまうほどに素敵な笑顔だった。
いや、ちゃんと切り替えて前へ進もう。
そう決意して目の前のドアノブに手をかけた。
ガチャッ――
その先に見える景色……それは何もない殺風景な部屋だが、その真ん中に目的の人物がいた。
「エレナッ!! 」
彼女は、四肢を闇のエネルギーによって創られたであろう鎖のようなものに繋がれている。
その鎖は、この正方形の部屋の天井側4つ角から発生しており、1本の鎖につき彼女の四肢のうち1つを繋ぐ形となっていた。
つまり彼女は大の字で天井を向き、宙ぶらりんになっている状態だ。
反応がないので、もう一度声をかけてみる。
「エレナッ! 迎えに来たぞ!! 」
くそ、反応がない。
あの鎖ちぎってやろうかとも思ったが、そもそもそんなことをしてエレナが無事な保証もないし。
あ……もしかしてナコなら。
「ナコ、この鎖って一体なんだ? 」
彼女を見ると困ったような顔で、
「い、いえ、すみません。 私も初めて見ました。 ここはマルコス様に絶対入るなと言われていたので 」
そう口にした。
さてどうしよう。
まぁ幸いここには見張りのようなやつもいない。
ゆっくり魔力さんと相談しますか。
この鎖を解く方法をイメージで模索し始めた。
……ん?
いくら探してもイメージが湧いてこない。
いつもならその魔法についての映像が脳に流れ込んでくるのだが、今のところ応答なしというやつだ。
こんなことは初めて。
果たしてどうしたものか。
「春っち様! 春っち様!! 」
おっと気づけばかなりの時間をイメージで使ってしまっていたような気がする。
「ナコごめんよ、長いこと待たせた 」
「そ、それはいいんです! 春っち様! ほら! 」
ナコが指差す方には鎖が解かれた状態のエレナがまっすぐ立っている。
ただ俯いているため表情までは分からない。
「エレナッ! 」
やっぱり反応がない。
もしかして長い間眠っていたため頭がボーッとしているのだろうか。
いや、それにしては気がかりなことも多い。
まず以前まで感じていたエレナの魔力とは少し違う。
細かく言うと、魔力量が莫大に増えている。
それもあのゾルガンやフォーミュラー以上に。
もう1つ、質も明らかに変わっている。
その莫大な魔力の他に感じる別の魔力が彼女の中に生まれているような。
それはどちらかというと、ティアやアーカシス様、ノクティス様といった神に近いもの。
それを念頭に1つの仮説が思いつく。
「もしかして……エレナッ! 」
「その反応……君には今何が起こっているのか、分かるのかい? 」
俺達が入ってきた扉から突然声が聞こえてきた。
真っ先に振り向いたナコが声を震わせながら、
「マルコス様ッ!? 」
続いて俺も振り向く。
するとそこには、アークスカイでノクティスを殺したあの子供の姿がそこにあった。
「マルコスッ! 」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます