第19話 魔術対抗試験

 エーテル魔術学院の魔術対抗試験。

 それは魔法の知識、技術を競い合い、学生たちの成長を評価する催しである。

 もちろん学院の生徒であれば誰でも参加可能。

 多くの魔術大学関係者、騎士団関係者など、要は街の偉い人達がこの場に集い、若く優秀な才能を発掘する場所でもある。

 優秀は成績を残したものは、試験終了直後に声がかかり、卒業後の進路が決まるということも珍しいことじゃないらしい。

 当の主催者本人(アーカシス)自身は興味深い魔術が見られたら満足と思っているようだ。

 そして今年は今から1か月後に開催の予定で、試験については1回戦から3回戦まであり、内容は当日その場で発表される。


「春陽くん、だいたいわかったかな? 」


「内容は分かったんですけど、魔力障壁や裏切り者のこともありますし、俺はその魔術試験に参加している余裕はあるのでしょうか? 」


 たしかに試験には興味がある。

 しかし本来の目的を忘れてはいけない。

 俺は魔族に手を貸す裏切り者を探さなければならないのだ。

 しかもシルヴァンディアに張ってあるという魔力障壁とやらの効果も薄れているというじゃないか。

 ということは魔族が侵入しやすくなるわけで、裏切り者は裏切りやすくなるというものだ。

 そんな呑気に試験を受けていていいのだろうか。


「それについては問題ない。 魔力障壁については事細かく確認しているし、すぐに破られるものでもない。 破られなければ裏切り者もなにもできないはずだ。 」


 アーカシスがそう言うということは本当に問題ないのであろう。

 これから裏切り者探しで忙しくなることを考えると、ここで学生の文化祭的なイベントを楽しむのもいいかもしれないな。


「分かりました、参加させて下さい」


 俺はその魔術対抗試験とやらに参加することにした。

 それを聞いたアーカシスは、


「これは待ちきれんな 」


 そう言って彼はどうやらこちらではないどこかに向けて話し始めた。


「アリアンサ、決めたぞ。 試験の日程を早める! 」


 え、なんて?

 1ヶ月後の予定ときいたが、そんな簡単に変更などできるものなのか。

 この人……いやこの神は自由なもんだな。


 すると、姿は見えないが、領域内の天井から女性の声が聞こえる。


『はぁ……。そう仰る気がしていましたわ。で、いつ開催にされます? 』


 大きなため息からの立ち直り、もう無茶ぶりには慣れてますと言わんばかりの切り替えの早さだ。

 こういうような事態が今まで多かったのだろうと感じさせられる。


「んー、3日後! 」


 さすが、とても急である。

 しかしそれに対してアリアンサは完璧に対応してみせた。

 その結果、まもなく魔術対抗試験の日程が変更され、3日後の開催が決定したのだ。

 

 

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