第110話 第三席 フォーミュラー



 あれから彼女の兄イヴィルにはパージをかけた。

 それからゾルガンの時同様に気を失ったため、この家の救護室のようなところまでつれていったところだ。


 妹のナコはというと、今俺の隣にいる。

 そして彼女は今はまだ人間に戻りたくない、人間に戻った時、魔族の記憶がなくなるのだとしたら私は魔族の最後を見届けてからにしたい。

 あと、俺の助けになりたい。


 それが彼女の願いであった。

 俺の助けは後付けかもしれないが、こちらとしては願ったりだ。


 ということで、俺はナコに道を案内してもらっている。

 今のところまだ時間にも余裕があるし、これから順にダークオーダーに接触しようと考えているのだ。

 

「ナコさん、そういえば残りのダークオーダーって何人いるの? 」


「そうですね……我が主の話によるとドレア、レイズ、ゾルガン様は倒されたとのことでしたね。 彼らはそれぞれ第十席、九席、二席です。 それとイヴィル、私はそれぞれ第六席、七席だったので残りは第三席、四席、五席、八席の4名ですね。 」


「意外と多いな……。 ってさっきから気になっていたけど、その我が主ってなんだ? 」


「え? あなた様に他ならないですが? 」


 当然でしょ?と言わんばかりの顔で首を傾げている。


「やっぱ俺か!! 」


 呼ばれ慣れた呼び方だったために、気づくのが遅くなった。

 しかしその響き、エレナを思い出すが彼女は大丈夫だろうか。


「我が主? どうされましたか? 」


 いつの間にか辛辣な顔をしてしまっていたのか、ナコは心配そうに俺の顔を覗き込む。


「あ、ごめん! エレナを助けにきたんだが、無事にしてるかなって 」


「あぁ……エレナ様なら新たに第八席の座を貰い受けて、マルコス様にとびきり可愛がってもらってますよ。 ですので、きっと無事でしょう 」


「そうか、よかった 」


「我が主……さっきの話の続きですが、今第四席、五席は別の任務で外出されています 」


「あ、じゃあここに残っているのは第三席とエレナだけなのか? 」


「はい。 ただその残った第三席が厄介で……。 気をつけてください! 彼は他の魔族とは違う強さを持っています 」


 ナコは深刻な顔で、そう口にした。


「なんだ? そいつはゾルガンよりヤバイのか? 」


「はい、ある意味ではゾルガンよりも厄介な相手とも言えます 」


 彼女にそこまで言わせるなんて、第三席とは何者なのだろうか?


「へぇナコちゃん、ほんとに裏切ってんだね〜 」


 突然上の方から甘々のイケボと言われるような声が聞こえてきた。

 って上……!?


 視線を上にやると、金髪洋風イケメンが天井を足場に立っていた。

 つまりこっち側から見ると、逆さになっている。


 目が合うと直ぐに彼はクルンっと180°回転し、床に足をつけた。


 ここで初めて正面から顔を見ることができたが、やはり超絶イケメンだ。

 洋風な顔立ちに金髪ミディアムヘアがよりイケメンを際立たせている。


「第三席 フォーミュラー・デスヴァイト…… 」


 そう口にしたナコの表情は固く、1歩後ろに後ずさっている。

 あれがナコの言っていた第三席か。


「だめじゃな〜い、ナコちゃんっ! マルコス様を裏切ったんだよ? 今なら黙っててあげるからさ、こっちおいでよ 」


「私は……人間に戻りたいっ! それに私の主はもうマルコス様じゃない。 この人なのっ! 」


 そう言ってナコは俺を見た。


「へぇ〜君、魔力感じないね〜! だけど僕に臆した様子もない。 つまり実力の分からない単なるバカか、もしくは隠された力があるってことだ。 ふむ、おそらく後者だろうな 」


 きっとこのフォーミュラーとは戦うことになるだろう。

 いつ戦闘になっても良いよう、気持ちの準備だけはしておく。


「フォーミュラー、悪いけど俺は君を人間に戻す。 それを君が望むかは分からないけど 」


「ははっ! 何言ってんの? やっぱ面白いね君っ! 格式高い上位魔族に向かって人間になれだって? そんなこと初めて言われたよっ! 」


 フォーミュラーはさらに続けて、


「はぁ〜面白いな〜。 だから君を排除しなくちゃいけないのは本当に残念だ…… 」


 その言葉を最後に、フォーミュラーの魔力量は格段に増した。

 おそらく戦闘態勢に入ったのだろう。

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