第41話 早すぎた再会

魔王が去ってよかった。

 これで安心して地下2階を探すことができるというものだ。


「おっ!もうすぐ扉があるところだな 」

 スマホを見ると、もう扉まであと1部屋だ。


 よし、ようやく到着だ。

 周りには……誰もいないな。


 扉は両開きで、鍵などはついていないが、押すも引くも開かない仕組みになっているようだ。

 ただ扉の中心にQRコードのようなものが映されているだけ。

「これをスマホで読み取ればいいのか? 」

 初めの説明の通り2台のスマホに扉のQRコードを読み取らせた。

 すると、2台目のスマホで読み取った瞬間、


 ガチャッ───


「あ、開いたな 」

 扉が自動的に開いた。

 自動ドアかよ。


「階段が続いてるけど、先が見えないな…… 」

 階段を数歩降りると、


 バンッ───


 ドアが勝手に閉まった?

 まぁ1回開くことで、何人も通れたら運営もたまったもんじゃないもんな。


「この暗い階段まだ続くのか? 」

 どうも喋っていないと落ち着かない。

 あ、もう階段も終わりそうだ。


「よし、ここが地下2階……ってほぼ上と同じじゃねーか! 」

 先程上で見た景色とほぼ同じだ。

 だがこの階にお宝があるのは間違いない。

 宝探し中、あの魔王にだけは出会いたくないものだ。


 ここからはスマホの地図も役に立たない。

 ということで、アーカシス様の魔力を感知してみた。

 が、しかし何も感じない。

 人の居場所すらも感じられないようだ。

 俺が前に行った感知だが、おそらく空気中に魔力があってこそ成立するものだったんだな。

 仕方ない、適当に分かれ道を選んでいくか。


「……君は今のこの世界をどう思う? 」


 ……!?

 びっくりした!

 後ろを振り向くと見知らぬ人がいた。

 いや、おそらくケビン・ファイアウィスパーなのだろう。

 今まで出会ったことがなかったが、ここで初めてお目にかかれた。

「えっと……どう思う……とは? 」

 しかしどうにも質問の意味がわからない。


「この人族と魔族が対立するこの世界をだよ 」

「どう思うってのは俺からしたら難しいけども、傷つけ合うのなら別々でも仕方なくないか?と思う 」

「……ちっ。 傷つけたのはどっちだよ 」


 そう言って俺の前を走り去った。

 傷つけたのはどっちだって言ってたが、どっちなんだ?

 この世界の歴史を知らない上にまともに会話できた魔族もいないため判断ができん。

 ケビンというやつ、何か魔族と関係あるのだろうか。


「ガハハハハッ! ここで出会ったが、最後よ! 転校生! 」

 この聞き覚えのある悪名高い笑い声とセリフはおそらくライラだ。

 度々後ろを振り向くと思った通りの奴がいた。

「……はぁ。 こんなに早く出会ってしまうとは 」

「何をガッカリしている! お前もこの状況を楽しめ! 」

「残念だが、俺はお前のような戦闘狂ではない 」

「誰が戦闘狂だ!! ワシはただお前との戦いを考えていたら身体が疼いて仕方ないだけだ!! 」

 それを戦闘狂というのですよ、ライラさん。


 どうやら前に進ませてくれそうにないため、ここで戦闘モードに入る。

 具体的には無属性エーテルバフを纏った。


「召喚魔法【 ケルベロス⠀】」


 あれは第2試験であいつが使っていた魔法だ。

 まずはあの犬っころを倒せというわけか。


「獣人合体【⠀モードケルベロス 】」


 え?ケルベロスと合体し始めた。

 まだやつは強くなるらしい。

 これセリアでも勝てないんじゃないか?


 どうやら合体し終わったようだが、見た目は変わらず、ライラが被っている毛皮がケルベロスの黒ベースになっているだけという感じだ。

 いや、一応尻尾も3本で肩にケルベロスの紋様みたいなものが入っているようだな。

 幸か不幸か、空気中の魔力が薄いせいで、相手の魔力量を測ることすらできないため、あれが強いのか弱いのかも分からない。

 だが、おそらくヤバいはずだ、今持っている魔力量全てをエーテルバフに変える勢いで身体に注ぎ込むくらいはしないとここで負けるな。


「いくぜェェェェ転校生!!! 」

 やつが突っ込んできた。

 戦闘開始というやつだ。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る