第111話 知覚を司るもの
相手は第三席だ。
俺も全力で行くしかない。
俺が体勢を整える間に、フォーミュラーは手を上に掲げ、魔法を唱える。
「リバース魔法【 ミラーワールドエフェクト⠀】」
すると、やつの頭上に直径5mほどはありそうな魔法陣が現れた。
「え、別に何も変わったことなんて……!? 」
身体が動……かない。
いや動く、けど感覚がおかしい。
右手を前に動かしたはずが、動いたのは左手、しかも後ろに動いた。
右足も同様、前に踏み出そうとすると、左足が後ろへ下がる。
感覚全てが狂ってしまったかのようだ。
「我が主……その魔法は身体の感覚を全て逆にします。 それを解くにはあの上の魔法陣を破壊するしか…… 」
「ナコちゃ〜んっ! そんなこと教えたところで、彼はマトモに動くことすらできない……!? 体内の魔力が途絶え……ブフッ! 」
フォーミュラーは大きく後方へ飛ばされたが、受け身を取り、なんとか体勢を崩さずに立ち止まる。
「さすが第三席、簡単にはやられないな 」
「お前……何をした? 」
「君の魔力器官であるエーテルと脳の伝達信号を一時的に断ち切っただけだよ 」
「は? そんなことできてたまるか! 」
フォーミュラーは続いて魔法を唱える。
「リバース魔法【 アクションブラーエフェクト⠀】」
次は突如俺の真下に魔法陣が発生したため、急いで後方へ退いた。
「次はなんだ? また何も変わってないけど 」
「それは君の肌で感じるといいっ! 」
そう言って、知らぬうちに魔人化したフォーミュラーが俺の目前に現れ、
バンッ――
気づけばやつの蹴りが俺の顎に直撃し、勢いよく飛ばされた。
なんとかとっさの判断でエーテルバフだけは身体に纏うことができたため、致命傷は避けたようだ。
逆にそれ以外の守り方ができなかった。
反応ができなかった、という感覚。
これは俺がよく神技で行う動体視力を低下させるという能力に近い感じがする。
続けてフォーミュラーは攻めてきた。
激突前に急いで闇エネルギーを纏うも、それから激しい攻防になり、何発か打撃を喰らってしまう。
バンッバンッバンッ――
「ううっ! 」
「魔人化か。どうも君は魔族との戦いに慣れているようだが、ここまでのようだね。現に僕の攻撃について来れていない 」
彼の言うことはもっとも。
現時点、俺はフォーミュラーに押され気味だ。
しかしそれは現時点という話。
もしも相手が俺と同様に感覚を司っているならば、対策はある。
「そうだな。確かについていけていないな 」
「ナコちゃ〜ん、君の新しい主は僕にすら勝てないみたいだけど、どうするの? このまま僕達を裏切るつもり? 」
「私は……自分の主を信じるよ。私も実際に対峙したけど、フォーミュラー……彼はあなたより強いわよ 」
「へぇ、今の戦いを見てもそう思うんだ? だってさ、主様? エレナ様もはじめは君の助けを待っていたけど、こんな実力じゃ辿り着くこともできないね。実にかわいそうだ。 まったく君もエレナ様も見る目がない 」
「フォーミュラー、君エレナのいる場所知ってるのか? 」
「え? あぁ知ってるけど? ……!? グアッ! 反応ができなかった!? 」
バシッバシッバシッ――
「なんだ!? 攻撃が全く視えな……ブフッ! 」
フォーミュラーは思いっきり後方へ飛ばされ、壁に激突した。
俺はゆっくりと彼に近づき、
「エレナの場所教えてくれないか? 」
居場所を知ってるやつがいるなら早い。
ちょうど目の前の彼が知ってるみたいだし、ここで聞き出すとしよう。
「お前、何をした……? 」
「君は自分の感覚が鈍るのは初めてみたいだな? 自分だけが感覚を操れるわけじゃないってことだ。 同じ条件下であればあとは実力差、そうなったら負けるわけもない 」
「そうか……。 僕はこの通り賢いんだ。 君に勝てないのは今の戦いで分かった。 君が求めるのはエレナ様の居場所か? 」
「あぁ、そうだ。それとフォーミュラー! 君は人間に戻りたくはないか? 」
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いつもご愛読ありがとうございます😌
毎日投稿しますのでこれからもお楽しみ下さい✨️
長編2作品目『ハローワークで見つけた冒険者業が天職だった件〜ハズレ職業である武闘家から始まった冒険者人生、最上位職のマジックブレイカーに転職したので駆け上がっていきます〜』を執筆しましたので、ぜひお手隙の際にご覧頂けますと幸いです🥺
これからも3ヶ月にひとつを目標に長編新作を書き上げたいと思っていますので、ぜひとも作者フォローなどして頂けると嬉しいです🎶
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