第99話 カイルVSドレア③
ヤバイっ!
急速にドレアが接近してくる。
俺はやつにぶっ飛ばされた直後。
まだ着地もしていない。
そもそもダメージも大きく、受け身をとれるかどうかも怪しいところだ。
「カイル――っ! 悪いが終わらせるぞ! 闇魔法【 シャドウ・シーム 】 」
あの数の刃に貫かれたらいよいよ最後だ。
くっそ! どうしたものかっ!
ズンッ――
「グアッ! な……なんだっ!? ……うぐっ! 」
「なんだ!? 何が起こって……!? 」
なぜかドレアは地に這いつくばっている。
どういうことだ?
見える範囲にはもちろん誰もおらず、魔力の気配すら感じられない。
そしてこれは……重力魔法か?
それもこんな遠い距離から。
その時、俺はふとある出来事を思い出した。
あれは昨日、ナイトフォールへきたときだ。
街へ行く前、春陽がどこかに向かって魔法をかけていた。
たしか……ハイグラビティ・ザ・ラストとか言ってたような。
遠くの誰かに重力魔法をかけたって。
しかしそれは昨日の話で……!?
ってここ1日前のナイトフォールじゃないかっ!
やっと話が自分の中で繋がった。
つまり昨日春陽が魔法を使って助けた相手とは俺のことだったのだ。
それが故意だったかどうかは分からんが、運の良いやつは俺のことだったぞ――っ!
「ハハッ! 春陽……ありがとうっ! 」
俺は春陽を助けるつもりでこの戦いを引き受けたが、結局助けられたのは俺の方だったらしい。
「こんな魔法にやられるかぁ――っ! ぐぬぬ……っ! 」
ドレアはその持ち前のど根性で立ち上がろうとしている。
手を付き、足を付きと徐々に身体を持ち上げようやくの思いで立ち上がった。
春陽の重力魔法付きというハンデをもらってしまい、少し心苦しいが……まぁあの影の刃の数を考えると妥当かと自分に言い聞かせる。
「カイル、これは……お前の魔法か? うっ……! 」
立ち上がってもまだ魔法が効き続けている。
常に地へ押し付けられる感覚……辛いだろう。
「いや、悪いが俺ではない。 友からの贈り物、みたいなものだな 」
「そうか……。 なら続けるぞっ! 」
ドレアは苦しそうにしながらも、戦闘態勢は崩さずに対面している。
そんな相手に俺も手を抜くことはできんっ!
「わかったぞ、ドレア。 雷神級魔法【 ライトニングスピア 】」
俺の右腕にはさっき唱えた魔法によって、鋭い槍のように鋭く尖った雷エネルギーが集約している。
この輝きはこの真っ暗な周囲100メートルはゆうに明るく照らすほどだ。
「カイルっ! こい! 闇魔法【 ダークネスソード 】」
彼は闇エネルギーにより、立派な剣を創り出した。
次いで武器を構え、迫ってくる。
少し遅れて俺も詰め寄った。
そして互いの武器を交えることもなく、すれ違った。
いや、すれ違う他なかったのだ。
相手の剣を振りかぶる速度よりも俺が相手を貫く速さが上回ったから。
これも重力魔法というハンデがあったから行えた芸当だと思う。
決着は着いた。
振り向かずとも分かる。
感覚だけで完全に身体を貫いたことが分かったからだ。
「カイル……。 いい突きだった…… 友と思えるものに葬られるのであれば僕も悔いはない 」
「……くっ! ドレア! 」
彼の一言で咄嗟に振り向くと、そこには身体の中心を貫かれたドレアの姿があった。
しかし俺を見る彼の顔は清々しいほどの満面の笑み。
これ以上悔いはない、言葉で言わずとも伝わるほどの表情だった。
「カイル、最後にお前と出会えてよかった。 次会えるとしたら……本当に僕と友に…… 」
「あぁ! そうだ! そうだとも! 俺達は絶対にいい親友になれるっ! 」
俺が涙交じりの台詞を言い終わる頃には、彼の姿はすでに灰となっていた。
「……くそっ! 戦いとはこんなに辛いものなのか…… 」
戦いは終わった。
しかし、しばらくの間は悲しみと喪失感で胸がいっぱいになり、涙が止まらなかった。
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